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叶
葛葉
ローレン
~~
( 少しだけ )
アクシア
レイン
オリバー
レオス
合格発表があったあの日から、あっという間に2日が経とうとしていた。
VTuberオーディションに合格してからというもの、有難いほどに毎日忙しい日々を過ごしていた。配信についての説明や、デビューに向けての打ち合わせ。身体を壊してしまうのではないか、というほどだった。これでは身体がいくつあっても足りない。
そして、たった今も、打ち合わせの通話を終えた後だ。
『 お疲れ様です。はい、失礼します。 』
『 ふぅ~~、マヂで疲れたァ!!… 超しんどいんだが?!エグすぎだろ! 』
額をドンドンと勢い良くデスクに打ち付ける。疲労で頭が思うように回らず、デビューへに向けての準備が面倒になってしまう。どうしてもやる気が起きず、額をデスクに付いたまま床と睨めっこ状態だ。
『 マネージャーに明日は会社で顔合わせもか言われたし…、休みてぇ、極力人に会いたくナインだよな。 』
そう、明日は同期と顔合わせがあり、会社に向かわなければならない大切な日。でもエデンで築いて来た人との大きく分厚い壁があった。
『 行きたくない…、行きたくない。 』
しかし、駄々を捏ねても状況が変わる訳でもなく、気づくと時計の針は午前12時14分を示していた。
『 もう、こんな時間…寝ないと。 』
準備の事すらさっぱり忘れて、よろよろとベッドへ倒れ混む。
時計の針音さえも子守唄のように心地よく感じて、気が付くと深い眠りについていた。
翌朝、閉ざされたカーテンから零れる日差しで目を覚ます。
『 ンン … 、もぅ朝、、? 』
あまりにも疲れていたのだろう、寝相で床に倒れ込んでいるような体制で目を覚ました。お陰で身体は冷えているし、身体の節々が痛んでいる。
『 くぅぅぅ~~、さっむ。準備、、、、しないとな 』
顔合わせの準備。はぁ、と不満げな溜め息と同時に重たい身体を動かす。明かりを入れようと、カーテンを開くすると一気に眩いほどの光に全身を打たれた。なんだか不思議な気持ちに包まれた。そして大きく息を吸って背伸びをする。
『 ッッ…ん、、よしっ! 』
気分も少し晴れてきて、ようやく準備を始めた。
無地の白のトレーナー、黒のダメージジーンズ、上着はオーバーサイズの黒いジャンパー。最近新しく買った洋服たちだ。インスタを眺めていた時に見つけて、一目惚れしてどこかタイミングで着たいと思っていたが、この機会に着れると思うと少しにやけが止まらず、ついふふ、と笑みを溢し1人恥ずかしくなる。
『 なにしてんだか、、それにしても俺服のセンス良すぎだろ。これはナンパ確定ではあるな。 』
真新しい服で身を包む。鏡で何度も見てもいい感じで、服を着た自分を見つめて、うんうんと頷く。
『 ネックレス、、ネックレス、、、あれ?どこやったっけ?…やべぇ、ネックレスないマ? 』
最後の仕上げにネックレスを身に付けようと普段ネックレスをしまっている棚を見てもお気に入りの銀色に輝いたネックレスが見当たらない。まさに依存しいてるかのようにあのネックレスがないとソワソワして落ち着かない。
『 マジでない 』
終わった…、と少しイラつきを感じ癖で首元に手を当てると、つんっと冷たい感覚に触れた。もしかして、、と感じて鏡で確認すると、そこには首にかかっているネックレスだった。普段は外すが昨日の疲れで外すのを忘れていたのだろう。
『 ッ、あんじゃん、、うぜぇぇちゃんと確認しろよ俺ぇぇぇ 』
くっそ、っと舌打ちを鳴らす。戸締まりと火元の確認をして家を後にする。
暗い部屋には昨日のモンスターの缶がひとつ取り残されていた。
あらかじめ予約していたタクシーに乗り込んで、もう少しで事務所に着こうとしていた時、渋滞に巻き込まれてしまった。バイクと軽自動車の事故だそうで、あまりにも迷惑だ。全然車は進む気配はみられない。するとタクシー運転士が申し訳なさそうにこう問いかけてきた。
『 お客さん、まだ動きそうにないから歩いていった方が早いと思うよ 』
『 マジですか、、そうっ、すね。じゃあここで降ります。 』
『 うん、ごめんね。 』
仕方なく車から降りて、歩くことにした。そう遠い距離でもなかったし、日頃運動をしないから健康的だ、と些細な事で嬉しくなる。
ビルに入り、事前に知らされていた部屋へと足を運ぶ。コンコン、とドアをノックして部屋の扉を恐る恐るあけると、顔馴染みのある4人が向かい合わせで腰を掛けていた。
そこにはアクシアは勿論、俺と同じく赤髪の女の子と青い髪色の男性、外人のような容姿をした男性がこれから俺の同期となる。
「 ローレン!!久しぶりじゃん! 」
『 そうね。いつ振りだろうね。 』
「 三年……とかそのくらいじゃないか?エデンにいても話す機会はなかったからな。 」
そう明るく親しげに話しかけてくるのは、赤髪の女の子レインパターソン。かつて俺のいたエデンでボディーガードとして現在も働いている。見た目と違い中身は少し子供っぽく抜けているのが可愛いらしい。
「 ローレン? 」
『 ん?ごめんごめん何? 』
「 いや、レオスが差し入れを持ってきてくれたらしいぞ 」
『 お、マジ?なになに。 』
レオスというのはいわば博士?研究者のような職柄で俺と同じく煙草を愛してやまない人間だ。普段は敬語で大人しそうにみえるが実はエデンメンバーでは一番やばかったりするのがレオスヴィンセントだ。そんなレオスが差し入れとしてゼリーを持ってきてくれた。
「 これから叶さんがやってくるそうなので差し入れとして持ってきましたよ 」
『 ゼリーじゃん。センスよ。 』
「 んね、ガチやば~~い!めっちゃうまそう!ぇ、ねぇ食べていい?食べていいよね?! 」
「 良いわけねぇだろ!? 」
「 そうですよ。レインくん、叶さん達との差し入れなんですから叶さんを待たなくては。 」
この落ち着いた声で話すのは、オリバー。身長が高く、声や容姿整っていている加えて英語もペラペラと話せる。いわばハイスペック全ステータスが平均75点越えといったところだろう。
ギャルとおじさんとの会話をみてなんだか微笑ましく思う。そんな中アクシアだけは会話に参加することはなく3人の会話を動画撮影していた。高校生の放課後のようなどこかの懐かしさを感じ、鼻先がツンッと痛くなる。
「 あの~~ 」
背後から甘い声が頭に流れてきた。振り返ると先輩ライバー、俺の憧れでもある叶が両手に大きな荷物を抱えたまま突っ立っていた。
「 ここ、エデン組の楽屋ですよね? 」
「 そうです!! 」
「 わぁ~~叶さんだぁ、、 」
レインが感極まるのも当たり前だ。新人や他の配信者からみても叶さんは物凄い方で俺らとは、天の地の差がある。VTuberでは憧れない人はいないだろう。甘い透き通った声と優しくお兄さんのような性格で誰からみても100点の男だ。
思いの外挨拶にインパクトが強かったのか叶は入り口でポカンとした表情を見せたあと、すぐに柔らかな笑顔に戻ってから重たい荷物を机の上に乗せて、ふぅと息を吐く。
「 差し入れ買ってきたんで良かったら食べて下さい。 」
と、キラキラとした顔で微笑む。その表情に俺はドキッと鼓動が早くなり顔を赤らめる。叶は心配そうに俺の顔を覗き込もうとする、
「 ぁ、ライン交換しませんか?! 」
瞬間レインが興奮した様子で、皆にみえるようにスマホを上に掲げた。叶は覗き込むのをやめて、そうだね。とまたあの笑顔を作った。
連絡先を交換して、差し入れも無くなり初めて着た頃。
俺は、疲れてきた為先に帰りたい。と告げて部屋を後にした。長い廊下を1人歩いていたときまた知らない人から声を掛けられた。
「 ぁ、ローレンさんすか? 」
誰だよ。振り返ってからはぃ、、と気だるげに返事をすると、やっぱり!とはしゃいだ子供のよう顔をした、葛葉がそこにはいた。葛葉は叶とユニットを組んで活動している。そう、俺の憧れでもある、ChroNoiRだ。
「 初めまして、挨拶行こうと思ったら叶が帰ったとかいうから探してて 」
『 そうなんですか、すみません。 』
「 いやいや全然タメ口でいいっすよこれからにじさんじとして一緒になるんですから 」
気の良さそうな雰囲気で、人見知りとは思えないほど丁寧で謙虚な人、皆から人気を得ているのが良く分かる。
「 ラインって、、、 」
気さくな人と思ったら今度は、恥ずかしそうにラインの交換を求められた。
『 いいっすよ 』
返事は勿論OKだ。あの憧れの人達からラインを求められるなんてこの先あり得ないだろう。この世界に飛び込んで良かったと心に染みて感じる。
顔合わせが終わり、ゲーミングチェアに、ドシッと腰を下ろす。
叶と葛葉に、連絡をした方がいいのか、と叶のトーク画面を表示していると、叶の方から連絡がきた。
用件は、次の休みにご飯に行かないか。ということらしい。断る理由はないし、行きたくないわけがない、すぐに、行きます!と返事を送信すると、叶は、良かったと自分の可愛らしいオリジナルスタンプで返信してくれた。
気を遣ってくれているのだろう、なんだか嬉しくなる。
そうして、スマホを閉じて、眠りに入る。
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