テラーノベル
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「……ここ、は……?」
“彼”は暗い空間で目を覚ました。何も無い。自分の手すら見えない真っ暗な空間だ。
コツ、コツ……
ゆっくりと近付く足音が聞こえ、警戒する。酷く音が反響し、どこから聞こえてきているのか分からない。
「誰だ!」
コツン……
「……?」
不意に止まった足音に首を傾げる。警戒していると声が聞こえた。
『お前だよ』
「は……?」
不意に視界が少し明るくなり目の前に足音の主が現れた。
(嘘だろ……こんなに近くに来るまで気付けなかったなんて……)
『やっと起きたか』
「誰だよ……」
足音の主は“彼”をそのまま黒くしたような少年だった。
『お前の中の“闇”とでも言うべきかな』
「なんだよそれ……」
“彼”はだんだんバカらしくなり呆れたように返した。
『そのまんまの意味さ。お前だって昔色々あっただろ?その暗い過去が産み出したのが俺って訳だ』
“彼”はいつでも武器を取り出せる様に身構えた。この空間で出現させられるかは分からないが警戒するに越した事はない。
『あ、でも今のお前の生き様を否定しに来た訳じゃ無い。今、現実でお前が何してるかを見て貰おうと思ってな』
パチンッ!
闇の“彼”が指を鳴らすと何も無かったところに白く光るモニターらしき物が現れた。
「なんだこれ……」
『お前が今現実で何をしているか、しっかりと見とけよ』
【……コイツを、殺されたくなければ、今すぐ出て行け……!】
すまない先生の首筋に草薙剣を突き付ける自分の姿が。
「……すまない……先生……?」
【……出て行け、というのが、聞こえなかったか?】
モニターの中の自分がすまない先生の首に少しだけ剣を突き刺す。
「……嘘、嘘だ……夢だ……醒めろ、醒めろ!」
『……全部お前がやってるんだぜ?』
「そんなわけない……!俺が、先生を傷付けるなんて……!」
『……ほんと、お前も頑固だよなぁ……』
闇の“彼”が“彼”の後ろから目を手で覆い、耳元でそっと囁く。
『あれは全部お前のせいだ』
ドクンッ!
言葉のひとつひとつが“彼”を追い詰める。
「……嘘だ……」
なんとかそれだけ絞り出した。しかし言葉を絞り出した事で自分を縛り付けていたナニカがプツンッと切れた。自分の目を覆う手を払い除ける。そして自分の得物である巨大ハンマーを出現させた。
「……これは嘘だ!それを今ここでお前を倒して証明してやる!」
真上に跳躍しハンマーを思いっ切り振りかぶって叩き付ける。
ドォンッ!
「“ソレ”だ」
闇の“彼”が短く告げる。そしてモニターを指して続ける。
「お前のその容赦の無さが
“アレ”を生み出しているんだ」
____次の瞬間には“彼”の目前に
相手の“ハンマーが”迫っていた____
コメント
1件
泣くかも………