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窓から見える景色は夏だとはっきり分かるものとなっていた
冷蔵庫で冷やしておいたラムネを片手に私は外に出た
冷たさが手から全身へ伝わっていく
泡がはじける
夏のはじまりを感じた
口に入れれば炭酸が口の中、喉を刺激して痛い
木陰に座り込んでいると1匹の猫が現れた
野良猫を普段見ないから嬉しい
猫は自ら私に近寄ってきた
「猫ってこんなに人懐っこいもんなんだ」
しばらく猫を見ていると1人の男の子が私を目掛けて走ってきた
「すみません」
だいぶ焦った様子だった
息が上がっていて目が虚ろっていてなんだか体調が悪そうに見えた
猫をよく見ると首輪が付いていてそこで初めて彼の飼い猫だということに気づいた
「すみません。勝手に他人の家の猫を触ってしまい」
咄嗟に謝ったけど特に悪いことはしていない
そんなことより、私が何を言おうと反応が薄い
さっきからあまり体調が優れない様子の彼が心配だったので木陰に座らせた
私は持っていたラムネを飲ませた
虚ろった目がはっきりしてきて少し安心した
きっと軽い熱中症だと思う
それにしても見ない顔
夏休み中におじいちゃん家に遊びに来た感じかな?
小柄でスラッとした手足、真っ黒の瞳、少し弱々しい顔をした君はどう見ても年下に見えた
「そんなに見られちゃ恥ずかしいです」
彼が一言そう言い放った
あまりに可愛らしい姿に見とれていた
実は日本人の目の色は茶色がほとんどで真っ黒の目を持つ人は1000万人に1人らしい
黒い目の持ち主は前世で英雄だった人らしい
たくさんの戦場を経験し、たくさんの血を見てきた英雄たち
来世では見ることがありませんようにと神様がくれたものなのだとか
「君どこかであったことない?」
彼の言葉だった
予想もしないその言葉にどう返せばいいか分からなかった
さっきまで見つめる側だったのに立場逆転
私はそんなに容姿には恵まれてない
垂れ下がった目と眉、まん丸の顔、肉付きのいい体型
どれも大嫌いだった
「僕、高光朔夜
これありがとう。ラムネ久しぶりに飲んだ」
思ったよりはっきり喋る子でイメージとは違う
彼は気づかなかったけど飲みかけのラムネを渡してしまっていた事に気づき少し焦った
夏は始まったばかり
ラムネの炭酸はまだ抜けない