テラーノベル
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アモンは同僚の言葉を無視し主を抱き締めて寝ようとすると、同僚は主の体の心配をしての事だと語気を強くして言った。
「 もし次妊娠したら◯◯が●んじまうかもしんねぇんだぞ!」
アモンは主の知らない事を知っていると思ったのか、同僚の話に耳を傾けた。
「…◯◯さんの病気の事っすか?」
「まぁ広い意味ではそうだな…今、◯◯は何するか分かんねぇくらいまで追い込まれてる。
何が◯◯を追い込んでんのかは分かんねぇけど、俺は◯◯が妊娠してた時の事知ってるからな。
子どもが流れた時2回とも精神的ストレスで体調崩して休んでた時、誰も居ない時を見計らって●のうとしてたんだよ。
確信はまだない。…けど、あの時の感覚にちょっと似てんだよ。絶対に1人にしたら死んじまうって。」
アモンは同僚の観察眼は目を見張るものがあると思ったが、完全には信用する事が出来ないでいた。
「…◯◯さんがかなり追い込まれてるのは俺も知ってるっす。何であんたを◯◯さんがこっちに連れて来たのか分かんないっすけど、 あんたは◯◯さんのなんすか?」
同僚はアモンの遠回しな言い方が面倒だったのか、先に話す事にした。
「俺はただの同僚。お前が気になってこっちに連れてきてもらったんだよ。 ◯◯の彼氏なんてなかなかなれねぇからどんな奴かと思ってな。
それに…俺が◯◯の事が好きなのは本当の事だ。前は無理矢理だったが今はちゃんと◯◯に求められたいって思ってる。
お前が知りたいのはお前らが知らない俺が知ってる◯◯の事なんだろ?」
アモンは同僚の事を睨みながら同僚の話を静かに聞いていた。
「…本当はお前と別れて俺と付き合って欲しいって言いたかったんだが、無理そうだな。それに◯◯もお前に依存してそうだ…俺の当初の目的は果たせずに終わったよ。」
同僚は静かに聞いて居るようで無言で圧を掛けてくるのを感じた。
「◯◯の前の彼氏とは友達で学生の頃からずっと一緒だったんだよ。それだけだ。まぁ…詳しく話し出したらキリがねぇんだけど…
多分こっからが聞きたい事だろう?◯◯の親父は、俺らが働いている病院の院長なんだよ。俺が聞いた情報ではあんま長くねぇみたいなんだ。
あくまでもただの噂話にしか過ぎない。そんなチンケな噂話信じるのもどうかと思うが …
その事が◯◯の耳に入っちまった可能性が高い。噂話好きのあの医局の連中と居たら、小耳に挟むくらいはするだろ。」
アモンは後輩以上に知っている事が多いと思ったのか、ベリアンとルカスの元へ連れて行こうという事になった。
主の事はドアの前に居るボスキとハウレスに任せ、アモンと同僚は主の部屋から出て行った。
「…なぁ、1回抜いてからでも良いか?これどうしても収まんねぇわ。あの声と体…何度も魔が差しそうになったか…」
アモンは仕方なく、同僚をお手洗いに連れて行った。
ハウレスとボスキは主の側に行き、ハウレスは主の頭を撫でながらボスキは主を抱き締め主と一緒に横になり眠りについた。
(先程の主様の声…とても色っぽい声だったが俺とも繋がって下さるんでしょうか…)
(アイツ…手を出さなかったみたいだな。それだけ本気って事なのか…?)
†††
『お父さん、遊ぼ〜!』
『そ〜れ!どうだ?高いだろ?』
小さい頃、高い高いをしてもらった時にほおり投げられる勢いでしてもらった記憶がある。とても楽しかったのを覚えてる。
『ありがとう!…可愛い〜♡』
12歳の誕生日に犬を誕生日プレゼントとしてもらった時、とても可愛いくて何度も名前を呼んだ記憶がある。
『ねぇお父さん、もっと教えて!』
小さい頃夏に別荘の庭でバーベキューをしていた時の夜、満天の空を見ながら星座を教えてもらった記憶がある。
『この曲はなんて曲なの?』
小さい頃、書斎でクラシック音楽や洋楽を一緒に聴く事が多かった。医学書がたくさんある部屋で音楽を聴くのが大人っぽく感じて楽しかった記憶がある。
『人の体って凄いんだね!』
父親の医学書を読み漁ってた時、系統解剖学の本や病理学の本等を読んで自身も医師を目指そうと思った記憶がある。
「…お父さん。」
主がぽつりと言った寝言にボスキとハウレスはすかさず反応した。寝言か、と思ったが主の目からは涙を流していた。
(…父親との夢を見てるのか?)
(主様は父親の夢を見ているのか?)
ボスキとハウレスは主の父親はどんな人なのかだろうかと思いながら、主から出た涙を拭った。
翌日─
「おはようございます、主様。」
ハウレスが寝起きの主に挨拶をし、ボスキから引っペがし主に身支度をさせた。
後輩は2階の執事室のボスキのベッドを 、同僚はハウレスのベッドを借りて寝ていたので一緒に食堂へ向かって行った。
主は夢でみていた父親との記憶を思い出していた。
(懐かしかったな…医局で皆が言っていた事が気になってしょうがない。胸騒ぎがするし、今日院長室に行ってみよっかな…)
「○○、どうかしたか?」
ボスキは主が浮かない顔をしながら考え事をしているのをみて気になってしまった。
「あ…ごめん、大丈夫だよ!心配かけちゃったね。とても懐かしい夢を見たからちょっと考え事しちゃってた。」
寝言を聞いていたボスキとハウレスは主の父親が気になって、ハウレスは聞いてみる事にした。
「主様、寝言で“お父さん”と仰っていたのですが、その事と何か関係あるのでしょうか?」
「え…と、たまたま思い出しちゃったのかな?最近、久しぶりにお父さんに会ったから。」
その場に居た同僚は、やはり医局での噂話を聞いていたのではないかと思い仮説が確定しつつあった。
そして朝食を終え主と後輩と同僚は仕事に向かうため、屋敷を後にした。同僚の話を一通り聞いたベリアンとルカスは執事達を食堂に集め主の話を共有していた。
後輩と同僚と主は職場に着いたのだが、様子が明らかにおかしかった。皆がバタバタと慌ただしくしていた。
「何かあったんでしょうか…?」
「…さぁ?」
「分からない。…でも、今朝からずっと胸騒ぎがするの。嫌な予感がするの。私…院長室行ってくる。ちょっと確かめたい事があるの!」
主は久しぶりに走り出した。何度も足が絡んで転けそうになりながら、息を切らしながら院長室まで辿り着いた。
「ハァハァっハァっ…」
心臓の音がうるさいくらいに鳴り響く気がして、息を整えるのも一苦労だったが深呼吸をしてドアをノックした。
いくら待っても返事が返って来ず、思わず何度もドアを叩きだしてしまっていた。
ドンドンッドンドンッ
「っ…お父さん!居るんでしょ?お願いだから返事して!ねぇ、お願いだからっ…返事をして下さい…」
ドアに縋るようにしてしゃがみ込んでしまった主の肩をぽんっと置いたのは同僚だった。
「◯◯、こっち来い!急げ。お前の親父は病室に居る。くそっ…間に合えよ…」
主は同僚に連れられ父親の居る病室へと向かった。息をするのもわずらわしくなる程に必死に走った。
「っハァハァっハァっハァ…」
主は息を整えて病室に入り、心肺のモニターがピッピッと病室に鳴り響くなか、目を瞑って居る父親の元へゆっくりと歩み寄った。
心臓の音がうるさい、まるで自身が心臓なのではないかと思うくらいに規則正しく拍動する感覚があった。
「お父…さん?」
呼び掛けには全く応じない父親の手を握り締めたと同時に心肺のモニターはピーという音が響き渡った。
「っ!お父さん!…ねぇ、返事してよ!!なんで何も言ってくれないの?いつもすぐに返事してくれるじゃん?
私、お父さんの事ずっと追いかけてきたの!私の目標はずっとお父さんだったんだよ?どんな事言われてもお父さんの背中を追いかけて頑張って医者をやって来たんだよ? 私のお父さんは1人しか居ないんだよ…
お願いだから返事してよ…何で…嫌だよ私の事1人にしないで。…お父さんは私の事ちゃんと愛してくれてた?」
何も答える事のない父親の手をずっと握り締めながら、主が父親にずっと聞きたかった事を聞いた。
側に居た医療スタッフと同僚はただ、泣き崩れる主とその父親の事を見ている事しか出来なかった。
その日は主は、ただ淡々と仕事をこなしていきまるでロボットのように外来患者さんの診察をしていった。
お昼休憩中の医局では─
「昨夜、急に倒れたんだって…」
「倒れた時意識なかったんでしょ?…」
「癌だったみたいだけど…」
回りがざわついていて、主の耳に届いているのかいないのか、何にも焦点が合わずに黙々とお弁当を食べていた。
同僚は医局のざわつきが気に食わなかったのだろう、苛立ちを抑え切れずに大きな音を立て医局に居る人に怒鳴った。
「てめぇらまた噂話をピーチクパーチクうるせぇんだよ。人の気持ちくらい考えらんねぇのかよ。腐った頭で考えろ!」
周りは一瞬で黙り、シーンとした空間の中で主はお弁当を食べ終わると、医局から出て行ってしまった。 後輩は気が気でなく急いで主を追いかけた。
主が向かった先は院長室だった。ドアをノックし、返事が来るはずのないドアの前に座り込んでいた。
「…お父さん。」
主のその姿が見るに耐えない光景で、後輩にはどうする事も出来なかった。すると、同僚が後輩の元にやって来た。
「◯◯は?」
後輩は院長室の前で座り込んでいる主に目線をやると、主の方へ同僚は向かって行った。
「…◯◯、今日はもう帰れ。俺と結城で回診はやっておくから。帰る場所は彼氏が居る場所だ。…分かったな?」
「…お父さんはきっと、仕事を投げ出すような事は言わない。」
主の目は虚ろでこれから回診に行けるようには見えなかった。もういつ行動に移すか分からない状態まできてしまっていた。
「…分かった。俺も◯◯の回診に行く。一緒に回診に行くで良いな?」
主は無気力の状態でこくんと頷き、午後の回診を同僚と後輩の3人で回って行った。帰りの時間がきても主は帰り支度をする様子もなく淡々と仕事をしていた。
「…◯◯さん、もう帰りましょう?俺送っていきますよ?寂しいなら俺が居ます。だから帰りましょう?」
主は虚ろな表情で帰り支度をし、後輩と一緒に医局から出ようとするとその後に続き同僚も後から続いて出て行った。
取り敢えず同僚の車で主の住んでいるマンションまで3人で向かい、今日の事を執事達に伝えるため後輩だけ屋敷に送る事になった。
「これって◯◯じゃないとアイツらのとこに行けないのか?…俺はちょっとでも◯◯から離れたくねぇんだがな。」
後輩は試しに指輪を借りて着けてみると、後輩は執事達が居る屋敷に居た。
「よし!結城だけ向こうに行く事は出来たんだな。…理事長が色々やってくれてるとは思うが◯◯のスマホに連絡がいつ来てもおかしくはねぇからな…」
ちょうどその時、主のスマホに着信があり部屋に鳴り響いた。主は未だ虚ろな表情で電話をとった。
「…はい。…そう、ですか。よろしくお願いします。ありがとうございます。…はい。明日の病院の診療が終わってからですね。分かりました。」
主は理事長とお通夜の話をし、電話は終わった。
「◯◯、飯どうする?冷蔵庫見ていいなら俺が適当に作るけど…それでも良いか?」
主はずっと虚ろな表情で頷き、キッチンへと向かって行った。
(…お父さん。私…)
ぷち
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#願いを叶える
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コメント
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お疲れさまです、みーさん。第26話、読み終えました。 今回も心がぎゅっとなるお話でしたね……。主様がお父様の前で「返事してよ」と叫ぶ場面、そして最後に「お父さんは私のことちゃんと愛してくれてた?」と問いかけるところ、涙が止まらなかったです。ずっと追いかけてきた目標だったからこそ、その喪失感が切なく伝わってきました。 同僚が医局で怒鳴って黙らせたシーン、彼の人間味が垣間見えてグッときました。主様の無理してる感じ、伝わってくるのに何もできなくてもどかしいですね……。続きがすごく気になります。