テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「ねぇ、佐久間」
「んー?なぁに、阿部ちゃん?」
雑誌の撮影の合間。休憩スペースのソファで隣り合って座り、阿部亮平が読んでいたクイズ雑誌から顔を上げた。
佐久間大介は、阿部の肩に頭をこてんと乗せたまま、スマホでアニメの情報をチェックしている。いつもの平和な光景だ。
(よし、今だ…!)
阿部は心の中で、ぐっと拳を握った。
最近、佐久間は阿部のどんな「あざとい」行動にも動じなくなってきた。
むしろ「はいはい、阿部ちゃんかわいいねー」と頭を撫でてくる始末。
それがなんだか悔しくて、今日こそはこの天真爛漫な男を赤面させてやろうと、阿部は綿密なシミュレーションを重ねてきたのだ。
「一つ問題ね」
「お、クイズ!?どんとこい!」
スマホから顔を上げた佐久間に、阿部は練習通り、少しだけ真面目なトーンで語りかける。
「俺が、佐久間のことをどれくらい大切に思ってるか。円周率で言うと、小数点第何位まで言えると思う?」
少しトリッキーで、でも答えに詰まれば「答えは『無限』だよ」と甘く囁く準備まで完璧だ。我ながらキザすぎるセリフに、少しだけ自分の顔が熱くなるのを感じる。
案の定、佐久間は「え?」とぱちくりと目を瞬かせた。そして、阿部の言葉の意味を理解すると、みるみるうちに耳まで赤く染まっていく。
「な、な…っ!なにその問題!!」
わたわたと慌てる佐久間の姿に、阿部は「計画通り」と口元が緩むのを抑えられない。してやったり、という達成感が胸を満たす。
「ふふ、降参?」
勝利を確信した阿部が、そう言って笑いかけた、その時だった。
「…そんなの簡単だよ…」
赤くなった顔のまま、佐久間がむすっと呟く。そして、次の瞬間。
阿部の想像を遥かに超える行動に出た。
佐久間は阿部の頬に両手を添えると、ぐいっと自分の方へ引き寄せた。驚きで目を見開く阿部の耳元に、熱っぽい声でこう囁く。
「答えは、『観測不能』でしょ?だって、俺が阿部ちゃんを好きな気持ちも、無限を超えて宇宙の果てまで行っちゃってるから、お互い様だもん」
「え…」
思考が停止する。理屈じゃない。データにもない。佐久間の、どこまでも真っ直ぐで、あまりにも強大な「好き」が、阿部の脳を直撃した。
そして、とどめの一撃。
チュッ。
「…っ!?」
頬に触れた、柔らかくて温かい感触。
今度、顔を真っ赤にするのは阿部の番だった。
「さ、さくま…!ここ、楽屋!」
「あはは!阿部ちゃん顔真っ赤!まーた俺の勝ちー!」
してやったり、と満面の笑みでピースサインをする佐久間。その笑顔はどんな計算式よりも、どんな知識よりも、ずっとずっと眩しくて。
「……もぉ…かなわないなぁ…」
熱くなった顔を手で覆いながら、阿部は幸せそうに呟くことしかできなかった。