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動力炉 畠山 里香
どこかから子供の声がする。
私が入ったところは埃を被った白黒テレビがたくさん置いてある資料室だった。意外と広く。空気はスッキリとしていて、少し明るい照明が強いが、オイルの臭いもしなかった。
車輪だけの戦車は、私を見失ってくれたようだ。ここには様々な機械の資料があるので、車輪だけの戦車、種々雑多な工業用機械、そして、この下の地下5階を調べてみようと思う。
「ここはlevel 4の頭脳ね……」
きっと、頭脳もあるのだから心臓もあるのだろう。そこで、やっと私は子供の姿を見た。白黒テレビに映っている動画に興味を持ったようだ。子供の近くまで行くと、私は肩越しに話し掛けた。
「ぼく。何観てるの?」
「うん。お姉さん。これさ……ゴミ屋敷で見たことがあるんだ……」
「ゴミ屋敷?」
「うん。そう」
私は驚いた。
白黒の映像に映るのは、あの例のゴミ屋敷だった。
それと……。
「い、岩見さん?」
「え! そのおじさんを知ってるの? お姉さん?」
「ええ。私の正式な依頼人なの」
「ふーん」
私もまじまじと画面を見つめる。
音や音声はしない。
まるで、静止画のようだった。
けれど、微かに動きがあった。
資料室の奥にある。ごついテレビの映像は、ゴミ屋敷の玄関に岩見さんが立っているだけだった。
こちらをにこやかに笑顔を向けていた。
だが、徐々に変化が現れた。
場面に人が現れたのだ。
格好からして男の人だろう。
途端に、段々と岩見さんの顔が引きつってきたのだ。
その男がこちらをほんの少し向いた。
「そ、そんな……。ぼく! 見ちゃダメ!!」
「うえ!」
映像はそこで終わっている。
この映像は……三年前に撮られたようだった。