「ほんとに友達になってくれるの?!」
そういってとびきりきらきらの笑顔を向ける君にいつしか夢中になった。
ひたすらに前を向いて全力で走って、頑張りすぎてボロボロになってしまう。
触れたら壊れてしまいそうなくらい繊細で自分を守るためにとげを出す綺麗な綺麗な薔薇の蕾。
どんなに仲良くなっても、どんなに色んな話をしても、一歩近づけばその分、また一歩君は遠ざかっていく。
君に笑って欲しくて、花を咲かせたくて、今日も君に会いに行く。
初代茨の魔女__それはどんな人をもたぶらかし、どんな人からも血を吸い、何処までも美しい黒い薔薇を咲かす艶やかな赤い髪に翡翠の瞳の美貌の持ち主
人々は過激で美しい茨の魔女を恐れた。中には崇拝する者もいた。茨の魔女は戦場で歌うように軽やかに詠唱したという。
「血を浴び笑って咲く茨 茨で全てを覆い隠せ さぁ咲き誇れ私の薔薇要塞」と。
かの詠唱は噂と共に恐れ、憎み、時代を超えて伝われてきた。だが、子孫は何代目になっても人喰い薔薇が使えなかった。
でも、いつか人喰い薔薇が使える者が出てくるかもしれない。一族の期待は重く、たくさんの血を残した。
そうしてついに使える”器”が生まれた。
それが六代目茨の魔女ラオネ・ローズヴィーグ
そんな偉大な星のもとに生まれたラオネはありとあらゆる才能に恵まれた。魔力量は国で一番高く、植物付与やローズヴィーグ家の伝統の魔術”薔薇要塞”も歴代の中でトップクラスに扱いが上手かった。だけど人と関わることは出来なかった。
人に飢えたラオネは友達が欲しくて必死になった。一緒に遊ぼうと何度も何度も声を掛けた。
それでもみんな怖がって一目散に逃げていく。
「東の森の奥には恐ろしい恐ろしい魔女が居るから近づいてはならない」
「だから、何があっても森の奥には入ってはいけないよ」
そんなことを子供たちが市井で怪談話のように噂され言い聞かせられているなんて知る由がなかった。
ラオネは諦めずに声をかけ続けた。
「いいぜ、俺たちが遊んでやるよ」
何人かの男の子たちはにやっと笑って言った。いいよと承諾されたことが嬉しかった。初めて誰かと遊べる、そう思った。
「ほんとに?!じゃあ何して遊ぶ?」
「あそこの木に登って枝に乗ってそっから降りてくる速さを競争をするんだよ」
そう言って近くの木を指さした。登りやすそうな丁度いい大きさだ。これくらいの枝なら大体折れはしないだろう。
「いいね、それにしよ!」
ラオネはにっと歯を見せて笑った。
「お前が先攻な」
「じゃ、始めるぞ~、、3・2・1よーいドン!」
ダッと音を立てて土を蹴った。木のでこぼこに上手く足を引っ掛けてするすると登っていく。
枝に手を伸ばしてぐっと力を入れて枝に乗る。枝からいつもよりちょっと広い視野で周りを見てみる。木の根元では男の子たちが上を見上げて笑っていた。
「油断したな!」
「へっ?」
その時乗っていた枝がぐらりと揺れた。慌ててぎゅっと力を入れて枝をつかむ。
何が起きたのか、分からない。ガンガンと何かを殴る音だけが耳に残る。
バキッ
「あっ、、」
一つ呟いて足場は不安定になってあっけなく木から落ちた。豪快に音を立てて落ちる。
何があったのかと上を見上げると男の子たちはラオネを眺めてにやにやと薄気味悪く笑っていた。
その時初めて”悪意”が何か知った。どんな理由でそうしたのか、それは幼いラオネには分からなかった。
泣くことを知らないラオネは茫然としていた。どうしていいかわからない溢れる感情の抑え方を知らないから。
「あんたたち、うちの弟に何してんのよ!」
突然キーンと耳がつぶれるほどの怒声が聞こえる
「ねえ、ちゃん、」
振り向いた姉ちゃんは一瞬だけ顔を苦し気に歪めて、またいつもの表情に戻った。
「さっさとここから出ていきな!」
「”は、うわぁ”ぁぁぁぁ”ぁぁ!!」
さっきまで楽しそうだった男の子たちは心底怖いものを見る目で俺たちを見て、悲鳴を上げて戻っていった。
「ほんと、ばかだねあんたは」
「あはは、、木、揺らされて落とされちゃったみたい」
「はぁ、、、帰るよ」
「はぁい」
ラオネはおぶわれて曇り空の向こうの家に帰った。
ちち、ちちちー
うっすらと小鳥の鳴く声がする。
「う、うぅ、、、」
ぱち
朝だ。小鳥の鳴き声と窓から吹く暖かな風で起きる。
「なんだ、夢か、、、」
小さい頃の記憶だろうか。何を見たのかもう、覚えていない。
嫌な夢、だったのだろう。頬が湿る水滴の跡がある。
「嫌な目覚めだなぁ、、」
部屋でぼうっとしていると鏡越しに自分が見えた。
寝癖が酷い白い髪とところどころ残る地毛の赤。薄い赤と青のオッドアイ。
初代様に似た容姿の自分を少しでも変えたくて、ちょっぴりでも家に反抗したくて勢いで白色に染めた。
瞳も隣国の進んだ医療技術で変えてもらったがどうにも上手くいかず黄色の瞳にはならなかった。
「ま、いいや」
大きく伸びをして気持ちを切り替える。どうにも朝は弱くてはっきりと目覚めるまでに時間がかかってしまう。
「ご飯、食べよ」
考え事をしながら身支度を済ませて自室の扉を開けてまたいつも通りの朝は始まる。
後書き的な(やかましいので続けてみたい方は飛ばしてどうぞ)
いや、もうまじで長いですね。
え?ラオネって誰やねんって思った方、心配しないでください!
ちゃんと主人公だし、後々いい感じにつなげますよ!ごりっごりのファンタジーだし上手く物語についていけなくて
思考が置いていかれるよね、頑張ってください!
2200文字!一つの短編できちゃうね。
一話が長すぎる(以後はこれより短くする)the小説お疲れ様でした
コメント
1件
なんか、めっちゃいい👍(?) マジで