ー目が覚めると、知らない場所にいた。
目の前に屋敷の門があり、門は空いていた。門の先には屋敷があって玄関周りには紫陽花が綺麗に咲いていて蝶々がその周りを飛んでいた。近くにも屋敷は沢山あるが、どこか神秘的なこの屋敷に思わず見とれてしまう。しかし、そんな場合ではない。とりあえず、ここがどこだか把握しないと…。そう思い立ち上がった、しかし次の瞬間視界が揺らぎふらつき地面に倒れる。手足に力が入らない、このまま知らない場所でわけも分からず死んでしまうのかもしれない。そんなことを思いながら、私は眠るように意識を手放してしまった。
ーしかし、不思議なことに目を覚ました時には知らない天井が見えた。体の感覚的に私はまだ死んでいないらしい。体を起こし辺りを見渡すと、自分以外は誰もおらず、周りに椅子が1個、棚が1つあるくらいだった。消毒薬の匂いが鼻につく。ここはどうやら病室のようだ。辺りを散策してみようかと思った時、戸を叩く音がした。誰か来たみたいだ。戸が開き、綺麗な顔立ちの紫の蝶の髪飾りを着けた自分より少し年上くらいの女の子が入ってきた。その瞬間、どこか懐かしい気持ちに襲われた。その子は自分に気がつくと、「あ、目が覚めたんですね。良かったです。体調はどうですか?」と聞いてくる。少し冷たい口調だが、どこか優しさを感じる口調…。自分は上手く答えられずタジタジになってしまった。でもその子は笑顔で「ゆっくりで大丈夫だから」と言ってくれた。優しい眼差しだった。思わず、涙が目から溢れる。自分でもなんで泣いているのか分からない。その子は自分がいきなり泣き出したから困ってた。でも、そばに座って背中をさすってくれてくれた。すごく優しく。これが、私にとってのここでの最初の記憶。優しくて大好きな記憶、
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!