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鷹槻れん

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#極道
鷹槻れん

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エレベーターホールへ着くと、ちょうど到着を告げる電子音が鳴った。
扉が開く。
中から姿を現したのは、営業部の日下仁人だった。どうやら外回りから帰ってきたところらしい。
「小笹」
「日下……」
「お前、どこ行くんだ?」
仁人はそう尋ねながら、箱から出るなり、瑠璃香の横へ立つ藤代に視線を移した。
「えっと……少し呼ばれてて」
「誰に?」
「社長に」
答えた瞬間、仁人の目が大きく見開かれる。
「社長!?」
思わず上がった声に、先にエレベーターへ乗り込んだ藤代が、穏やかな笑みを浮かべたまま一礼した。
手元が操作パネルに伸びているので、扉が閉じないよう「開」ボタンを押してくれているらしい。
「日下さん。申し訳ありませんが、社長がお待ちですので」
「あ……すみません」
仁人は反射的に道を譲る。
「じゃあ、またあとで」
「あ、ああ……」
瑠璃香は軽く会釈をすると、藤代が待つエレベーターへ乗り込んだ。
扉がゆっくりと閉まる。
その向こうでは、まだ状況を飲み込めていない様子の仁人が、何か問いたげな眼でこちらを見つめていた。
***
エレベーターの扉が閉まるなり、仁人はハッとしたように踵を返す。
本来なら営業部へ戻るべきところだったが、少しだけ迷った末、広報部広報課へと行き先を変えた。
「おい、悦子」
今までは仁人から〝木嶋〟と苗字を呼ばれていた悦子だったけれど、先日彼に長年の想いを打ち明け、晴れて付き合うようになってからはお互いに下の名で呼び合うようになった。
だからといって、職場では基本今まで通り苗字で呼ぶようにしようね、と決めていたので、〝悦子〟と呼ばれたことにちょっぴり慌ててしまった。
「……! な、なにっ?」
周りの視線を気にしながら、サッと席を立つと、仁人に目配せして廊下へと誘う。なんとなくこのままここで話すのは憚られた。
「小笹が、社長秘書の藤代さんとエレベーターに乗ってったんだが……何か聞いてるか?」
「え? 瑠璃香が?」
名前のことを咎めようと思ったけれど、まくしたてるように告げられた仁人からの言葉に、悦子は驚いて目を瞬いた。
「なんで?」
「よく分かんねぇーけど……社長に呼ばれたらしい」
「社長に?」
「ああ。藤代さんが直々に迎えに来てた」
悦子は瑠璃香の配属先の企画宣伝課へ視線を向けた。
「……何だろう」
「俺が聞きたい」
二人は顔を見合わせる。
けれど、いくら考えたところで答えが出るはずもなかった。
***
社長室のある階へ到着すると、瑠璃香の緊張は一気に増した。
ふかふかのマットが敷かれた、ラグジュアリーホテルみたいな廊下を進む藤代の背中を追いながら、無意識にスカートの皺を伸ばす。
昨夜、晴永から角宮社長が自分に謝罪したいと言っていたという話は聞いている。
それでも、晴永の祖父と改めて向き合うのだと思うと、胸の奥が落ち着かなかった。
(私、本当におじいさまから晴永さんの相手として認めていただけているのかな……)
盛晴から直接そういう言葉を投げかけられたわけではない。
だから、どうしてもソワソワする心は止められなかった。
そんな瑠璃香の心配をよそに、藤代がこのフロア内で、ひときわ重厚な扉の前で足を止めてしまう。
ドアには、『社長室』というドアサインが標示されていた。
藤代が慣れた手つきでノックをすると、中から低い声が返ってきた。
「入れ」
「失礼いたします」
藤代が扉を開く。
「小笹瑠璃香さんをお連れしました」
促されるまま室内へ足を踏み入れ、瑠璃香は目を見開いた。
社長席の前には、盛晴が立っている。
その傍らには副社長の角宮清香。晴永から、本当は新沼清香なのだと聞かされているけれど、社内では角宮姓で通っていたから、瑠璃香の中では角宮副社長という認識の方が強い。
(副社長は……晴永さんのお母様……なんだよね)
そう思うとますます緊張してしまう。
だが、そんな瑠璃香を安心させるように、清香の隣には晴永の姿もあって、こちらを見て優しくうなずいてくれた。
それは、まるで〝大丈夫だ〟と言われているようで……。
「晴永さん……」
思わず彼の名前を呼ぶと、晴永が安心させるように再度うなずいた。口元に浮かんだ柔らかな笑みが、瑠璃香の心をふんわりと包み込んでくれる。
あまりにも晴永と長々とアイコンタクトを取りすぎたのかもしれない。
コメント
2件
日下くんに見られたのが吉と出るか凶と出るか💦
ああ、ようやく社長室に到着したか……このエピソード、日下と悦子のほっこりした関係性がいいアクセントになってるね。晴永が「大丈夫だ」って何度もうなずくシーン、言葉より効くものがある。緊張で張りつめた瑠璃香の空気が痛いくらい伝わってきたよ。次、どうなるんだろう。