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五条悟が福岡分校に来てから数週間が経った。奨也は彼との訓練を通じて自分の術式の可能性を少しずつ理解し始めていたが、それ以上に彼を苛立たせたのは、五条が持つ「何でも知っているような態度」だった。
ある日の夜、奨也は福岡分校の中庭でハンドスピナーを回しながら考え込んでいた。
「何なんだ、あの人は。本当に僕たちを鍛えたいのか、それともただの暇つぶしなのか……。」
その時、背後から軽い足音が聞こえた。振り返ると、そこには五条が立っていた。
「おやおや、こんな夜更けに悩み事かい?」
「……監視でもしてるんですか。」
「そんなつもりはないけど、君が気になる存在なのは事実だからね。」
五条は奨也の隣に腰を下ろし、星空を見上げた。
「奨也君、君は自分が何のために術師になったか、考えたことある?」
「……僕にはそんな大層な理由なんてありません。ただ、禪院家の分家として生まれたから、それに従っているだけです。」
その答えに、五条は少しだけ表情を曇らせた。
「分家ね。君は分家としての役割に満足している?」
「満足も不満もないです。それが僕の生き方ですから。」
五条はしばらく沈黙した後、静かに語り始めた。
「実はね、僕が福岡に来たのは、分校で君たちを鍛えるためだけじゃないんだ。」
奨也は五条の顔をじっと見つめた。
「……それって、どういう意味ですか?」
「上層部からの命令さ。福岡にある御三家の分家を根絶することが目的だ。」
奨也の心臓が一瞬止まりそうになった。
「……根絶?」
「うん、禪院家、五条家、加茂家。それぞれの分家が福岡を拠点にしてきたけど、本家から見ると、分家は存在そのものが厄介なんだってさ。」
「でも、それって……!」
奨也は声を荒げたが、五条は彼を制するように手を上げた。
「僕は分家を潰したいわけじゃない。ただ、上層部の命令に従ってここに来ただけ。だけど、君みたいな面白い奴に出会ったら、やっぱり考えちゃうよね。」
五条の表情は、いつもの軽薄な笑みから一変し、真剣なものになっていた。
「奨也君、君はこれからどうする? 分家として、ただ命令に従う人生を続けるのか、それとも……?」
奨也は五条と向かい合っていた。昨日の会話以来、彼の中で何かが変わり始めていた。
「僕に何ができるのかわからないけど……僕は分家を守ります。それが僕の生きる理由だから。」
その言葉に、五条は満足げに微笑んだ。
「いいね。じゃあ、君がその覚悟を証明できるよう、僕が全力で鍛えてあげるよ。」
五条の言葉には、普段とは違う重みがあった。