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【焼肉珍騒動】【発熱注意】その後になるので先に読んでもらった方が分かりやすいかも知れません。読まなくても読めると思います。

*******

【ふうはやver】


今日は実況の後に予定はない。


りもこんは1人で実況するって言ってたし、かざねはどハマりしてるFPSゲームがあるから、こっちに声を掛けてくることはないだろう。

そして、しゅうとの予定も無いのはさっき確認済みだ。

朝イチから始めた収録は昼飯を挟んで夕方前には終わったから、俺はしゅうとを夕飯に誘おうと意気込んでいた。

場所はどこでもいい、けど出来れば2人きりになれる場所。


(……しゅうとにお願いするんだ、今日こそ)


密かに手を握り締める。

先日、しゅうとが熱を出した時に俺はあいつのことを本当に本当に好きなんだって思ったんだ。

いや、前からずっと好きだけどな!

でも、目の前で唇を奪われそうになっているしゅうとを見て、俺の心臓は爆発しそうなほど震えた。

りもこんにとられたくない、かざねにも渡したくない。

俺はしゅうと最古参だぞ?

友情を飛び越えて愛情が歪んで執着になりかけているマジで重度のファンだ。

しゅうとの為なら財産全部投げ打っても構わない。グッズなんか出したら買い占める自信がある。

それくらい俺はしゅうとが好きな訳で、愛していて、でも一方通行で気付いてもらえなくて苦しんでいる。

しゅうとには俺にそう言う感情はないだろうけど、もう我慢するにも無理が出てきた。

だから正直な気持ちを伝えて、お願いを聞いてもらうんだ。

それしか俺のこの爆発しそうな気持ちを抑えるすべは無い。

大丈夫だ。綿密な作戦も練った。

シュミレーションも繰り返した。

だから、大丈夫だ。


(ああ、たった一言なのに。声が震えそうだ)


早くしないとしゅうとが帰っちゃう。

俺は気合を入れて立ち上がった。

気合が入り過ぎてゲーミングチェアが思ったより大きな音をたてたが、それに反応できるほどの余裕がない。

落ち着け、俺……!!


「うおっ!?びっくりした……」

「しゅっ……しゅうと!」

「え!?なに!?」

「この後っ……暇なら俺んち来ない……?」


まずい。声が上擦った。

落ち着け。


「う……うん……いいよ?」

「いい!?マジ!?」

「うん。この後予定ないって話さっきもしたじゃん」

「……やっぱ行かない、とか無しね」

「んん?なんかおかしいな……何か企んでる……」

「ないない!!マジでないから!じゃあ一緒に飯食ってゲームしようぜっ!」

「……うん」


先ずは第一関門クリアだ!

これは家にしゅうとを連れて来られなければ始まりもしない作戦だからだ。

手に異様な汗をかいていて、それをシャツの裾で拭う。

まだ始まってもいないのに緊張し過ぎだ!


「ふうはや?大丈夫?」

「おぉ……何も問題ないよ?」

「そう?」

「……うん」


俺の情緒にはだいぶ問題がありそうだ。



**********



「お邪魔しまーす」

「あんま片付いてないけどな」

「ふうはやの家はわりといつも片付いてるよ」

「そうかー?」


しゅうとをソファーに誘導しながら交わす何気ない雑談がそわそわする心をちょっと鎮めてくれる。

いつも片付いてるって?

そんな訳あるか!しゅうとを連れてくるためにせっせと片付けしたんだよ!!

いつもいつも、俺はしゅうとに格好良いところ見せたくて色々と頑張っている、つもりだ。


「さっき買ったものテーブルに広げるよ?」

「うん。お好み焼きってめちゃくちゃ久しぶりに食べるわ」

「俺も」

「だよな」

「実はたこ焼きが食いたかった」

「……たこ焼き器仕入れとく」


顔を見合わせて吹き出す。

そんな穏やかな空間が俺には宝物みたいに大切で、何よりも愛おしい。

しゅうとはそんなに喋る方じゃないけど、よく笑う。

しゅうとの笑い声が好きだ。

なんてこと無いことで大笑いするその声が、好きだ。


大好きだ。


「なぁ、しゅうと」

「ん?」

「……いや。……お前もお好み焼き作るの手伝えよ」

「え〜」

「えー、じゃありません!一緒に作ろうよ」

「下手くそでも文句言うなよ」

「言う」

「何でだよ」


笑ったその顔も声も全部全部。

好きで、愛しくて、全部欲しくてたまらない。

どうしたってもう我慢なんて出来ない。

溢れて止まらない。

でも、俺はこの穏やかな雰囲気を壊すことも怖くって、いつも先へは進めない。

それでも先へ踏み出したくて今日のために色々と作戦を練ったんだ。


「なぁ、しゅうと」

「んー?」

「好きだ」

「…………ん?え?」

「…………待って俺いまなんて言った?」

「え……と。好きだって言ってた」

「…………」


頭が一瞬で沸騰してパニックになる。

作戦!作戦は!???

お好み焼き食べて、すこーしだけお酒入れて(俺は飲まない)、ゲームして、帰るの面倒くさくなったしゅうとをこのまま泊めて、いい感じになったら告白出来たらいいなー作戦は!!!???

しゅうとへの気持ちが溢れすぎだろ!!!!


「ふうはや……顔あっか……」

「……見ないでクダサイ……」


カッコわる……俺、いま最高に格好悪くない?

顔も身体も熱くて、鏡なんて見なくても全身が真っ赤になっているのを感じる。

ああ、もうどうしたら良いのこの空気。

恥ずかしくて顔が上げられない。


「……俺も好きだよ」

「…………へ?」

「……ふうはやが何に対してそう言ったのか分からんけど、俺も好きだよ」

「しゅうと……」

「ふうはやは何が好きって言ったの?」

「え……と!俺は……」

「お好み焼き?もしくはたこ焼き?……それとも、俺?」

「〜〜〜〜〜っ!!」

「ふっ……はやっ………んっ!」


感情の振れ幅が大き過ぎてコントロールが利かない。

ほとんど無意識と勢いだった。

何も考えられない。

高鳴りすぎる心臓の音で全てが掻き消される。

俺はしゅうとをソファーに押し倒して、あろうことかその唇に口付けていた。

眼を見開いたしゅうとと視線が絡んで、俺はその眼を掌で覆って隠した。

俺の身体も唇も手も、全部が震えている。

怖い。気持ち良い。怖い。混乱してる。

ぐちゃぐちゃになって衝動から戻って来られない。


「……!」


しゅうとの空いてる両手が背中に回された。

その掌が背中をなぞって、赤ん坊をあやすような優しさで叩かれる。

俺の乱心による行動にしゅうとからの抵抗は無かった。

震えても怯えてもいないしゅうとの身体に俺の心も落ち着くことが出来て、俺は恐る恐る身体を起こしてその顔を見た。


「し……しゅうと……」

「ふうはや、落ち着け」

「……うん」

「大丈夫だから」

「……お前、男前過ぎだろ……」

「でしょ?」

「惚れ直したわ……」

「ふふっ……それで?ふうはやは何が好きなの?」

「……しゅうとが好きだ……」


この時のあどけなくも可憐な笑みを俺はきっと一生忘れないと思う。

花が綻ぶような笑みで、笑ったその顔を。


「俺も好きだよ」



*********



結果的に、俺はしゅうとと恋仲になった。

作戦はボロボロで俺は格好つかないし、告白の後に感極まって泣いちゃうし、最高に格好悪い姿を晒したが、男前なしゅうとと恋人になれたことを考えたらそんなこと小さなことでしかない。

……もっと格好つけたかったけど。

情けなく泣く俺を抱きしめてあやしてくれて、涙を拭ってくれたしゅうとに感情が振り切れて、襲いかかったところから記憶が無い。

途中まで服を脱がされていたしゅうとに思いっきり頭を叩かれて、我に返った。記憶がないまま最後まで至らなかったのは幸運だ。(真っ赤になったしゅうとの顔を見られたのも幸運)

その後は、お好み焼き作って、ちゅーして、食べ終わって、ちゅーして、ゲームに集中出来なくてボロ負けして、またちゅーして、家に帰したくないって駄々こねて泊まってもらったしゅうとを抱っこしてベッドに横になった。

あったけー。

最高だ。

どこまでもポンコツだった俺をどこまでも寛容に受け入れてくれるしゅうとも最高。

だけど、そんな優しさに疑問が生まれない筈もない。


「……しゅうとって他にも恋人いる?」

「え……何でそう言う思考になった?」

「優しすぎるから。……りもこんとか、かざねとかも言い寄って来たら普通に受け入れそうだなって……」

「それは俺に失礼だと思わないのか?」

「……ごめん。でも不安で」

「……他にいるわけ無いだろ」

「……ほんとに?」

「本当にいない」

「……しゅうと。お願い聞いてくんね?」

「ん?」

「恋人は俺だけにして?俺以外にキスとか身体とか許したら駄目。ね?約束!」

「……当たり前だろ」

「ぜーったい約束だからな!!」

「はいはい」


最高の約束を取り付けても不安は消えない。

決めた!

俺はこれから最高の彼氏になってみせる!

格好良さ全振りのヒーローみたいな彼氏にな!!!






(俺はずっとふうはやのこと好きだったんだから)

(心配しなくて良いのに)

(頑張ってるふうはやも大好きだから、言ってあげないけど)

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