俺はある日、変わった生き物を見つけた。そいつは多分人間じゃないし飼っても問題ないだろうからそいつの観察日記を作ることにした。
そいつの名前を『モル』と名付ける。
【初日】
モルに出会った。雨の中、俺の家の前に倒れていた。背中にはぺたんとしている蝶の羽があった。頭から触覚も生えてるし足も人の物ではないし。
ただ少し不可解なのが体が謎の粘液(というか膜?)に包まれていた。最初は雨とか泥だと思ったんだけど触るとねちょねちょしていた。
ずっと目を閉じていて、開く様子が無い。何を思ったか俺はそいつを部屋に連れ込んでいた。そして壁に十字架のように貼り付け長い針に羽を指した。
というわけで、現在俺の部屋には粘液だらけのよくわからない奴のでっかい標本ができた。そいつはまだ目を開けていない。これからどうなるのか楽しみだなぁ。
【二日目】
今日も雨。昨日と同じように朝起きたら部屋の壁に変なのがいた。それは昨日より大きくなっていた。昨日のことは夢じゃないのか。
どうやらこいつは成長しているようだ。今度からはもっと大きな針を用意しておこう、羽に変なシワが付かないように。
モルは相変わらず動かないけどよく見ると呼吸をしているよう。よく見ると羽のグラデーションが異常に濃い。そこで俺は一つの仮説を立てた。
この粘液、蛹か?と。蛹なら成長するのも、呼吸しているのも理解できる。ただし何故俺の家の前に居たかはわからない。
でも今はそんなことよりこいつがどんな成虫になるのか気になってしょうがない。早く目覚めないかなー。
【三日目】
モルの成長速度は尋常じゃなかった。もう既に壁際まで成長してるし。昨日の時点では大体羽だけでも50cmくらいだったのに今日見たら70㎝になっている。
流石にでかすぎる気がする。…驚いた。これを書いている際ふとモルを見るとぎゅうっと背中を丸めたり寝返りを打つような動作をしている。
それによく見ると粘液の表面がぱりぱりになっている気がする。これは蛹から脱皮して成虫になろうとしてるんじゃないかと思う。
そう思うといても立ってもいられなくなって急いでカメラの準備をする。
そしてシャッターを切る。 あぁ、素晴らしい写真が撮れた。これがモルの成体の姿なのか……。今まで見てきた昆虫とは比べものにならないくらい…
『醜い』。醜くて、醜くて、堪らない。こんな生物が存在していることに腹が立つ。どうしてこんな姿なんだ。なんで中途半端に人間なのだ。
でもそれがまた、良い。あんなに美しい蝶はこんなに醜くい成長をしているのか。そのギャップが良いじゃないか。最高だ。最高だよ!モル!!
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