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塩水で口の中が辛すぎだ。
ぺっぺと吐き出すが、余計に喉が|渇《かわ》いた。てか、死ぬわ、これ……。
『ラスティよ、声が聞こえるか』
「またこの声か。あぁ、聞こえるよ。あんたは何者なんだ……なぜ姿を見せない?」
『これには深い深い海より深い事情があるのだ。察してくれ』
「あんたの正体は秘密ってわけか」
『今は秘密だ。それよりラスティよ、お前には『無人島開発スキル』が備わった。確認してみるがいい』
スキルを確認すると確かにそこに【無人島開発】があった。なんだこりゃ。こんなモン、いつのまに習得したんだ?
まったく覚えがないが、この『声』の主が俺に与えてくれたのだろう。すげぇなおい、魔法スキルとか製造スキルは聞いた事があるが無人島開発なんて初耳だ。
[スキル]
[無人島開発][Lv.1]
[能力詳細]
この能力を有する者は、島(国)の開発が可能になる。使用に魔力は消費しない。ただし、開発に必要な材料は必要とする。無人島開発スキルのレベルが上がると習得者の全ステータス値が10%上昇する。
①島開発
小屋、家、城、城塞、屋敷、店を立てられる。『木材』、『石』を消費する。温泉、滝、川、沼、湖、農地なども開発可能。『土』を大量消費する。
②防衛設備
キャンプファイヤー、木製防壁、石防壁、投石機、ボウガン、大砲、魔導レーザー兵器、トゲトゲバリケード、落とし穴、落石を設置できる。『石』と『土』を消費する。
③ペット管理
スライム、ゴブリン、オーク、ゴーレム、ドラゴンまでペットに出来る。『ペットフード』を消費する。
[無人島開発]スキルが Lv.1000 の場合【開国】可能になる。
「これで俺に無人島を開発しろってか?」
『そうだ。お前はどのみち帝国から追放されたのだろう。ならば戻れまい。これから無人島で自由に生きるのだ。お前の望むままの島を――国を作り上げるがいい』
「待ってくれ。どうしてそんな親切をしてくれる。そっちになんのメリットがある」
無償でここまでしてくれるわけがない。こういう大いなる能力には、責任や代償が伴うものだ。タダより怖いものもないしな。
『いずれ会いに行く。その時、詳しく話す』
「来てくれるのか」
『任せきりなのも申し訳ないからね。それじゃあ、しばらくは一人で頑張ってくれ、ラスティ』
「分かったよ。なんだかよく分からんけど助かった。少し希望も見えてきたし、俺なりに頑張ってみるよ、せんきゅ」
気配は消えた。
本当に何者なんだ。少なくとも俺からすれば救世主でしかないが。とりあえず、俺は何もかもを失ったわけじゃない。
この名前もない広そうな『無人島』を利用し、いずれは国に変えていこうと思った。クソ親父の帝国に負けないくらいのな!
「よ~し、まずは……水だ」
水が飲みたい。
このままでは身動きすら出来なくなっちまう。そうなる前にまずは水を確保。なにより生活するうえで欠かせないのが水なのである。人間、水がないと生きていけない。サバイバルの基本でもある。
まずは必要材料の少ない『沼』でいくか。土が樽一杯分もあればいいらしい。樽相当か……なかなか骨が折れるが、仕方ない。水の為に頑張るぞ、俺。
俺はついに島開発に乗り出した――。