テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
ほむぺ⋆*
1,381
1,264
#あべさく
めかぶぷりん
6,121
195
昼頃になって、昼食を済ませると今度は街へと繰り出した。
陽ヶ瀬の中心部を通る大通りには、二、三階建ての建物がずらりと並んでいる。土産物店や雑貨店、カフェに食べ歩きのできる飲食店。その合間には昔ながらの商店も混ざり、観光客だけでなく地元の人たちも行き交っていた。
店先には色鮮やかな看板や幟が並び、軒先からは涼しげな風鈴の音が聞こえてくる。通りの向こうには時折、建物の隙間から陽ヶ瀬ブルーの海が覗いた。
ホテル周辺のゆったりとした空気とは違い、人の話し声や店員の呼び込み、食べ物の香りが入り混じる通りは賑やかで、歩いているだけでも目移りしてしまう。
気になったお店に入り、それぞれで楽しむ。バラバラに入る時は声をかけ、時には一緒にスイーツを食べ、思い思いに過ごしていた。
その中の一つ、様々な天然石やガラスの工芸品が売られている土産物屋に足を運んだ。
🩷「おお、石だらけだ」
🤍「佐久間くん、あんまりはしゃがないでよ。ガラスも混じってるんだから」
🩷「俺をなんだと思ってんだよ」
🤍「暴走機関車?」
💛「違いない」
そんな話をしながら、店内を見て回る。その中で、青緑色の透明感のある石が目に留まった。
💚「これ……陽ヶ瀬ブルーみたいだ」
阿部が、細い銀色のワイヤーで縁取られた石を手に取ると、奥から店員の女性が近づいてきた。
「よくお分かりですね。こちら、陽ヶ瀬で取れる《陽ヶ瀬石》という変わった石なんですよ」
💚「変わった石?」
「特徴は、光の加減で見える波のような煌めき」
言われて、指で持った石を蛍光灯に透かし、右に左に動かしてみる。
💚「ホントだ……波の揺らめきみたい」
「でしょう? それと、耳元で軽く振ってみてください」
言われたとおりに耳元に持って行って、小さく振ってみる。すると、「サラ……」と波のような音が聞こえた。
💚「凄い。見ても聴いても波だ」
阿部の反応を見て、なんだなんだと、佐久間とラウールと向井が集まってきて、阿部の近くにいた目黒もその様子を眺めている。
「そうなんです。海を持ち帰れる石として、大変、人気なんですよ」
🩷「へぇ、すげえな」
🤍「お姉さん、これってバッグチャーム?」
「いえ。小さい陽ヶ瀬石なら、ピアス、イヤリング、ブレスレットにできますし、大きいものだとペンダントやチャームが人気ですね」
🤍「え、欲しいかも」
「しかもこの石、物によって音が違うんですよ。なので、お好きな音を探して持つのがオススメです」
🩷「マジか。聞き比べてみよー」
🧡「さっくん、後で見せ合いっこせん?」
🩷「いいね、やろやろー」
🖤「阿部ちゃんも買うの?」
💚「うん、記念に。めめは?」
🖤「俺はいいかな。そういうのあんまり付けないし」
🤍「阿部ちゃん、どれにするのー?」
💚「ちょっと迷ってるけど、ブックマーカーにもできるみたい」
🤍「へえ、オシャレだね。阿部ちゃんっぽい」
💚「ラウは?」
🤍「ちょっと迷ってる。いつも持ち歩いてるバッグにはつけたいんだけど、チャームとかキーホルダーだと後ろになっちゃうから、ベルトのとこに付けたくて」
💚「ああ……これは? ピンブローチ。これなら、他のとこにもつけられるし」
🤍「いいかも! ありがとう、阿部ちゃん」
💚「あ、マドラーある。舘様、前にマドラー探してなかった?」
❤️「よく憶えてるね。小さい石が揺れてるの、いいかもしれない」
💚「うん、似合うと思う」
それぞれ、音や波の模様の煌めき具合を確かめながら石を選び、どのパーツにするかを選んでいた。
結局、佐久間はペンデュラム、向井はベルのようになった割れない風鈴、ラウールはピンブローチ、阿部はブックマーカー、宮舘はマドラーを購入する事になった。
お店の外に出てから、それぞれの音を聴いてみる。
佐久間のは、「シュワ……」と泡がほどけていくような音。
向井のは、「サラァン……」と鈴のような余韻のある音。
ラウールのは、「サァ……」と波が引いていくような音。
そして阿部と宮舘のは、「シャラ、シャラ……」と小波が続けて寄せてくるような柔らかな音。
🤍「あれ? 阿部ちゃんのと舘さん、同じ音?」
💚「えっ? あ、ホントだ……偶然」
❤️「お揃いになったね」
🤍「物は全然違うのにお揃いの音って、なんかいいねー」
💙「ってか、佐久間のそれ、何?」
🩷「ペンデュラム!」
💙「だから、何するやつ?」
🩷「わからん! なんかかっこよくね?!」
💙「……その感覚がわかんねえ」
それからも何店舗か周っていると、「あら」と声が聞こえてきたので振り向いた。道の脇のベンチに座り、こちらをニコニコと見ている老齢の女性がいるのが分かって佐久間が近づく。
🩷「こんにちは」
「こんにちは。ごめんなさいね、陽ヶ瀬石が見えたものだから」
女性の視線の先にあるのは、ラウールのバッグについている陽ヶ瀬石のピンブローチだ。
🤍「さっき買ったんだよー」
「わたしも持っているのよ。ほら」
そう言って、女性は頭につけている簪を見せてくれる。
🩷「わぁ、キレイだね! すごく似合ってる」
「ありがとう。とても大切にしているの。あなたたちは、観光で?」
💚「そうです。グランドリゾート茜波ってところに泊まってて」
「あらそうなの。あそこでも出てるんでしょう? あなたたちも気を付けてね」
🩷「ん? 何が出てるの?」
「あら、知らないの? なんだったかしら、眠りに関係してたと思うのだけれど」
🤍「それって、眠り姫シンドローム?」
「そうそう、そんな名前だったわね。わたしらは、異能隠しって呼んでるから」
💜「異能隠し?」
「突然、異能が消えてしまうのよ。少しすると使えるようになるのだけれど、弱くなってしまうみたい。だから、神隠しじゃなくて異能隠し」
聞いた瞬間に、その場にいたみんなが眉を顰めた。
💜「……さっき、あそこでもって言いました?」
「ええ。何人かいるわよ。わたしのお友達も異能隠しにあってね、もう年だから弱くなっても仕方ないって言ってたわ」
💜「その方、会えますか?」
「残念だけれど、去年、亡くなったのよ。もう80だったから」
💜「他の被害者には?」
「ごめんなさい。わたしが知っているのはその方くらいで、住んでいる場所とかはちょっと」
💜「あ、いえ、ありがとうございます。気を付けますね」
そう言って会釈をすると老齢の女性に別れを告げて、大通りから一本中に入った道の方へ向かった。
💛「被害、ホテルだけじゃなさそうだな」
💜「うん。ちょっと調べてみないと分からないけど。めめと康二、ラウと照、舘さんと佐久間、俺と阿部ちゃんとなべ。これで分かれて調査しよう。二時間後にはホテルの部屋に戻って来てほしい。調査対象は、異能隠しについて」
💛「何かあったらすぐに連絡。調査だから無理はしなくていい」
岩本の言葉に頷き、それぞれで動き始めた。
それから二時間後、調査を終えて皆が部屋に戻ってくると、阿部がそれぞれの調査内容をまとめた。
それを受けて、深澤が口を開く。
💜「事件の開始は、およそ二年前。それより前の情報はなかった。確認できた被害者は、13人。亡くなってる方もいるし、引っ越してもうこの辺りにはいないっていう人もいたから、それを含めると22人。思ってたよりも、被害者が多い」
💚「あと違うのは、異能が全て消えてしまう眠り姫シンドロームと、異能が一時的に消えて、使えるけど弱くなったと感じるのが、異能隠し」
💜「異能隠しは陽ヶ瀬地区でのみ確認されてて、他の地域では出てないね」
🤍「じゃあやっぱり、この辺り限定なんだ」
💚「あと気になるのは、異能がなくなっても不便を感じない人が多かったっていうところだね」
🧡「ああ、ホテルで最初に被害に遭ったスタッフも、そんなこと言っとったね」
💛「授かってそんな経ってなかったし、マテリアの色と性質が分かるだけだったから、あってもなくても困らないって」
💚「そう。確認できた異能隠しの被害者も、8人がそう答えてる」
見た光景を一つだけ記憶できる《記憶保存》、二つのものの位置を変えられる《位置交換》、触れたものの音を消せる《サイレント》、指定した範囲の水を弾く《撥水》など。あれば使うけれど、なければないで困らないというものばかりだった。
それも完全に消えたままというわけではない。しばらくすると再び使えるようになるものの、記憶保存だと鮮明ではなくなる、位置交換だと対象物の位置が思っていたところとずれるなど、今までよりも精度が下がるというところだ。
💛「よし。被害者の数はもう少し多そうだけど、異能隠しについては二ヶ月前より後には起こってない。何らかの理由でホテルだけに絞られたのかもしれないな。次の眠り姫シンドロームは、順当にいけば明日。昼寝から目覚めなかった人もいるから、明日は日中から警戒しておくぞ」
💜「そうだね。明日は見回り中心にしよう。だからこのあとは、温泉に入って、英気を養うこと」
準備をし、昨日とは違う地下にある大浴場へとやって来た。
昨日は温泉に入っておらず乗り気ではなかった阿部も、今日は目黒に手を引かれてやって来た。事情を知っている古参メンバー達は大丈夫かと心配になりながらも、本人が嫌がっていなさそうなので、目黒に任せる事にした。
洗い場で全身を洗ってから、いざ温泉へ。大浴場は広く、ジャグジーや寝湯、温度の違うお風呂など様々な種類があって皆テンション爆上がりだ。
❤️「気持ちいいね」
💙「あー、寝れる」
💛「寝んなよ」
🖤「阿部ちゃん、掴まって。ゆっくり、ゆっくりでいいから」
💚「う、うん……あー、なんか緊張するぅ」
🧡「温泉に入るのに緊張って、かわええなあ」
💚「めめ、絶対離さないでね! 絶対だよ!」
🖤「はいはい」
🩷「蓮ニヤけてんぞー」
🖤「うるさいよ、佐久間くん。康二とあっち行ってて」
🩷「うおっ! 洞窟みたいなとこあんじゃん!」
🧡「ひゃっほーい!」
💛「温泉内で走んな!」
🤍「僕、見張ってくるね~」
💜「頼りになる最年少だなあ」
💙「お前の役目だろ、最年長」
こんな感じで和気あいあいとしていたのだが、阿部は慣れていないからか早々にあがり、目黒と、のぼせそうなラウールは先に部屋に戻ってきていた。
目黒は冷蔵庫から水のペットボトルを取り出し、リビングのベンチソファに座っている阿部と、一番長い座面に寝転がっているラウールに手渡す。
🖤「ラウール、大丈夫か?」
🤍「んー。佐久間くん達に付き合うの、結構、大変なんだよー」
💚「いつもありがと、ラウ。無理しなくていいからね」
🤍「大丈夫、無理はしてないよ。ただ、サウナ我慢対決で僕が調子に乗っちゃっただけ。誰がアイス奢るかで勝負してたの」
🖤「ああ、それで。ほどほどにしとけよ」
🤍「でも勝ったよー。岩本くんとかしょっぴーには敵わないけど」
💚「あの二人、三周目に入ってたね」
🤍「ね。しかも一周が長いの。あれはさすがに付いていけない」
💚「めめは良かったの? お風呂好きなのに」
🖤「昨日めっちゃ満喫したし、風呂は好きだけど、意外と長湯しないよ。ちょっと入って休んで、ちょっと入って休んで、くらい」
💚「そうなんだ。まだ時間あるし、後でもう一回行ってもいいからね」
🖤「眠気に勝てればそうするよ」
何気ない会話をし、そのまま夜は更けていった。
眠っている阿部の頭の中で、音が聞こえる。それは、寄せては引く波のような音。それも、大きな音ではなく、小さく何度も行き来している。
シャラ、シャラ……と。
段々と近づいてくる音。けれど突然、ぶつりと途切れた。何の音もなくなり、阿部の意識はそのまま深く沈んでいった。
コメント
5件
わぁ💦💦 めっちゃ続きが気になります🥹 お風呂入る💚可愛すぎます🤣

頭の中で鳴った音が何か鍵になるのかな…