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カイガ
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#魔道具職人
こはる
135
「校長を出せ!ぶん殴ってやる!!」「学校にいる教員、全員辞職しろ!!」「こんな学校無くなるべきだ!!」「腐ったエリート思考の糞学校が!!」「虐めを容認するこんな学校を許すな!!」「文部省はどうしてこんな最低な学校を野放しにしていたんだ!?」「中に入れろ!この中にいる奴ら全員潰してやる!!」
私立天成中学校へ押し入ろうとしている暴徒の数々。彼らは全員、この学校の生徒だった学生やフリーター、無職の人間と、そんな者たちの家族や親戚、友人といったものである。
その大半がこの学校で虐めなどの理不尽被害にあった元生徒たちである。彼らは皆、先日のシュートの生配信を視聴したことで天成学校に復讐しようという意思が芽生えて、そんな志を持つ者達がこうして集って、この学校を潰すべく暴動に及ぼうとしている。
被害に遭った元生徒達は皆、在校生だった時も卒業した後も死んだ目をして惨めな思いをしながら日々生きていた。当時虐めの被害を訴えたり教員が差別行為をしていることを訴えても何一つ受け入れてもらえなかった。自分たちの力ではどうしようもないことを思い知り、虐めや見下し、差別に晒され続けてつけられた消えない傷を負ったまま生きていた彼らは、昔と変わらずこの天成中学校に憎悪を抱き続けていた。
そんな彼らにとってシュートは救済者も同然だった。自分たちが出来なかった、したかったことを、シュートはやってのけた。化けの皮が剝がれたこの私立中学校を叩き潰す絶好のチャンスが訪れたと見た彼らは、こうして暴動に出たのだ。
彼らのほとんどは警察に捕まることなど恐れていない、自分の地位や将来を犠牲にしてでも、この私立天成中学校に復讐してやろうと決めていた。
これはシュート自身にも予想していなかったことであり、この様子を自宅から(SNS情報で)見た彼は、驚きつつも大爆笑していた。
「まさか、こんな暴動が起こってるなんて、全く予想してなかった!まさか俺以外にもあのクソ私立中学校をここまで憎んでた人間が、あんなにもいたなんて………。
やっぱりあの学校は存在しちゃいけない、この国…いや、この世の病巣だったんだ……!」
多くの暴徒が天成中学校に対して暴言を吐いているを見て、シュートは心を昂らせていた。自分もあの中に混じって暴言を吐きまくってやりたいと思ってすらいる。
「あ~~~、ただ……このまま校門前でずっとくすぶってたら、警察にしょっぴかれて終わっちまう。どうせなら、あいつらに存分に暴れてもらいたいなぁ。
というわけで、ちょこっと助力してやろうか」
良いことを思いついたシュートは、狐のお面で顔を隠した格好をしてから「空間転移術」で天成中学校の前へ一瞬でワープする。
突然人が現れたことに暴徒たちは動揺するも、狐のお面をした少年であることから彼がユアチューバーSHOTであることに気付いて歓声を上げる。
「皆さん、僕がここに来たことはどうか内緒で。自宅から皆さんの熱意を目にして居ても立っても居られず、こうして参上いたしました。皆さんの想いに応えるべく、ここは僕が一つ、お手伝いをします。門から離れて下さい―――」
そう宣言して暴徒たちを校門から離れさせると、シュートはスキル「怪力」を発動して、固く閉ざされている校門目がけて全力のパンチを放った。
ドゴォンと破壊音とともに校門はひしゃげた形をして倒れた。これで誰もが校舎に入ることが出来るようになった。
「では皆さん、後はご自由に!あ、それとお願いが一つ。2のAの生徒たちが虐めの主犯グループであり、この学校で最も最低な生徒たちなので、《《まぁよろしくお願いします》》」
「「「「「おおおおおおおっ!!」」」」」
シュートの言葉に暴徒たちは雄たけびで応じて、校舎の中へなだれ込んでいった。誰もがこの学校とここで勤めている教員たちを潰そうと息巻いている。
「ぷ……あはははははは!!めっちゃ面白いことになってきたじゃねーか!?最高だよ!!」
校門の外に一人残されたシュートは心底面白そうに笑って、次いで異空間へ移動する。自分がここにいるのが知られないようにのこと。異空間から人気の無い校舎のどこかへ移動、そこで成り行きを見守ることに。
しばらくしてから校舎のあちこち…特に職員室から多くの人の怒号や悲鳴が聞こえてくる。教員たちが暴徒に襲われていることを想像して、シュートは一人爆笑していた。
「まさか、あんな生配信一つで、ここまでの事が起こるなんて!面白過ぎるだろ!」
きっかけはシュートの生配信での暴露。それを視聴してシュートに賛同した人々の声、同じような虐めの被害報告、それらを見た人々のさらなる賛同。加えてSNSを媒体とした様々な有名人の怒りの声、それがいくつも拡散されて全国に伝わっていき、とうとう大炎上して私立天成中学校が一斉に叩かれ始まった。そして最終的にはこうして大規模な暴動まで起こった。
まさにバタフライエフェクト現象。シュートによる生配信という蝶の羽ばたき一つで、テロ活動という嵐が吹き荒れる事態をも呼び起こした。
「あっはっはっは!おう、潰れちまえ。こんなクソ中学校、ぶっ潰れちまえ!!」
誰もいない教室でシュートは諸手を挙げて笑うのだった。
校長室では、暴徒に怯え切った硲が青い顔で電話をかけ続けていた。警察を使ってこの暴動をどうにかしてもらおうと考えているが、今から警察を動かしたところで硲たちの身が無事に済む保障は皆無だった。
「ぼ、暴徒たちが職員室に押し入って、教員たちに次々暴力を振るって……か、彼らが血を流して倒れ……っ!校長先生、このままでは我々まで……!」
「わ、分かってる!だから警察に早く来るよう呼び出してるんじゃないか!ええい、早く来ないか……!!」
硲と教頭は警察を待つ間はただ暴徒に怯えて、不安や恐怖を払拭せんと喚くしか出来ないでいた。もはや校長室には、もうすぐ還暦を迎えるいい大人で学校の頂点に位置している者とは思えない、滑稽な男たちが映っていた。
「あーあ。ほんっと無様だなぁ、お前ら。無理もないか、これはもうテロと言っていい事態だもんなー」
「「っ!?」」
校長室には硲と教頭の二人以外誰もいない。二人以外の何者かの声に、彼らはびくりとして周りを見回す。すると部屋の中央に、いつの間にかシュートがニタニタ笑いながらそこに立っていた。
「な……三ツ木、柊人!?」
「やぁどうも!……違った、お久しぶり~~二人とも。もの凄く大変な事になってるじゃん。お前らがクソなことをしてたせいでーwww」
シュートは煽り調子で二人を嘲笑う。教頭が怒りの形相でシュートに突っかかろうとする。
「貴様はこの校舎はもちろん、学校の敷地内も永久に出入り禁止にしているのだぞ!しかもこんな時に侵入するとは、即刻この校舎から出て行け!!」
「出会いがしらに俺に向かって出て行けとか、今そんなこと言ってる場合なわけ?暴徒たちがもうすぐここにも押し入ろうとしてるのにさぁ?」
シュートの反論に教頭は怒りながらも部屋の扉に目を向けては狼狽する。
「………これは全て、君の仕業だというのか!?三ツ木柊人……っ」
硲は憎しみを込めた視線をシュートに向けて問いかける。
「いやぁ?確かにこんなクソ私立中学校潰してやるとは考えたけど、俺があの暴徒たちにそうしろなんて、意図的な命令は一言も発してねぇよ。
彼らは自分一人一人の意思でああしている。俺がやったのは、この私立天成中学校が本当はどういうところなのかを全国の人々に教えてあげたくらいだ。後のことは俺な~~んにも知りませ~~ん!」
「~~~っ!それは君が裏で暴徒たちを動かしてのと、何も変わらないではないか!?よくも、我が校にこのような凶事を……!」
「だからさぁ、俺なんかに突っかかってる場合なのかって。もうすぐ暴徒たちが来ちゃうよ?ねぇ、どうするつもり~~?」
シュートの煽り質問に硲たちは押し黙る。じっとしてもいられず部屋の中を行ったり来たり繰り返している。
「ちなみに俺がここに来た理由は、お前らが今どんな醜態を晒しているのかを見る為。
そしてもう一つ……お前らがここから安全に脱出できる方法を提示する為」
シュートの二言目に、硲たちは彼に目を向ける。その目には微かな希望が灯っている。助かる提案をした者が復讐の悪魔であるにも関わらず、だ。
「薄々分かってると思うけど、俺はもう普通の人間じゃない。もの凄い力を発揮したり空を飛んだり口や手から火とか電撃を出したり…あり得ないことができる。そしてお前らをここから安全な場所へ一瞬でワープさせることも、余裕で可能だ」
「き、君がどうしてそんな荒唐無稽な力を手にしてるのかはどうでもいい!我々を助けられるのだな!?ならば、早くここから脱出させるんだ……!」
硲の上から目線気味の口調に、シュートは不愉快げに眉をひそめる。
「はぁ?自分らの立場分かってる?まずはさぁ、土下座して謝罪しろよ。俺を蔑ろにして虐めの件も世間に漏れないよう隠蔽したこと。それから、どうかこんなクズ人間な我々をお助け下さい!ってみっともなく床に頭を擦り付けて、お ね が い してみせろよ!」
床に指差しながらシュートは二人に蔑んだ目でそう命じる。硲も教頭も怒りや悔しさで歯を軋らせて逡巡していたが、やがて二人揃って土下座の体勢をとって、シュートに謝罪しはじめる。
「三ツ木柊人…君の虐めの件を無かったことにしようとしたこと、あなたを貶める発言をしたこと、誠に申し訳ございませんでした!」
「どうか、我々だけでもここから安全な場所へ避難させて下さい!謝罪なら後でいくらでもやりますので、どうかお願いします!!」
自分の4~5倍もの年を重ねている大の男二人が自分に土下座して謝罪して、救済を懇願する光景に、シュートは完全な征服感を得ていた。
この時点でシュートの目的は十分に果たされたようなものだが、彼の復讐はまだ終わっていなかった。
「 嫌だねばぁ~~~か。誰がお前らクズどもを助けるかよ 」
シュートは悪意たっぷり含んだ笑みを浮かべて、二人を見下しながらそう告げた。
「な……!?」「は、あ……!?」
二人が唖然とした様子でシュートを見上げる。直後シュートは部屋の扉を開けて、大声で叫んだ。
「おーーーい!!校長室はここだぞーー!中にあんたらを蔑ろにして差別した校長と教頭が、ここにいるぞぉおお!!」
数秒後、シュートの呼びかけに釣られたように、校長室に大勢の声が近づいてくる。とうとう暴徒たちが部屋に入ろうとしてくる。それを察した硲はシュートに暴言を吐くどころではなく、窓を開けて二階に位置するこの部屋から飛び降りて逃げ出そうとする。教頭もそれに倣って窓を開けようとしたその時、シュートが放った電撃の魔術によって二人とも全身が痺れて動けなくなる。
「く、がが…!?」「ぐ、げぇ……っ」
二人とも窓の縁に寄りかかるようにして倒れる。そんな二人の前に立つシュートは、見下してニヤァと悪辣な笑みを浮かべて、
「最初から決めてたんだよ…俺を蔑ろにして貶めたお前らを、どん底に落として後悔と絶望でぐちゃぐちゃにしてやるって。
じゃあな、人間のクズども。俺の分の復讐はこれで終わるけど、ここからはきっとお前らを恨んでるたくさんの人たちの分の復讐があるだろうから、ガンバレ☆」
そう言い残してから、「空間転移術」で校長室から姿を消した。
数秒後、校長室に暴徒が何人も入ってきて、硲たちを目にすると今にも殺しそうな目つきを向けて近づいてくる。
「は、が……や、め………」「あ、あああああ―――」
そして、校長室からたくさんの怒号と二人分の絶叫が響くのだった―――
コメント
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読ませていただきました。51話、一気にここまで来ましたね……。シュートが硲たちの前で「最初から決めてたんだよ」って笑顔で言い放つシーン、鳥肌が立ちました。過去に虐めで傷ついた人たちが暴徒と化して校門に押し寄せる描写も、シュートが「命令はしてない」と言いながら門を破壊して道を開ける流れも、すごく生々しくて胸が締め付けられました。土下座までさせておいて「嫌だね」と突き放す冷酷さに、彼の長年の怒りの重さを感じます。ただ、暴徒たちの復讐が「正義」なのか「暴力の連鎖」なのか、読んでいて複雑な気持ちにもなりました。次が楽しみです。