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「もっと強度のある家を作らない?
バラバラになった板を見た感じ、これだけではまた倒れると思うの」
「オレに慣れて冗談でもいい始めたのか?
何回も板で補強して、倒れないように作ってきたんだぜ?」
「私の住んでいたところでは、家を作る時に頑丈な柱を何本も立てていて……。
それを固定して、強い風でも倒れない構造にするの」
「固定するって言ったって……。
クレヴェンでは鉄不足で、釘は貴重なものだ。
何千本も使っていられねぇ」
「釘を使う本数は減らせるかも。
木と木を組み合わせて繋いでいく方法があったから。
授業で職人の技を見学をしたことがあるんだけど、こんな感じに組めるように木を加工して……」
私は近くにあった枝を拾い、柱の継ぎ目にするための形を地面に描いていく。
学生時代に勉強したことだけど、目に焼き付けたいほどの技術だったから、なんとなく記憶にある。
「下手な絵だね。……でも、少し分かった気がする」
閃いたライさんは、地面に設計図のようなものを描いてから、近くにあった木材を切って私が説明した物を作り出す。
それは、家の柱の骨組みを小さく作って再現したものだった。
柱を木だけで固定する継ぎ方を容易く理解し、加工する技術も兼ね備えている。
「こんなに細かい作業ができるなんて、ライさんすごい!」
「ライは昔から器用だからな。
天才が誕生したからクレヴェンの建物事情も安泰か」
「模型を作っただけで、まだ本物を実際に建ててないから分からないよ。
片付けてから実践してみる」
「私も手伝う! セツナ、いいよね?」
「ああ。オレもそのつもりだからな。
でも、かけらは潰されない程度に木材の運搬を頼む」
落ちている物を片付けた後、ライさんの家の近くに置いてあった木材を運ぶ。
適切な大きさの物を選んで集め、柱に断面を作り、繋いでいく。
筋力があまりない私はできることが限られていたけど、手を動かすのが早い二人のおかげでどんどん家の骨組みができていった。
「よし! このくらいで今日の作業は終わりにしておくか」
夢中になって作業をしていたからセツナに言われるまで日が暮れてきていることに気づかなかった。
「作った柱は頑丈そうだし、そう簡単に倒れないだろう。
ライはかけらに頭が上がらないな」
「勝手に国を跨いだのは変わらないから、その女は嫌い」
「ライ! 失礼だぞ。
面と向かって言っていい事と悪い事がある」
「本音を言ってるまでだよ、セツナ」
「ごめんな、かけら。
ライは何度か話したことがある人には優しくできるんだが……。
すごく人見知りするタイプでな。
悪口を言っていても心の中では感謝していると思う」
「大丈夫だよ。気にしてないから」
こういうのは、元の世界の職場でよくあったことだ。
傷つくけど、ライさんに信用されるのが難しいことは分かっている。
「あっ、そうだ!
頑張ったご褒美にとっておきの物をやるよ。
王都にある倉庫にそれを保管してるから行くぞ」
「まったく。セツナはまた余計なことを……」
「私が王都に入っていいの?
この服では珍しがられるだろうし、セツナに迷惑をかけてしまうんじゃ……」
「どこが珍しいんだよ。
ボロボロな服を着てるって目でしか見られねぇよ」
寝床と食事まで用意してもらっているのに、これ以上お世話になるわけにはいかない……。
遠慮しようとして一歩下がる私の腕を掴んだセツナは、文句を言わずについて来いと言っているように誘導してくる。
引っ張られながら王都の中に入り、そのまま歩いていると、周囲の人から一斉に視線を向けられた。
ある意味、目立ってしまっている。
そんな中、気になったことがあった。
街の女の人たちが地面に両膝をついて頭を下げている。
男の人は会釈さえしていないのになぜだろう。
「それじゃ、その女の連れの男と馬の世話をしてくるから一旦ここで失礼するよ。
セツナの用事はすぐに終わらないだろうし」
「ありがとうございます、ライさん。助かります」
「はぁ……。セツナ、その女を甘やかしすぎないでよ」
「ハハハッ、それはオレが決める」