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第六話
殺す理由
「……なんで殺さないの?」
ふいに背後から、眠そうな声が聞こえました。
「神剣くん……」
いつの間に来たのでしょう。
神剣くんは、ゆっくりと私たちの前へ歩いてきます。
そして、化物となった店主を見ました。
「人間、喰ってるんだろ?」
「それは……」
答えられません。
奥さまが、必死に声を上げます。
「待って! この人は……この人は私の夫なの!」
神剣くんは、奥さまを見ることもなく答えました。
「……そう」
そして、化物へ視線を戻します。
「だから……何?」
その瞬間。
何の前触れもありませんでした。
詠唱もない。
構えもない。
ただ、神剣くんが化物を見た。
それだけでした。
パンッ!!
化物の身体が、一瞬で弾け飛びました。
肉体は細かな欠片となり、床へ散っていきます。
そこに――
もう、店主の姿はありませんでした。
「いやぁぁぁぁぁ!!」
奥さまの悲鳴が響きます。
「あなたぁぁぁ!!」
神剣くんは、そんな奥さまを見ていました。
すると突然、奥さまが神剣くんへ駆け寄ります。
「あなたが……あなたが殺したのね!!」
バシンッ!!
乾いた音が響きました。
神剣くんの頬を、奥さまの手が叩きます。
「なんで……! なんで殺したのよ!!」
神剣くんは何も言いません。
ただ、床に落ちていたモノを拾い上げました。
先ほどまで、店主が喰らっていた――人間の腕。
「……喰え」
「……え?」
奥さまが目を見開きます。
神剣くんは、拾った腕を奥さまへ突きつけました。
「喰えって言ってんだけど」
「な、何を言ってるの……!?」
「さっきまで、あんたのダンナが喰ってたんだろ?」
「……っ」
「なのに、なんで喰えないの?」
「そんなの……無理に決まってるでしょう!!」
奥さまの目から、涙が溢れます。
「私は人間を食べたりしないわ!当たり前でしょ…!!っ」
神剣くんは、静かに奥さまを見つめました。
奥さまは自分の発言に気づいてしまったようで口元を押さえ身体を震わせています。
そうです。私たちは人間を食べたりしません。
食べるのは―。
「……そう」
それだけ言うと、腕を地面へ落とします。
そして、踵を返しました。
「神剣くん!」
私は咄嗟に、その制服を掴みました。
「待って!」
神剣くんが振り返ります。
「奥さまは……混乱してるのよ。突然、夫が化物になって……目の前で殺されて……」
「だから?」
「責めないであげて。かわいそうじゃない……!」
私の言葉に、神剣くんはしばらく黙っていました。
そして――
「……何か勘違いしてないか?」
静かな声でした。
「可哀想なのは、無関係なのに化物に喰われた人間だ」
「……っ」
掴んでいた手を、振り払われました。
「俺は帰る」
そう言って、神剣くんはその場を去っていきました。
私は何も言えず、その背中を見つめることしかできませんでした。
コメント
1件
うわっ…神剣くん、マジで容赦ねえな…! 「だから何?」であの一撃、構えすらなく瞬殺ってのがもう格好良すぎて震えたわ。でもその後がすごく刺さった。可哀想なのは無関係な人間だって台詞、正論すぎて何も言い返せないじゃん。奥さんが人間食わないって叫んだ瞬間、自分が人外って自覚してるんだなってゾッとした。この世界観、ただのバトルじゃなくて倫理抉ってくるの好き🔥 続き読みたい!