ようやく柚彦君から、カメラが離れ、観客をはじめ、全員が試合の閉幕に向けて準備をし始めると
信じられない事に、彼がリングからぴょんと降りて、まっすぐ観客席の私の元に駆け寄ってきていた
私はびっくりしてその場に硬直していた
彼が近づいてくるにつれ、私は大きく目を見開き、鼓動はドキドキしていた
歩を進めるごとに彼は帰り支度をしている彼のファンに囲まれ、祝福し、その圧倒的な強さを口々に賞賛されたり、しきりに動画に撮られていた
しかし彼はそのどれも気に止めなかった、まっすぐ私を見つめてこっちに来る
彼と一緒に彼のオーディエンスも雪崩のようにやってくる
まるでハールメンの笛吹き男のように、大勢引き連れてこっちに来る
私は一気に緊張して、彼が到着する前に私は立ち上がっていた、横でブラックが肩眉を上げながら、それを見守っている
「鈴ちゃん!!」
「ハ・・・ハイ」
彼はグローブをはめた手を私の肩に置き、こう言った
「黙っててごめん!説明させて!お願い!!僕を嫌いにならないで!!」
彼は叫ぶようにそう言った
一斉にブラックとその周りの彼のファンの視線が私に向けられた
彼の目が懇願するように私を見つめる、息を切らし大汗をかいてキラキラ光っている
何を言ってるのだろう、私が彼を嫌いになれるわけないのに・・・
「ええっと・・・とりあえず・・・ここじゃ・・なんだから後で話しない?」
私は消え入るような声で言った、多いにブラックと観客達に囃し立てられながら