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「はぁ…今夜は部屋の鍵を閉めておかないと。」
長いため息を吐いたこの人間とは思えない美貌を持った男の名は、エドマンド・ハリントン=スミス。
俺の専属メイドである。
長い指でピンク色の箱を持っていた。丁寧な包装。明らかに贈り物の類。
「なんで?」
コイツはこんなこともわからないのか、と言うニュアンスも含まれているであろう、憐れみを込めた視線は箱から俺にうつった。
「…美しい薔薇には棘がある、と言いますが」
比喩が好きなんだよな、エドマンドは。さっさと本題にいってほしい。
「……はぁ。あなたの思考が透けて見えるようです。いいでしょう、簡潔に言います」
「この箱に入っていたのは媚薬です。これで十分でしょう」
媚薬は性的興奮を促す薬だったはずだ。こんな可愛らしいピンクの箱に媚薬が?
確かに、エドマンドは綺麗だし、そういう目で見る奴がいてもおかしくはないが。
「え?媚薬?あの?」
他に何があるんですか、と言う視線。視線でものを語れるコイツは意外と器用なのかも。
「私が存じる語彙の中では媚薬という単語は一つしか存在しないはずですが。」
毒を吐くエドマンドをよそに、俺は箱をエドマンドの手から離させた。俺とエドマンドは雇用主と従業員の関係。
主人の従業員に手を出すことの危険性をこの箱の送り主は理解していないようだった。
「対応は俺に任せろ。今日は寝室の扉開けるなよ」
「もともとその予定です。対応は任せました。こういう場合のみ、ご主人様は非常に頼りになりますので」
「のみってなんだ、のみって」
このメイドはすぐに俺の仕事を増やす。でもまぁ、迷惑だとは俺も思っていないのだ。
「冗談です。信用していますよ、ご主人様」
……そんな挑発的な視線を撒き散らすから媚薬なんて送られるんだよ。
喉まで出かかった思いをごくりと飲み込んだ。