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記録
真っ暗な部屋の中を唯一照らすモニター。「はじめ」の合図と共に、画面には数値や計算式が表れ、数十秒を経過毎に画面は切り替わってゆく。
「ああ。わたしは一体何をしているのだろうか」表示されたものをノートに記録する。記憶をしろという事だろう。確かにわたしは頭が良い。すぐに記憶はできる。ただつまらない。なぜこんな事をしないといけないのか。
画面は止まる事を知らず、チカチカと切り替わってゆく。それに合わせて一つもこぼす事なく記録をしてゆく。
やりたい事は沢山ある。緑の広がる公園で、虫の歌声を聴きながら花たちとふれあいたい。遊具も沢山あるだろう。一つずつ時間をかけて堪能したい。
「止め」
白衣を着た男は、静かな部屋の中でコツコツと足音を響かせながら歩み寄ってきた。
「うむ。しっかりと記録を取れているな。しかし、何も考えずに記録をとるでないぞ。お前は人間の脳を持ったロボットなのだから」
自分がロボットだという事も理解している。この人が私を生んだのだから。
「一体わたしは何の為に作られたのですか」
「お前は記憶の処理や身体能力がはるかに人間を超える存在だ。お前を一から育て、社会に放つ事で人間社会に貢献してもらう。そうすれば国はわたしに膨大な金を与えてくれるだろう。この計画は国から許可を得ている。その為だ」
男はロボットの頭を赤子を撫でるように触れた。
「しばらくは育成期間。それがお前の与えられた使命だから全うしてくれ。それが落ち着くような時がくれば、いつかお前自身が人間らしくやりたい事を見つけて、それに向かっていける事を願うよ」
ロボットはただ静かに、男の後ろ姿が消えてゆくまで見届けた。
確かに。今は育成期間。今はまだ知識不足である。多くの知識を身につけて、大きな存在になりたい。そしていつか、この国の上に立ち、その後は世界を。そしていつか人間共を‥‥。