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#幽霊
凛道桜嵐 新
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#日常
がくじゅつてき・あかげ
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わーい
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最後の一週間。特に何でもない日々を過ごした。少なくとも、千歳には特に何でもない日々を。
それで、俺は、多分今日の夜が最後だ。本当になんでもないふりをして、千歳の夕飯を食べて、お風呂に入った。今は千歳がお風呂中だ。
狭山さんが一週間前に、「宇迦御魂神様が霊力を乗せた術式をくれたけど霊力を剥がすのが間に合うかわかりません」と連絡をくれた。で、今日に至るまで霊力が足りたという連絡はない、誰からも。
目を閉じると、もう本当に残りわずかとなった、タイムリミットを示すオレンジ色のバーが見える。あと本当に、ちょっとだな……。
千歳(朝霧の忌み子のすがた)がお風呂場から出てきた。
『ただいまー!』
「おかえり」
俺は、なんとか千歳に悟られないように微笑んだ。
『チョコミントアイス食おっと』
千歳は冷蔵庫に向かった。
「……ねえ千歳、そのアイス食べ終わったら、ちょっとお願いがある」
『ん? うん』
千歳は特に訝しむこともなく、棒アイス片手にソファに来て、もうソファに座っている俺の隣に座った。
千歳がアイスを食べ終わるまでの猶予はあると思う。その間になんとかそれらしい理由をつけたい。
「あの、千歳……そのアイス食べ終わったら、一度ぎゅっとさせてほしい」
俺は、もうどういう表情をしていいかわからなかったが、なんとかそう言った。
『ん? ぎゅー?』
千歳はアイスをもぐもぐしつつ目を見開いた。
『今ワシ女っぽいから、ダメじゃなかったのか?』
「それで、その、我慢してたんだけど、変なふうにくっついたりしないから、一度ぎゅってさせてほしい」
『うん、いいけど、どうしたんだ』
どうもこうもない。死ぬなら、もう一度好きな人を抱きしめて逝きたいだけだ。
「……あの、有名な研究があって、ハグするとストレスがかなり減るんだって。仕事の大詰めでプレッシャーだから、せめてハグさせてほしい」
俺は、いつどこで読んだかもわからない話を無理やり口実にした。
『へー、そんなんあるのか』
千歳は至ってのんきにアイスを食べている。そして最後のひとくちを食べて、棒をゴミ箱に放り込んだ。
『じゃ、するか! 立ってやったほうがしやすいぞ』
千歳がぴょこんとソファから立ったので、俺も立ち上がった。そして、俺は千歳と向き合い、そっと抱きしめた。
『ストレス減ってるか?』
「うん……しばらくこうさせて」
俺は目を閉じた。オレンジのバーは、もう少しで消えそうだ。
千歳の息遣いを感じる。小さな体、細いのに柔らかい体。千歳も俺の背に手を回してきた。
千歳。
俺できるだけのことはやったよ、千歳が爆発しないように、千歳が核爆弾級の被害の犯人にならないように、がんばったよ。この件で連絡してた人たちのLINEトーク履歴もメールも全部消したし、あとはみんなが口裏を合わせてくれれば。
千歳。
どうか、俺がいなくなっても、楽しく幸せに暮らしていてほしい。俺のものは全部あげるから。みんなに千歳のことをよろしくって頼んだから。
千歳。
俺のところに来てくれてありがとう。千歳と会えて本当に幸せだった。この年でこんなに人に恋するなんて思わなかった。
千歳。
オレンジのバーが消え、それと同時に俺の意識は途切れた。
コメント
1件
ああああもう498話でこんなに泣かせにくるのやめてよ😭💔 「ぎゅーさせてほしい」って…最後の最後に好きな人を抱きしめて消えたくなったんだね…千歳の小さくて柔らかい感触を覚えておきたかったんだろうな… オレンジのバーが消えるまでの切なさが痛いほど伝わってきたよ。 千歳、本当に何も知らずにアイス食べてるのが逆に残酷すぎる… がくじゅつてき・あかげさん、心臓ギュッてなる話をありがとう…次どうなるの!?千歳は気づくの!?続きが気になって仕方ないよ🥺💕