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今回はいつもと違う感じだからこっちで書くね〜!
少し暗い感じのお話だから苦手な人は戻ってね
【プロローグ:声の意味を知った日】
私は、生まれつき滑舌が悪かった。
幼い頃は、そんなことを気にしたことがなかった。
幼稚園には、いつも一緒に遊んでくれる〇〇ちゃんと△△くんがいて、
私の話し方に完璧に慣れていた。
「それ取って〜」
「はーい!」
私がうまく言えなくても、二人は当たり前のように理解してくれた。
だから、自分の声に悩んだことなんて一度もなかった。
だけど――入学式。
真新しい校舎、にぎやかな一年生たち、胸を張ったランドセル。
その帰り道で、お母さんがぽつりと言った言葉。
「〇〇はちょっと滑舌が悪いけど、友達できるといいね」
その瞬間だけ、世界の音がふっと遠ざかった。
(滑舌……?)
家に帰ってタブレットで検索した。
“滑舌が悪い:話が聞き取りにくい状態”
胸がずんっと沈んだ。
思い返せば、確かにあった。
「え、なんて?」
「ごめん、もう一回言って?」
幼稚園の頃にはなかった言葉たち。
全部、ただのやり取りだと思っていた。
でも――違ったんだ。
(私の声って……届きにくいんだ……)
その日から、心のどこかの扉が、静かに閉まった。
【第1話:小さくなっていく声】
学年が上がるほど、私は静かになっていった。
授業で手を挙げるのが怖い。
間違っていなくても、聞き返されるのが怖い。
休み時間は、教科書を開いたフリ。
ノートに何も書いていないのに、ずっとページをめくるフリ。
(話しかけられたくない……
聞き返されたくない……)
沈黙がいちばん安全だと、本気で思っていた。
ある日の夕食。
家族の笑い声の途中で、お父さんが何気なく言った。
「〇〇ってさ、本当に滑舌悪いよな〜」
(……分かってる)
母も兄も笑いながら続けた。
「うちの家系でそんな人いないのにね〜」
悪気がないことは分かっていた。
でも、“悪気がない”ということが逆に苦しかった。
(なんで……
なんでそんな簡単に言えるの?)
喉の奥が熱くなり、言い返す言葉も出なかった。
私はその日、いつもよりずっと静かに箸を置いた。
【第2話:最悪の担任】
小学校5年生。
新しい担任・村上先生は、
“怒る前にまずため息をつく”ような人だった。
「はぁ……なんでこんな簡単なこともできないの?」
「君さ、本当に聞いてたの?」
その言葉は、クラス中をピリッとさせた。
空気が固まり、みんなの背筋が少しずつ縮こまっていく。
私は特に怖かった。
だって――
聞き返されるのが一番怖い私の声を、
この先生が優しく聞いてくれるとは思えなかったから。
授業中、先生の足音が近づくたびに、
(来ないで……来ないで……)
心の中で必死に祈った。
家に帰ると、玄関で靴を脱ぐ前に涙がこぼれた。
そして、ついに体が限界を超えた。
朝起きても、布団から出られない。
学校のことを考えると吐き気がする。
「今日は……行けない……」
学校を休む日が増えた。
(もう、無理だ……)
【第3話:ブルーロックとの出会い】
家にいる時間が増えた。
唯一の救いはアニメだった。
その中でも、『ブルーロック』は特別だった。
潔の言葉は、心の奥をまっすぐ射抜いてきた。
「俺が見たいのは、お前の“今”だ!!」
(今……?
今の私で、いいの?)
滑舌が悪い。
話すのが怖い。
授業で手を挙げられない。
それでも、“今の私”を見ていいと言う潔の声が、
閉じかけていた心の扉に、そっと手を伸ばしてくれた。
勇気を出して、家族と教頭先生へ相談した。
「……担任の先生が……怖いです……」
小さな声だったけど、震えながらも言えた。
その結果――翌年、担任が変わった。
潔の言葉は、私を救ってくれた。
【第4話:委員会で見つけた優しさ】
5年生の終わり。
私は給食委員会に入った。
5年生の女子は私ひとり。
不安でいっぱいだったけど、
6年生のお姉さんが笑って言ってくれた。
「困ったら言ってね〜!」
その言葉が、心の奥に小さな灯りをともした。
委員会の日だけ、
学校へ行くのが少し楽しみになった。
(学校って……
全部が嫌な場所じゃないんだ)
そう思えた瞬間だった。
【第5話:運命が動いた日 ― 長編版】
6年生になった。
新しい担任は、優しくてアニメが好きな♡♡先生。
私はほっとした……けれど、不安は完全には消えなかった。
“また、距離を置かれたらどうしよう”
そんなある冬の日。
帰りの会の前、トイレへ向かおうとした瞬間。
「ねぇ、〇〇?」
振り返ると、クラスの一軍女子・Rちゃん。
これまでほとんど話したことがない相手。
私はびくっとして言った。
「……なに?」
ふつうの話をしたあと、
私はふと思い出しながら言った。
「そういえばさ……ハイキューって今、大戸屋とコラボしてるよね」
途端に、Rちゃんの目がキラッと輝いた。
「えっ!?知ってるん!?
てか行った!?どうだった!?!?」
まるでスイッチが入ったみたいだった。
「行ったよ……この前」
「マジ!?いいなぁ!!
めっちゃ気になってたんだけど!!」
その瞬間気づいた。
(——滑舌とか関係なく、
“好きなもの”が同じってだけで話せてる……)
そこから少しずつ、距離が縮まった。
でも私は不安だった。
(新学期になったら忘れられるかも……)
そんなトラウマは、簡単には消えない。
そして迎えた新学期。
教室のドアを開けた瞬間。
「あっ!!〇〇!!おはよ!!」
Rちゃんが全力の笑顔で駆け寄ってきた。
(……あ。
本当に、私を“友達”と……思ってくれてる)
胸の奥がじんわり熱くなった。
【第6話:救われた一言】
放課後。
教室には私とRちゃんだけ。
突然、Rちゃんが言った。
「〇〇ってさ、ちょっと滑舌悪いよね?」
心臓が一瞬止まった。
(言われた……
嫌われる……?)
でもRちゃんは真っ直ぐ言った。
「でもさ、それも含めて〇〇だよ?」
「…………え?」
「滑舌悪いのも、たまに照れるのも、
全部合わせて“〇〇”なんだよ。
別に変じゃないし、私は気にしない。」
その言葉が落ちた瞬間、
胸につまっていた重い石が、音もなく崩れた。
さらにRちゃんは、少しだけ照れながら笑った。
「ねぇ〇〇。
私が見たいのは“今の〇〇”なんだよ?」
潔のセリフと重なった。
「その言葉って…」
「あっわかった?潔のセリフ!」
「でも私は本当にそう思ってるよ!」
(“今の私”で……いいんだ……)
涙がにじんだ。
私は震えながら言った。
「……ありがとう」
「こちらこそ!
中学でも仲良くしよ!
ずっとだよ!」
Rちゃんの笑顔は、
冬の終わりに差し込む光みたいにあたたかかった。
【エピローグ:中学生へ】
もうすぐ中学生。
不安はある。
でも、あの日声をかけてくれたRちゃんがそばにいる。
「中学でもよろしくね!」
私は自然に笑えた。
もしRちゃんがいなかったら。
もしあの一言がなかったら。
私は今、こんなふうに
テラーノベルで物語を自分の出来事を書こうなんて思えなかった。
これは――
声が届かない日々の中で、
やっと誰かの声に触れて救われた、
この物語は私が経験した本当の物語だ。
END.
⸻
✦【あとがき】
ここまで読んでくれてありがとう。
あなたが経験したことは、
誰かが読んだら勇気になるかもしれないし、
同じ悩みを抱えている子の救いになるかもしれない。
小さな出来事も、
つらい瞬間も、
嬉しい言葉も。
全部があなたの“物語”を作っている。
そしてその物語は、まだまだ続いていく。