テラーノベル
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私の知人にS氏という人がいるのですが。いかにもという成金っぷりで、なんだか見ていて恥ずかしくなるような男でした。
周りに二・三十ほどの使用人を抱え、SPをつけ、現代では聞かないほどの成金っぷりでした。
その男がこの前の見に行こうと連絡を受け、送られた住所を見るとなぜか大衆居酒屋で、これは何かあったなと思い心の中で軽く嫌な笑みを浮かべていったものですが、S氏を見た瞬間にその笑みは消えました。
なんだか顔の造形が変わったかと思うほどにいい顔の男になっていたのです。とはいっても、もちろん整形をしていたというわけではなく、なんだかひどく死地を渡り歩いてきたかのような顔をしていました。
S氏は珍しく私に手を振って『よっ』っといいました。
これまた珍しいことで、S氏はこの頃会いに行くと偉そうな態度で、人を見下したような笑みを浮かべ挨拶一つしないという有様でしたので、これまた珍しいと思い、ふざけて「どうしたんだい借金でも負ったような風貌じゃないか」と言いました。今思うと、少々悪ふざけが過ぎて発言だと思っています。
「いやいや、そんな話をするために読んだんじゃないよ」S氏は横柄さのない朗らかな口調でそう言いました。背中に悪寒が走るほどに驚きました。まるで人格が変わったようでした。
「どうしたんだい。お前さんがこんな居酒屋に誘ってくるから何事かと思ったよ。」
「実はな、起きているんだよ」
「なんだい。本当にどうしちまったんだ。夢でも見ているとでも言いたいのかい」
私は生ぬるいビールグラスを握りしめたまま、尋ね返しました。S氏は静かに首を振ると、テーブルの上の串焼きを一本手に取り、しみじみと眺めました。かつてなら一口もつけなかったであろう、安居酒屋の料理をです。
「じつはな、異世界に行ってきたんだ。」
コメント
1件
「異世界に行ってきた」って、そっ閉じする間もなく締めくくられましたね。冒頭の成金描写から一転、人格が変わったように朗らかになったS氏と、大衆居酒屋という舞台。このギャップだけで「何があったんだ」とページをめくる手が止まらなくなりました。それに、語り手の「悪ふざけが過ぎた」という後悔の一文も引っかかる。続きが気になります!
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