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【夜と16とハロウィンと】
私は開かれた門をくぐり、町長の所へと向かった。
「…広いな」
町長”館”というだけあり、外装よりも広いように見えた。
「…少女?」
「えっ?」
そこには、黒色の髪の…中性的な人間?が居た。カチューシャ型の黒いレースをかけており、顔が見えない。身長は160cm程だろうか。
「きみは誰ですか?」
「…リィラ」
「リィラ?…彼女なら、吸血鬼に食われたでしょう」
「……その姉」
「ならなぜ妹の名を?」
「言えないから」
「なるほど。危険だから?」
「そう」
「へぇ…。木乃伊(みいら)とは違う」
「ゴーストも言ってた」
「怨霊?…きみが出会った者の名は?」
出会った者の名。
「ヴァンパイア、ゴースト、パンプキン、ミイラ、雪女、ベルゼバブ。」
「吸血鬼、怨霊、南瓜(かぼちゃ)、木乃伊、雪使(ゆきつかい)…そして獣ですか」
獣?…もしかして。
「貴方は…黒猫?」
「…どうして知っているのですか?」
「ベルゼと何かありそうだったから」
「それもあの獣が?」
「うん。ベルゼが話したこと。」
というより、反応が正しいけど。
「…そうですか。それで何しに?」
そうだった、忘れる所だった。
「まずは、トリック・オア・トリート」
「…あぁ、帰るのですね。分かりました、トリート。」
…………。
どこか仄暗い感じがして、少し重い。今までとは違う空気を感じる。
「…はい。これでよろしいでしょうか?」
手渡されたのは、小さな容器に入ったヨーグルト菓子だった。
「ありがとう」
「どうも。…嗚呼、条件としてはこちらも必要なんでしたっけ。」
「リィラ、そう呼びます。トリック・オア・トリート」
想定して、聞き慣れた質問だ。
「はい」
「これは…小さいパイ?」
「パイじゃないよ。」
スナック菓子…の分類なのかは分からないけど、バスケットをイメージしたサクサク系のお菓子だ。
「後ほど頂きます。…用はこれだけですか?」
…違う。まだある。
黒猫の雰囲気に押されそうになっているが、ここで引いてはいけない。
「町長に会いたい」
「町長に?…物珍しい。」
「……会わせてくれる?」
「分かりました、1度確認を取ってきます。」
「お願い」
こちらに背を向けると同時に、呟くように言った。
「それと。…ぼくはあくまで、町長とセットのサブキャラクターのような存在です。過去については答えませんよ」