テラーノベル
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案内された境内の中は外装とは違ってきれいに整えられていた。
明かり一つない境内の中は広く静寂に包まれている、パチッと指を鳴らせば蝋燭に炎が付き長い廊下を照らし始めた。
「なにもないけど…とりあえずこの中は安全だから 」
「この境内には俺しかいない、だから気を使う必要もない」
ほんのりと照らされた廊下を真っ直ぐ歩いていけば広間のような開けた和室があった。
埃も何も無い掃除が行き届いた綺麗な部屋
「一番広い部屋ここだから、好きに使ってくれ。」
「日が昇ったら町に戻るか…違う場所に逃げな」
再度神は突き放した、要らないのだと。
けれど紫苑たちの願いはただ一つだけ、優しさをくれた彼の側に居たいだけだ。
「絶対嫌」
「僕も嫌です」
「俺も同意」
「帰る場所など最初から存在していないッ」
弾かれたかのように波久礼が言えば、馨や紫苑も非を唱えた。
何度言おうとも意見を変えようとしない少年に頭を掻いた、ならば気が済むまで好きにさせるかと短くため息を吐いた。
気が済むまで境内に住まわせるだけ、贄としての契約を果たさなければただの人間でいられるから。
「…わかった、好きなだけいれば良い」
その答えに嬉しそうに笑った、年相応の無邪気な笑い方で。
やっぱり、その顔を以前見たことがあると思った。どこで見たのかなんて思い出しはできそうもない…、それでも絶対見たはずがある。
「!俺は紫苑!!」
「苗字は捨てたから聞くなよ」
「馨です!」
「幽だッ!!!」
「波久礼」
グイッと近付いて名前を言いだした四人 紫苑たちを可愛らしいと素直に思った。
「そうか…」
「俺は」
名前を言おうかと思ったものの、どうせ 紫苑たちもすぐ居なくなるのだろう彼のように。
ならば、言う必要などない。
「なんでもない、俺は離れにいるから 」
髪を翻し今度こそ部屋から出ていった神に紫苑たちは頬を膨らませた。
「絶対信用してないだろうな…」
「だろうね」
「名前も聞けてねぇしな」
「けれど、また会えた」
幽が言ったように紫苑たちには今はそれだけで良かった。今は会えただけで嬉しいのだから。
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コメント
4件

紫苑さん達がどうやって四季くんと距離を詰めていくのかめっちゃ気になります! 次回も楽しみに待ってます!
四季くんがどうやって心を許すのか楽しみッッ✨ 今回もめっちゃ面白かった!!