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「ん…………んあ?」
目が覚めたら知らない天井が目に入る
病院?いや、にしては随分質素だな
そんなことを思う俺、弦堂義隆は寝起きでおぼつかない手を動かした
「えぇっと……スマホはっと?」
枕元を幾ら手探りで探してもスマホは見つからなかった
それどころかコンクリート特有のヒンヤリとしていてザラザラした感触が手のひらに伝わった
いよいよおかしい事に気が付いた俺は、目を開けて正面を見た
信じられない光景が、俺の目の前に広がった
鉄格子だ
鉄格子があった
俺が数分、いや、数秒固まっていると
「やっと起きた?」
声が聞こえた
俺は驚きのあまり首から不穏な音がなった
同時に痛みも来たみたいだが、そんなことを気にしている暇などなかった
「え……誰!?」
声の正体の男は気だるそうに持っていた本をパタンと閉じ、俺の方をじっと見つめる
「で?君はどうしてここに?」
「どうしてって……どうして?」
はぁとため息を吐いて説明し始めた
「まず初めに、ここは刑務所だ。ただ、普通の刑務所じゃない」
「普通じゃない?」
「あぁ、ここは死刑囚のみを収監している刑務所だ」
「……は?死刑囚?」
「正式名称は宮川特別収容所」
「宮川……誰かの名前か?」
「刑務所を造った探偵の苗字が宮川らしいぞ」
「へー、で?なんで俺がそんな所にいるんだよ!」
「それはしらん」
「しらんってなんだよ……こっちは訳分からんってのに」
「あ、そうそう。あそこ見てごらん」
男は本を読みながら壁にかけられた数字を指さした
「なんだ……あれ」
壁にかけられた数字には『31』と記されている
俺は猛烈に嫌な予感がした
「お察しの通り、あれが0になれば刑が執行される」
当たった
当たってしまったこの予感
あまりの非現実さに俺は言葉を失った
そうこうしていると
「ガシャン」
扉の開く音が聞こえた
重く、無機質な鉄の扉が開く音
そこから出て来たのは警官服を着た男だった
ちょうど良い、俺の無罪を証明してさっさと帰ろう
そう思った俺は鉄格子に身を乗り出し叫んだ
「おい!俺は無実だ!何もしてない!だから!だから早くここから出してくれ!」
必死だった
喉が掠れながら必死に叫んだ
すると警官服は顔色を変えずにこちらに歩み寄った
すると警官服は口を開いた
「看守に向かって放つ口の利き方じゃないな?おい、8番!目が覚めたらこいつの教育をしとけと言っただろ!」
そう言って俺の叫びをスルーして奥にいる8番と呼ばれた男が本を読みながら
「しましたよ、でも彼、現実を受け入れる事が出来てないのか、半分パニック状態なんですよ」
「ほう?まだシラを切るつもりか?」
そう言って看守は俺を睨む
まるでゴミに沸いた蛆虫を見るような目で、こういった
「人の命を奪って置いて俺は無実だ?現実が受け入れられない?ふざけてるのか!」
俺の耳元でそう怒鳴った
うるさいと言うより……怖かった
俺は泣きたくなった
何故俺がこんな事になったのか
どうしてこんな場所で行ったはずのない罪を責められるのか
こうして、俺の最悪の刑務所生活は始まった……