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T「コロンブスの時代から約100年以上後の日本の戦国時代に遡ります。その時スペインは太陽が沈まない国として謳われ、帝国としての基礎が出来上がりました。その当時の情勢で言うと、征服者という意味のコンキスタドールが盛んでペルー、メキシコやフィリピンと言った土地を征服していました。スペイン帝国の計画はこうでした。まずは宣教師を尖兵として派遣。布教が広まったタイミングで軍隊を派遣してその土地を征服することだったんです。スペインにとっては国の利益。神のご加護という側面が強かったんです。日本の視点だと九州で奴隷貿易が盛んで多くの日本人たちが中南米、ヨーロッパ等へ奴隷として送られてしまいました。でもサン・フェリペ号事件がきっかけで計画が明るみになり、豊臣秀吉が激怒して宣教師たちを処刑しました。これがバテレン追放令でした。」ムラクモ「確か日本二十六聖人殉教もその例ですよね?お化け屋敷で見ましたが、耳や鼻が切り落とされていましたよね、見せしめにするために?」
T「ええ、そうです。ですが、宣教師やキリシタンたちも日本とスペインの正義の狭間に苦しんだと思っていますよ。スペイン帝国による植民地支配と豊臣・徳川政権の日本による国家存亡の危機の荒波に飲まれていたからです。続いてはキリシタンについて話しますね。徳川家康による禁教令と鎖国によってキリスト教布教を完全に禁止した理由もスペイン帝国による植民地支配を阻止するための抑止力でもあったんです。その中でキリスト教を信仰した日本人、キリシタンたちは迫害の道を歩んでいきました。踏み絵を踏めないことを理由に棄教させられたり、処刑される人たちも多かったんです。むごい痛みです。うっ…フリーク区に住む黒井家もその親戚の日系人のご先祖様は….隠れキリシタンの一人だったんです…正義の難しさを実感させられました。本質的にはいじめと変わりありませんから。」と咽び泣くのだった。
クイン「うっ…そうなんだよ!!俺、クロイ家に住んでよかったよ!!実の両親と喧嘩別れして、インディアナ州からフリーク州へ移住してクロイ家に住んで!!俺の日系人パパとママも、俺の親戚の黒井家も、その娘のカラスも、みんな重い歴史を背負って生活してるんだよな!!」と泣き始めるのだった。
ルシア「私の方から一ついいか、T?」
T「はい。」
ルシア「私はラテンアメリカというラベルを張られて生きるのは嫌ぇだが、メキシコとボリークアの血を引いたラティーノとして、誇りに思ってるから、お前ぇの口からその歴史について教えろ。私は歴史には詳しくねぇから知りたいだけだ。」
T「わかりました。まずは16世紀頃のアステカ文明の時代まで遡ります。現在のメキシコの辺りですね。ナワ族の娘として生まれたマリンチェがいました。幼少期に感じた心臓を神に捧げる生贄文化にうんざりしただけでなく、男の子が生まれたころで、両親たちから見捨てられて奴隷身分になりました。そんな時に現れたのがコルテス率いるスペイン帝国の軍隊でした。マリンチェがコルテスを見た時にはアステカ神話の白い神ケツァルコアトルの化身のように目に映ったそうです。マリンチェはスペインの船に乗り込んでスペイン語を習得。さらにはコルテスの通訳者兼協力者になりました。こう言った背景もあり、コルテスはアステカ帝国を滅ぼしました。これこそメキシコの誕生のきっかけの一つでもあるんです。現在ではマリンチェを国家の裏切り者とする見方もあれば、フェミニスト観点からすれば同情する声も上がっているそうです。私ははっきり言い難いと思っていますから。コルテスとマリンチェの間に生まれた子どもが歴史的な文脈で、最初のメスティーソだったと言われています。」
ルシア「そうだったのか。私の父のルーツがボリークアだからなぁ。今度は私の母のルーツがメキシカンなんだが、それについてはどう思う?」
T「まずはルーツの原型について話しますね。16世紀ころ、コロンブスの航海後、ポンセ・デ・レオンが初代総督として統治を開始しました。ここでタイノ族、スペイン人、そしてアフリカからの奴隷たちが混血していったのが、ボリークアのルーツだと言われています。メキシコと話が被ってしまいますが、17世紀の頃はカスタ制度という身分制度がメキシコやボリークアといった中南米の国に出来上がってしまったんです。ただ、メキシコの辺りでは人工的に先住民とメスティーソが多かったんです。特徴としては先住民の文化が強く、独自のメキシコ文化が誕生しました。一方で、ボリークアではカリブ海のプランテーションで多くの黒人奴隷を多く使役したことで、メキシコとは異なる支配構造が作られました。こう言った奴隷制度に基づいて、黒人たちや先住民たちはこの圧政に苦しんで言ったと思います。」
ルシア「植民地の話になるのか?私のこの身体もこう言った負の歴史も背負った上で成り立ってるのか…複雑な気持ちにもなるな。私のルーツのメキシコも母からはメスティーソがアイデンティティだと教えられたな。父からは米西戦争でアメリカが勝って、ボリークアはアメリカの自治領になったと教わったな。」
T「非常に重い話をしてしまいましたね、私は。まさかスペインの新たな一面も知って複雑になりましたからね。真実を簡単に受け入れるのは難しいですよね、ルシアさん。」
ルシア「別にいいよ。私も自分のルーツを深く知りたかったから、ありがとう、T。ところで『マチズモ』って知ってるか?」
T「有害な男らしさって意味ですよね?家族間の中で、『男は強く、一家の大黒柱になれ。女は男を立てて、家庭を支えろ。』と言うやつですよね?なんだかアメリカのマッチョイズムと似てますよね。東京フリーク区以外の一般社会の奴らに言ってやりたいですよ。中南米は情熱的な国だと言う偏見をなくしたいんですから。」
ルシア「私の両親はその偏見に悩んで両想いをしてアメリカフリーク州に移住して、私が生まれた。クインみたいにインディアナ州で生きづらくて移住したのと少し似てるな。」
クイン「そうだったのか。俺のハニーのパパとママがそう言う理由で来たのか…」
ルシア「そもそものきっかけがマッチングアプリで二人が駆け落ちしたことから始まったんだ。伝統的で保守的なメキシコやボリークアに住みたくないっていう理由でね。それでフリーク州へ移住した。ミャンマー料理を食べるのが好きになったのは両親の影響だから。話によると、ハネムーンのミャンマー旅行に行ってその時食べた味が忘れられなくて、メキシコに持ち帰った。それ以降は我が家庭の定番なんだけどな。テーラワーダ(上座部仏教)にももちろん改宗して信仰するようになった。我が家にとってはマチズモは煩悩だからな」
コメント
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うわあ……重い歴史の話を、登場人物たちが自分のルーツとして受け止めてるのがすごく印象的でした。特にクインが「重い歴史を背負って生活してるんだよな」って泣くところ、胸にきたな。ルシアの「マチズモは煩悩」って締めも、現代に生きる視点としてすごく好きです。歴史の「正義の難しさ」を、ただの知識じゃなくて実感として描いてるところが本当に丁寧でした。