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第29話
あの、激しい戦いの後、一番最初に目を覚ましたのは俺だった。
でも壁に叩きつけられて座ったまま身体が動かない。手先の感覚は無く、細く目を開けるのでも精一杯だった。
そんな時、ニルスさんが帰ってきた。あれから何時間経ったか分からない。多分、ニルスさんは、この光景を見て固まっていたのだろう。
知らない男が三人と、俺たちが転がってるのだから……
でも、ニルスさんは震えながら、ゆっくりと足を伸ばした。やはり、状況は読み込めていないようだ。
「リナ……ノア……何が……」
ニルスさんが顔を真っ青にしてかすれ声で呟いた。多分、夢か何かと思ってるのだろう。
「ご、強盗です……裏の……人間がっ……」
俺がそこまで言うと「ノア! 喋るな! 内臓が傷ついてる」とニルスさんが傷を治してくれた。
……そういえば、さっき、誰かが魔力を流してくれたような……気の所為かな。
「首を振って答えてくれ。この他に人は?」
俺ははっきりと首を横に振った。
「リナの傷は、あれだけか?」
また、首を横に振った。
顔を顰めながらニルスさんは「この人たちは、ノアが全部倒したのか?」と男たちを見ながら問うた。
……これは……
迷ったけど、首を横に振った。
「そうか……取り敢えず、そのままでいてくれ。治した所が開くかもしれない」
俺は縦に頭を振った。
「よく頑張ったな。もう少しの辛抱だ。リナを診てから通報する」
良かった……取り敢えず、助かったのかな……?
俺は、安心して瞳を閉じた。
❂
「んんっ……」
私は重い身体を動かせずに瞳を開けた。
そこは、病院みたいな所だった。
え? またもや、転生?
重い身体を起こして、周りを見ると、普通にノアが起きてた。夕日が暮れて、満月だったらもうそろそろ見える頃だろう。
「あれ……ノア? 何があったんだっけ?」
……本当に今日、何してた?
首を傾げながら言うとノアの赤い瞳から、ボロボロと涙が溢れた。
「リナ……よ、良かった…………剣が……か、肩に刺さって……ボロボロだったのに……」
嗚咽を交えながら赤い瞳から溢れ出る涙をぬぐっている。
剣が肩に? ボロボロ……?
「強盗……覚えてないのか?」
強盗……あ!
「そういえば! 確かに……」
あっちゃぁ……ボロ負けだった、かな?
「結局、どうなったの……?」
気まずくて、目を逸らしたけど「……俺たちの勝ちだ。現行犯で捕まえられて、ついさっき有罪で裁かれた」とノアが微笑んだ。
「……ごめん。心配させたよね……私、怪我しないでって言ったのに……私がこんなんで……」
そこまで言うと「違う」と喋る言葉を遮られた。
「俺って、護衛の為に雇われたのに……この有様だ。決して、リナが駄目なわけじゃない」
……確かに、護衛としてだったけど……けどだよ……
「でも、駄目も、駄目じゃないも、この件にはないと思う」
「確かに……勝ったんだから、そうだよね」
……ノアは、ベッドから降りて、私のベッドの横にある椅子に座った。
ノアが私の頭を撫でながら「魔力が『不安だ』って叫んでる」と言って微笑んだ。
ノア……
あの時の目は無い。良かった。
「魔力は嘘を吐か無いからね……どう言われようと、貴方を傷つけてしまった不安はきり離せないんだよ。怪我をさせたくなくて、ずっと気を張ってたんだからっ……」
私はそこまで言うと、涙が黒い瞳から溢れてきた。いくら拭われても、拭いきれない。
「よく頑張ったと思う。ずっと、俺の前を歩いて、守っていたんだから」
「ノアっ……守りきれなくてごめん……」
本当に、優しい……
恵まれてるよね……怖い。失うのが、恨まれるのが……
あれから、ニルスさんに抱きつかれて、マリーさんとカールさんは泣き崩れて……ノアだけじゃないね。
それで……夜はあそこで過ごしたけど、次の日は退院できた。
サントラップは一週間、臨時休業。
その内に、色々と聞き取られたり、調べられたり……色々。
あの人たちも嘘を吐か無かったらしい。
……あんな激しい戦いをしたのも、何かの比喩だと思われてるから大丈夫。
ケスラー家の三男――ローベルトさんが来たり、あの紙に書いてあったラルフって人も確認できた。
守るべきリスト、確認完了!
……って言っても、二人とも強い。少なくとも、下っ端の聖騎士レベル以上ではある。
傷は完全に治してもらって、普通に動けるようになった。
……筋肉痛を除いて。
まだまだ腕は筋肉痛だから、気合いで頑張るしか無いけど、ノアの心を支えないと、崩壊寸前。
私とはまた別種の経験が豊富だろうから……豊富と言っても悪い意味でね。
豊富だから、豊富だからこそ、分かる物が多すぎて、分かち合わなくてもいい痛みを分かち合ってしまう。
私は、部屋にある椅子に腰をかけながら、バレないように嗚咽をこらえた。
コメント
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うわあ……30話、すごく重くて温かいお話でしたね……。 戦いのあと、ノアくんが必死に耐えてたのに、リナちゃんが起きた瞬間に涙が溢れちゃうところ、胸が締め付けられました。二人とも「俺が」「私が」って自分を責めてて、でもちゃんとお互いを想い合ってるのが伝わってきて……。 「魔力が『不安だ』って叫んでる」ってノアくんの台詞、すごく好きです。キャラの内面がにじみ出てるみたいで。 リナちゃんが「失うのが怖い」って呟くのも、キャラの深みがあって、読んでてじんわりきました。 続き、すごく気になります。お疲れさまです、こはるさん🥀🤍