物語の前置きなのに、プロローグだけで17,000文字以上ありました(馬鹿かな?)
全体の流れはzmemですが、最初の方はgrem成分多めです。
捏造設定てんこ盛り。
次回より、注意書き少なめになります。
ここを読んで「やはり合わない」と思った方は、すぐにブラウザバックしてください!
おkですか?
覚悟完了しましたか?
わんくっしょん。
逃げるならいまのうち。
はーじまーるよー。
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「日本の大学に、交換留学に行かないか?」
親しくなった経済学部の教授から、エーミールはそう誘われた。
「日本…ですか。とんと縁がない国ですね」
「ですが、興味はあります」
教授は満面の笑みを浮かべた。
「キミならそう言ってくれると思ったよ、エーミール君。生憎とキミが在籍する工学部枠に空きがないので、経済学部学生としてだが、キミなら問題ないだろう」
「ありがとうございます」
「すぐに紹介状を書こう。向こうの都合で、出発は三月頭と、あと二週間もなく世話しないが、大丈夫かい?」
「パスポートもありますし、交換留学生ならビザも面倒はないでしょう。住むところは…、日本は治安もいいですし、三月の東京なら外もそれほど寒くないですよね」
「……キミをホームレスにするために、留学を推薦したわけではないんだが。向こうの知り合いに、住む場所を打診しておくよ。それに、行き先は東京ではない」
「どこですか?」
「京都だ」
「ずいぶんご機嫌だな、エーミール。そんなに日本留学が楽しみかい?」
ルームメイトのグルッペン・フューラーは、皮肉めいた声でエーミールに問いかけた。
「ああ、そうだね。日本も楽しみだが、何よりようやくキミとおさらばできるのが、嬉しいよ」
「つれないね~。3年も一緒に暮らした深い仲だというのに」
「キミと深い仲になった覚えは、ないですけどね。それにしても、3年で随分と書籍が増えてしまったな」
「キミの部屋は図書館の書架のようだな。というか、本をベッドに寝ているのか?」
「半分当たりだな。デスクの下か椅子に座って寝ている」
「……私の部屋のベッドが、半分空いてるのだが」
「図体のでかいキミと一緒に寝たら、潰されてしまう。キミの標本になるのは御免だね」
「……本当に行ってしまうつもりか?」
「当然だ。せっかくの機会だからね。それに教授の話だと、トーキョーよりオオサカの方が食事が旨いらしい。それに、キョウトも近い」
「食い物目当てかい」
「リトルトーキョーのギュウドンは美味かったが、それ以上に美味いものがあるという」
「……キミの祖国の食事と比べれば、どこも美味いだろうよ」
「フィッシュ&チップスの悪口はそこまでだ。が、私もアレはキライだな」
「テンプラも似たようなモノだろ?」
「ぜんっぜんっ違うッ!いいか?テンプラというのはだな…」
その時、エーミールの携帯電話に、着信を知らせる音が鳴った。
「失礼、グルッペン。…hello?」
「ああ、教授でしたか。…はい、準備は順調です」
恐らくは留学の件での連絡なのだろう。エーミールは電話をしながら、自室へと行ってしまった。
「本当に行くんだな、エーミール…」
閉ざされたエーミールの部屋のドアを見つめ、グルッペンもまた胸のポケットから電話を取り出した。
「……私です。例の件ですが……、そうです。無理言ってすいません」
関西国際空港。
エーミールを迎えに来たのは、K大学国際政治経済学部教授であり民俗学の権威でもあるという、八雲阿久教授という男だった。
教授というにはそこそこ若く、外国人であるエーミールを喜ばそうとしているのか、着物姿でのお迎えである。が、後々この着物姿で教鞭を取る八雲教授の姿を見て、この服装こそが彼の普段着と、エーミールは知ることとなる。
「君がエーミール君やね。ようこそ日本へ。ボクが八雲阿久です」
物腰の柔らかい落ち着いた風情の男は、ニコニコと人の良い笑顔を浮かべ、エーミールに握手を求めた。
だが当のエーミールは、八雲教授の前で完全にフリーズしており、表情すら動かない。
「なんだなんだ、エーミール。せっかくの八雲教授のお迎えに、挨拶もナシなのか?」
八雲教授の隣に立っていた金髪の大柄男が、エーミールを笑い飛ばす。
「……何で貴様がここにいる、グルッペン……」
「私も日本へ留学することになってな。しばらくの間、八雲教授にお世話になることに決まった」
「ていうかボク、グルッペン君とエーミール君の二人のサポートをって頼まれてるんやけど、ええんよね?」
「そうです」
「違います」
グルッペンとエーミールが同時に真反対の返事をしたことに、八雲教授は困惑を隠せなかった。
「んっん~~…。と、とりあえずしばらくは、二人共うちで暮らしてもらうとしてやね…。せや、エーミール君も、長旅で腹へったやろ?せっかくやし、何か食ってみたい日本食とか、ある?」
「エーミールが言ってた通り、ここは本当にメシがうまいぞ?」
「それでしたら私、ぜひ食べてみたいものがあるのですが」
「ええねぇ。日本のこと、いろいろ勉強してきとるんやね、二人共」
八雲教授が嬉しそうに、何でもええよと言う。
「たこ焼きを食べてみたいです」
数十分後。
八雲教授の運転するSUV車が、京都方面に向けて高速を爆走していた。
「や、八雲教授ッ!?速すぎでは…」
「ドイツのアウトバーンかな?」
「はっはっはー!たこ焼き食いたい言うてるお客様に、メッチャうまいたこ焼き食わしたるなら、ボクのウチしかないやろー!」
「エミちゃん!グルちゃん!ちょい時間かかるけど、我慢しぃや?」
すごく距離を詰められた気がする。
エーミールとグルッペンは、お互いどうしていいかわからず、ただただ顔を合わせた。
京都市よりさらに北の山間にある、閑静な佇まいの里山に、八雲教授の家がある。リノベーションされた古民家は、古い日本家屋の赴きを残しつつも、グルッペンやエーミールのような背の高い外国人が入っても余裕のある作りだった。
「ただいま~!エミちゃん連れてきたで~。はよタコパしよ、タコパ♪」
「阿久さん速すぎやで!まぁた高速すっ飛ばしてきたんちゃいますやろねぇ?」
家の奥から、女性の声が聞こえた。
最初が肝心だと思い、エーミールは姿勢を正し、八雲教授のご内儀を待つ。
「初めまして。本日よりお世話になります。エーミールと申し」
「坊っちゃんッ!!」
後ろ髪をかんざしで纏めた和服姿の女性は、エーミールを見定めると声を張り上げ一目散に駆け寄ってきた。
「坊っちゃんッ、エーミール坊っちゃん!」
「ゆ、ユカリ…さん…?」
「まあまあ…、大きならはって…!ほんま、お元気そうで…よかった…」
エーミールがユカリと呼んだ女性は、感極まってエーミールに抱きつき、涙を流しつつも嬉しそうに何度もエーミールの頬にキスをした。
「いや~。すまんね、エミちゃん。ゆかりさんに、驚かせたいから黙っとけ言われとって」
「奥さんとエーミールって、お知り合いだったんですか?」
グルッペンが間に入り、ゆかりに質問をする。
「昔、エーミール坊っちゃんのいたお屋敷に、少しの間勤めておりました。短い間しか、お世話してませんでしたが…、立派になられて…ほんまに…」
「…驚いたのはこっちですよ。八雲教授の奥方が、ユカリさんだったなんて…」
なかなかエーミールから離れようとしないゆかりを、八雲教授が何とかエーミールから引き剥がした。
「とりあえずゆかりさんは、エミちゃんをお部屋に案内したって。ボクはご飯の用意してくるから」
「ほな、坊っちゃ…、エーミールさん、こちらになります。荷物お持ちしますね」
「いえ、少しですし、大丈夫ですよ」
「本当に少ししか持って来なかったな、キミは」
エーミールの荷物を持とうとするゆかりの横から、グルッペンが割って入り、エーミールの荷物を持って行く。
機内持ち込みサイズの小さめのキャリーケースと古いステッキが、エーミールの荷物である。
「あら、グルッペンさん、おおきにですわぁ」
「いえいえ。どちらに運べばよろしいですか?」
「グルッペンさんの隣の空き部屋ありましたよね?そこでよろしおすか?」
「隣…ですか…」
エーミールの表情筋がそれとなくひきつるが、拒否することはできない。
しかも古い日本家屋という性質上、避けて通れない仕様。それは
「こちらがエーミールさんのお部屋で、そのお隣がグルッペンさんのお部屋です」
ゆかりがそう言って案内したのは、障子で隔てられた八畳一間の和室。ベッドはなく、押し入れに布団が入っている。クローゼットはなく、衣服を吊るす衣紋掛けという道具と、文机があるだけの簡素な部屋。
「何分急なことやったから、最低限のものしかのうて。申し訳ないです」
「いえ。素晴らしいです。非常に日本らしい、機能美溢れつつ趣のある造りで」
隣がグルッペンの部屋なのに隔てているのは襖一枚で、プライベートもへったくれもない。
という言葉だけは、かろうじて飲み込んだ。
「エーミール。見ろ、畳だぞタタミ。床に直接寝転がってみろ。気持ちいいぞ」
グルッペンはそう言うと、嬉しそうに畳をペシペシと叩いた。
「お屋敷だけやのうて、欧米にはこない習慣ありませんからねぇ」
ゆかりがころころと喉を鳴らして笑う傍らで、大の男二人が畳の上で寝っ転がっていた。
「あー…、これは確かに…。寝てしまいそうになりますね」
「畳がいい感じのクッションというか、吸湿性もあって。何よりこの解放感。実に気持ちいい」
畳を愛でる二人の外国人の姿に、ゆかりは笑みが止まらない。
「気に入っていただけて、よかったですわぁ。もうすぐ食事の準備できる思いますけど、お飲み物お持ちいたしますね」
そう言うとゆかりは立ち上がり、「ごゆっくり」と二人に告げ部屋を出ていった。
ゆかりの足音が遠ざかるのを確認し、改めてエーミールは隣で寝そべるグルッペンを睨み付けた。
「…何で貴様がここにいるんだ、グルッペン」
「言っただろう?留学だって」
「急に留学が決まった私より後の留学なのに、私より先に日本に来ている理由を知りたい」
「そこはどうでもいいだろ。キミだって、日本とは縁がないといいつつ、あんな美しい女性と知り合いだったじゃないか」
「私だって、ユカリさんが日本にいるとは思ってもみなかった。長いこと連絡も取ってなかったし」
「お?子供の頃の淡い恋心でも思い出したか?」
「はっはっは」
エーミールの空笑いを合図に、二人はガチの掴み合い状態になった。
「……頼むから、せめてここでは大人しくしろ。グルッペン」
「貴様次第と言っておくぞ、エーミール」
「永遠に大人しくしとくか?」
二人の間に高まる緊張感。
ふと、外から視線を感じたエーミールは、そちらに顔を向ける。十歳になるかならないかの小さな少女が、おずおずした様子でこちらを伺っていた。
エーミールはグルッペンの腕をぶん投げると、紳士の体をなし、小さな来訪者に挨拶をする。
「失礼しました。このおうちの方ですか?本日よりお世話になります、エーミールと」
「……ごはん…」
障子の向こうから半分だけ顔を覗かせていた少女は、それだけ伝えると走ってこの場を去って行った。
「あーあ。怖がらせたなw」
「うるさいな。ところであの子は」
「八雲教授のお嬢さんの『らん』ちゃんだ。人見知りなところがあるが、なかなか聡明でかわいいぞ」
「お待たせーー!ほな、エミちゃんの歓迎会兼ねたタコパしよかー」
「すんませんねぇ、エーミールさん。ウチの人、たこ焼きに関しては、ほんまにやかましくて…」
「……おいしいよ?」
「楽しみだったんですよね、たこ焼き。いただきます」
できたて熱々のたこ焼きを、エーミールは一気に口の中に入れた。
はふっ。
熱い。
確かにこれは、口の中ではふはふと踊る。
だが、この熱さも込みで、美味い。
「はふっ…、美味い!本当に美味いです、八雲教授」
「はっはー。エミちゃんに喜んでもらえて、よかったわー」
「外はカリッと、中はしっとり…って本当なんですね。すごい絶妙なバランスだ」
「わかってくれる?嬉しいね~♪」
わちゃわちゃとたこ焼き談義に花が咲く一方で、グルッペンは完全に固まっていた。
「おや。キミは食べないのか?グルッペン。こんなに美味いのに」
「う、うん…、美味しそうなん…だが…」
自信の塊であるグルッペンが珍しく言い淀む様に、普段煮え湯を飲まされ続けているエーミールは、溜飲が下がる思いだった。
「そっか。宗教的、文化的価値観から、タコがアカン人もおるからね。グルちゃんもそのクチか」
「……申し訳…ないです…」
食えるものは何でも食ってきたエーミールと違い、グルッペンは食に関してはものすごく繊細だった。
「ええって。こっちこそ配慮足らんで、ゴメンな?」
「でも、そんなこともあろうかと、一応準備はできてんねん」
そう言うと、八雲教授は冷蔵庫の中から、一口大に切られたさまざまな具材を取り出した。
「ソーセージ、エビ、チーズ、かまぼこ…これは魚の練り物ね。スイートコーン、ブロッコリー、そしてボクがオススメなのは、このプチトマトやね」
「なるほど。中の具材は、別にタコでなくてもいいんですね」
「タコ至上主義の過激派もおるけどねー。ボクは何でも美味しくいただく派」
「これならグルちゃんもいけるやろ」
「では、まずはプチトマトから…」
「美味い!これは本当に美味いぞ。エーミールも食べてみろ」
「どれ…、ふむ、これも美味いです」
「はっはー。グルちゃんにも気に入ってもらえて、よかったわぁ~」
一気に雰囲気が和らぎ、和気あいあいとした歓迎たこ焼きパーティーとなったが、グルッペンの中で若干の不安がよぎった。
馴れることができるのか?この雰囲気に。
一週間後。
「ホンマに教授のたこ焼きうめー!なあ、エミさん!」
メッチャしっかり馴染んでいた。
「つい最近まで、タコに嫌悪感抱いとったヤツのセリフと思えんで、グルさん」
エーミールもまた、すっかり関西弁に染まっていた。
「はっはっはー。それはひとえに、ボクが作るたこ焼きが美味いからやな」
八雲教授が、上機嫌にビールをあおる。
「パパのたこ焼き…おいしい…」
「いやー!らんちゃんもそう思ってくれるん?パパ、メッチャうれしー!」
「はい。エミさんもグルさんも、ビールどうぞ」
「やっ、これはこれは」
「ありがとうございます、ゆかりさん」
「いや~…、坊っちゃんにこうやってビールのお酌する日が来るなんて…。長生きするもんやわぁ…」
「まだそない年やないでしょ、ゆかりさんは。あと、エーミールでええですって、もう。グルさんメッチャ笑とるし」
「いやー。エミさんが『坊っちゃん』とか、笑える要素しかないやんw」
あはははは。
「…おっと、もうこんな時間や。明日は講演会あるから、はよ寝ないと」
「神戸でしたっけ?お送りしますよ」
「ありがとな、エミちゃん。講演会終わったら民俗学の研究で山陰回るから、荷物多くて。助かるわ」
「らんも…いきたい…」
「らんちゃんも一緒に来てくれるんー?パパうれしー!」
「ちゃいますよ。らんは、パパに着いていきたいんやのうて、エーミールさんに着いていきたいねんよ。ねー?」
らんが、恥ずかしそうに頷いた。
「おう、エミちゃんよぅ。明日の帰り道、背後に気ィ付けや?」
「フィールドワーク行く人が、殺意マシマシで襲ってこんでください」
「そもそも、らんも明日学校やない?エーミールさんもグルッペンさんも、パパのお仕事のお手伝いも学校もあるんやから、邪魔したらアカンよ?」
母の言うことは正論であり、もっともだ。しかしそれゆえに、年端もいかぬ少女には、納得し難いものがある。
少女は、言葉にできない不満を、無言で俯くことで表す。
「では、こうしましょう、らんさん。再来週から小学校は春休みでしたよね。春休みになったら、みんなで一緒に、USJに出掛けましょう」
「……エミさんと二人がいい……」
「えっ」
「おおーっw」
「あらあら」
「はっはー」
「阿久さん、今すぐピックしまってくださいねー」
ゆかりがやんわりと、だが殺意を明確にした視線で、ピックを取り出した八雲教授を牽制する。
「ほらエミさん。うら若きレディが、頑張ってデートのお誘いしてくれてんのや。ちゃんと返事せな」
グルッペンがエーミールを煽る。
「参りましたね…。えーっと、お父様。春休みになったら、らんさんと二人でお出かけしてもよろしいでしょうか?」
「っかーーーッ!!エミちゃんズルいわぁ、それ。らんちゃんの前でそんなん言われたら、ボクが『ダメ』言えないやつやん!」
「言わせないためです。というわけで、らんさん。お父様の許可いただきましたので改めて」
エーミールはらんの前に立つと、彼女の目線に合わせて腰を屈めた。
「らんさん。春休みになったら、二人でお出かけいたしましょう。付き合っていただけますか?」
「ちょっとー!坊っちゃん、それ私でも落ちるやつー!言われてみたい言葉ナンバーワンですやーん!」
「やかましですよ、ゆかりさん!あ、でも、ボクもそんなんで言われたら、うん、て言いそうや……」
「親バカ達には聞いてません。……よろしいでしょうか?らんさん」
小さな淑女は全身を真っ赤にしつつも、何度も何度も首を縦に振った。
「ありがとうございます。では、当日を楽しみにしてますね」
「明日は学校ですし、歯磨きしてお風呂入って、寝ましょうね」
「では、あとはお父様と一緒に、明日の準備してください。タコパ会場の片付けは、私とグルさんでしておきます」
「え?俺も?」
「当然です」
「ゆかりさんは、阿久さんとらんちゃんお手伝いしてきまーす」
【PROLOGUE②に続く】
コメント
2件
らんちゃんにメロメロな八雲教授w とても面白いです!ww