⚠学パロ
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この桜を見るのももう今年で三年目
そんなある日
君と出会ってしまった。
「おはよ」
俺は軽く友達に挨拶を交わす
知ってる人も多くなり、過ごしやすい生活になっていた
自分の席を見つけ、そこに腰をかける
ふと、前を見ると
前の席には見たこともない初めて会う人が座っていた
「おはよう」
笑顔で挨拶を言うと、ビクリと体を震わせ「前の席の人」がこちらを向いた。
「………おはようございます………………………」
今にも消えそうなか細い声で挨拶を返された
変わった人だなぁ。そう思いながら名前を一応聞いてみる
「俺はキヨって言います。あなたの名前は?」
「えっ……と……レトルトです。」
「じゃ、レトさんよろしく」
いきなりレトさん呼びはマズかったかな
そう思っていたら前の席から笑い声が小さく聞こえた。
「ふふ」
「変わった人ですね。初めて呼ばれました。」
ふわりと笑っていたその笑顔が女の子顔負けの可愛さで、驚いてしまった。
「では、…キヨさんと呼びますね。」
「あ、うん!」
敬語は抜けていない彼だったが
第一印象とは全然違った。
仲良くなれるといいな
いつもは思わないセリフが脳裏をよぎった。
授業が始まり1時間目は自己紹介。
とうとう自分の番がやってきてしまった
名前と趣味と好きな食べ物この三つを言えといわれて勢いに任せて口を開けた。
「名前はキヨ、趣味は…まあゲーム?そんで好きな食べ物が……野菜以外です!」
「よろしくお願いします!」
俺にしては元気な挨拶が出来た気がする。
うん。よくやった。俺
そして次はレトさんの番
そろりと音を立てずにレトさんが立ち上がる
「…えっと…名前は…レトルトです……。趣味は………………です。好きな食べ物は……か、蟹です……」
「……よろしくお願いします……」
お辞儀をした瞬間に拍手が鳴る。
多分内容が聞き取れなかったのだろう
聞こえていたのはせいぜい、周りにいる「めがねをかけた奴」と
俺と
「めがねをかけた奴2」位だろうな。
かという自分も趣味だけ聞き取れなかったのだが
最後の拍手が鳴り響く。
チャイムが鳴り、レトさんに声をかけた。
「ねえ、レトさん」
「…!?」
「…キヨさん…どうしたんですか?」
「趣味ってなんて言ったの?」
「え…あの…げ、ゲームです…」
「被るのであまり言いたくなかったんですけど…」
「俺と一緒じゃん!今度一緒にやろ?」
彼との共通点が見つかり柄にも合わず机に身を乗り出した
その瞬間レトさんが下を向いてしまった
やべっ…ブレーキかけるべきだったか………?
しばらく時間がたちレトさんが顔を上げた
「は、はい。」
予想とは真逆の言葉が返ってきて心の中でガッツポーズをとる
「…つーか敬語やめて?」
敬語がちょくちょく気になって仕方がないので、思い切ってお願いをしてみた。
「え…自然と抜けていくと思います。ご、ごめんなさい。できるだけ気をつけます…」
本当に困った顔をしていたので、自然と口から言葉が出た。
「別にいいよ、ゆっくりで」
「う、う…うん!」
敬語をなくそうと必死に君が放った言葉
それを言ったあと君は顔が明るくなり、マスク越しでも分かるほどに
微笑んでいた
「え……っと…俺の顔に何かついて…………る?」
さらりとした髪の間からキレイな黒い瞳が見える
「ぅえ?!俺そんなに見てた…?」
レトさんがコクリと首を縦に振る
「気付かなかったな…」
「疲れているなら、休んだ方が良いですよ…?」
「あ、ありがとう。大丈夫だから」
レトさんの言うとおり、疲れているのかも知れない。そう思った俺は学校が終わり、足早に家へと向かった。
ーーー
ボスンッ
そんな音がなるくらいの勢いでベットへと飛び込む。
「どうしたんだろーなぁ、俺。」
気がなかなか晴れないので独り言を呟いてみた
うーん。全くといって良いほどモヤモヤが切り開かれん。
こんなときこそ
テーブルの上にある一つの写真集に手をかけた
いつもそれを見ただけでニヤけてしまう
今も多分そうだろう。だが、違った。
5年は見ても飽きなかった写真集だ。すぐに飽きるわけがない
なのに
どうして
可愛いと今日は思えないのだろう
いや、思えるには思えるよ?
だけどなんか…こう…ねえ……?
なんか、奥歯に肉挟まったって感じなんだよなぁ
………
なんで今
レトさんのあの笑顔が思い浮かんだのだろう
パタリと雑誌を閉じて机に戻す
「…ぁあ、ラチがあかねぇ。出かけよ」
ムシャクシャしてきて頭を掻きむしりながら着替える。
ラフなパーカーにジーンズ、こんな格好でいいだろう
まあ、コンビニ行くだけだしな
ーーー
「んー、何買おっかな」
コンビニにきたはいいんだけどなぁ…
何買うか決めてなかったな
その時一つのケーキが目に入った
「お、うまそ」
二個入りのショートケーキが入っていて300円
安い。安すぎる。
残り一個だったので手を伸ばす
かごの中に入れると「…あ」と子供のような声が聞こえた
そちらを見ると「レトさん」が立っていた。
「レトさん?!」
「き、キヨさん…?」
ーーー
「いやぁ~ビックリしたなぁ」
「そうですね」
「ケーキ…いる?」
俺はさっき買ったショートケーキを目の前に差し出す。
「い、いいよ。きをつかわない…で」
「ほぉら!食べたいんでしょ?」
「けど…それじゃ…キヨさんが………」
「んあぁぁぁ!!!!もう!」
「ひっ…」
「じゃあ、俺んちで一緒に食べよ!」
「……へ」
グイッと彼の袖をひっぱり、半ば強引に連れて行くことにした
ーーー
「はい、どーぞ!」
「あ、ありがとう…」
「……キヨさんは優しいんだね」
初めて言われた。優しいなんて
思えばそうだ
あれがレトさんではなかったら?
俺はあんなことしなかった
今日の自分は自分でもおかしいと思えることばかりだ
レトさんの顔を無意識に見つめたり、相手のことを男なのに女のようにみえたり
優しくしたり…まさか…なんてな
「……分からんっ」
よし、諦めよう。分からん
「ささ、たべよたべよ」
「うん」
パクリと一口ほおばる
久々のショートケーキはすごく旨い。
「んめー!」
隣ではレトさんがフォークをくわえたまま止まっていた
「美味しい…!」
あ、また笑った。
「キヨさん…ありがとう…」
「俺…ね………友達いないんですよ。いることにはいるんですけど、そんなに仲良くなくて…」
「けど…今日キヨさんが優しくしてくれて、すごく嬉しかったんです。」
それって…つまり…さ
「俺!レトさんの!友達ってことでいいの!?」
爆音ボイスで叫んでしまう
めをまんまるにしたレトさんは
「え…俺の方こそ、友達でいい…の?」
「もちろん!」
「じゃあ」
「キヨ君が俺の一番目のお友達…だ…ね」
「へへ」とまた、今度は照れくさそうに笑う
しかもキヨ君呼び?!
「ならさ、連絡先交換しようぜ!」
「うん…!」
通知音とともに、俺の一番上の連絡先に「レトルト」という文字が見える。
すぐにピン留めとお気に入り登録をした。
「何から何までありがとう」
「いーえ」
彼の頭には
レトさんの笑顔が見たかったから。
そんな思いが
頭を渦巻いている
そのことは3度目の桜しか知りません。
コメント
4件
めちゃくちゃ好き! 最高かよー😭
このタイプの小説も最高すぎですね!!!てか見るの遅れてしまった…😢