目を覚ませば、昨日と同じ白の空間にいた。この空間はやけに静かで、時計の音だけが響いてる。
“お前の命は俺が握っている”
🎈「…….っ、なに、それ、」
ベットに寝っ転がっていると昨日のことが鮮明に思い出される。話し終わったあの後、特に異変はなかった。別に会話を交わしたわけでもなく、ただ初めて”おふろ”に入ったぐらいだ。
🎈「………….っ、」
昨日の一件があり、下手に動くことが出来ない。この家の構造も、マフィアも実際言えばよく分からないのだから。
…..手の出しようがない。
🎈「 (とにかくどうしよう、一旦部屋から出てみる、?) 」
この部屋には、なんてったって何も無い。暇を潰せるものも無ければ、人が住む最低限のものしか置いていない。何か、手がかりになるものがあれば良かったのに。
上半身を起こし、光が指す小窓を少し眺める。当然ながら、窓は外が見えないよう不透明なガラスで閉ざされていた。
🎈「 (…….下、降りようかな、) 」
ここに居ても何も変わらない。
🎈「 (きっとこの人も、…..“飽きて”捨てるのだから。) 」
節々に痛む体を無理矢理起こし、部屋を後にした。
リビングに降りれば、昨日と同じ光景が拡がっていた。意外と綺麗に並べられた椅子やテレビの前に置かれた淡い青のソファ。あの部屋からでは考えられないほど、”普通”の部屋だ。
🌟「………….起きたのか」
🎈「___へ、((ビクッ」
後ろから声がし、恐る恐る振り返れば昨日の金髪の男が立っていた。昨日から思っていたが、本当にこの人からは音が一切しない。一体、どうやって移動してるんだ??
🌟「…….座れ。」
顎で椅子を指し、またもや座れと促してくる。この状況を怖いと思わない人は居るのだろうか。
ちらちらと男の方を見て、椅子に何も細工されていないか確認する。
🎈「 (おかしな事は…….ない、か) 」
ぎゅっと拳を握り、椅子を引いて座ってみる。足はぷらんぷらんと浮かび、逃げるのには時間が掛かるだろう。
🌟「…….待ってろ。」
そう言い残し、ガラスのようなモノが擦れる音がする。横目で確認するが少し距離があり、よく見えない。
🎈「 (何か…….する気、なのかな、) 」
昨日の一見でこの男に対する恐怖は未だ増え続けている。表情や行動からは何を考えているか分からない、珍しいタイプ。
尚更、経験なんて何一つとしてなかった。
🎈「………….。」
静まり返った空間に耐えるよう、拳をぎゅっと握る。この間が怖くて仕方がない。
俯くように下を向いていると、男が何かを持ってこちらにやって来る。一気に入ってくる、甘い匂いと暖かい煙。…..これは一体??
🌟「…….お腹空いているだろ。」
綺麗な丸型のお皿に色とりどりの食べ物。主食であるトーストは焼き目が程よくつき、上にはチーズ、目玉焼きの順にのっている。
初めて嗅いだこの匂いに戸惑いが隠せない。これは、もしかして自分のモノなのか、??
目をぱちくりさせていると、両手に2つのカップを持った男が目の前の席に着く。
🌟「…….食わないのか?」
🎈「…..え?、これは僕の、モノ?、、」
🌟「……………….は?」
片方のカップの取っ手をこちら側に向け、置いてくれる。そのカップの中身は真っ黒で暖かい煙が出ている。
🌟「普通に考えれば、それ以外あるのか?」
自分のモノ、自分の…….もの、
男はまた頬杖をつき、興味無さげにこちらを見ている。その視線は何かを押さえて離さない。
🎈「 (一体、なんの真似…….だ、?) 」
じっ、と見つめ返すが又もや表情1つ変えやしない。
🎈「 (中に…..薬物か毒が入ってるとか、) 」
🌟「…….悪いものは何一つ入れてないからな。」
🎈「…….ぇ、ぁ、」
とやかく言う思考に簡単に蓋をされる。まさか、この男、人の心が読める…..のかな。それだったら、結構厄介だな。
何度も目の前にいる奴にちらちらと目線をやりつつ、トーストを口元に持っていく。
手の指から伝わってくる体温や、惹き付けられる匂い。…….本当に食べていいのだろうか。
🎈「 (僕ってお腹、…….空いてたのかな、) 」
どんどん出てくる疑問に首を振って考えないようにする。とにかく、食べて…..みよう。
口を出来るだけ大きく開けて、口の中に入れる。歯で噛むと、サクッと良い音がした。
🎈「………….ぁ、ぇ、」
🌟「………….?」
🎈「…….味が、する、、?」
口いっぱいに広がる、卵やトーストの味。ほんのりするチーズが良い味を出している。
🎈「…….っ!」
1口、2口と食べ進めれば、美味しさのあまり嬉しくなる。こんな美味しいもの、初めて食べた気がする。
🎈「………….っ、?((ポロ」
あ、れ、。
半分まで食べ終わった時だった。自然と涙が零れてきて、頬を伝う。零れて、零れて。視界が霞んで目の前がぼやけてくる。
__何時ぶりだろうか、こんなに美味しいって感じたのは。
__何時ぶりだろうか、安心して食事を取る事が出来たのは。
安心しきった心は、雨を降らし未だ止まない。止むことを知らず、ただ降っているだけ。
🌟「………….」
🎈「ごめん、…..なさい。美味しくないわけじゃなくって、」
勘違いされそうでこれだけは否定していたかった。こんなにも、外には美味しいものがあるのかな。
また、黙々と食べ始めようとした時だった。
目元に何かがあたって、零れる涙が防がれる。それは冷たく、ざらざらしていた。
🎈「………….ぇ、?」
🌟「………….、」
大きな角張った手は、沢山の切り傷があり、皮膚にあたって少し痛い。それに、所々微かに血の匂いがする。
触れた冷たい指は目元をじんわりと冷やしていく。まるで、優しく濡れないよう”傘”を差してくれているみたいに。
🌟「…….もう、泣くな。」
見透かした瞳は、僕を捉えて離さなかった。
コメント
11件
あー!!少し遅れちゃった;; 更新まってました~!!🫶🏻💖💖 もうほんとにすきです…🥲︎ 次もたのしみにまってます🎶🎶
もう本当に最高です...、!! これで今までのストレス全部 消えました👍 ありがとうございます((
やっぱりomame様の作品を見てると辛いことを忘れられます、ありがとございます 頑張ってください 次回も楽しみにしています