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予告も無く奇行を始めた叔父達に面食らいながら、暫(しばら)く呆然としてしまっていたラマスの眼前でグルっていたレイブであったが、やがて自らの体から発していた鮮やかな紫色のオーラを消し去ると、笑顔を向けて彼女に対して爽やかな口調で言うのであった。
「ご馳走様でした、さてと、食べてみたいんだったよね? ラマス?」
「え…… アタシ? あ、あのぉ……」
何が何やら判らない、そんな表情で固まってしまった彼女の耳に小屋の内部とすぐ外からレイブと同じ様な声が届く。
『次はお前だカタボラ、なに、そうそう死ぬ様な事は無い、飲んでみるが良い、クフフフ』
『エ、デ、デモ……』
『ああ、美味しかったぁ、命が溢れるってこの事だわぁ! さっエバンガ、貴女も飲んでご覧なさいな、元気が出るわよぉ!』
『………………元気?』
少なくない戦慄を感じて周囲の声を聞いていたラマスの肩にレイブの手が置かれた。
ギギギと音が鳴りそうな感じで振り向いた彼女の前には、割と美しい顔付きに僅(わず)かな狂気を浮かべた叔父がニタリとした笑みで口を開く姿が映る。
狂った青年の声は少女の耳にハッキリとした声音で届いた。
曰く、
「さあラマス、次は君の番だよ」
「ひっ!」
喉の奥から思わず変な声を出して更に体を硬化させた彼女の耳に更なる声が届いた。
『ほらカタボラ、さっさと飲むのだ! 竜種にとっては即効性の毒じゃないんだからな! 早く飲むが良い!』
『ウウゥゥ』
更に更に声音は続く。
『ちょっと膨らんじゃうだけだってばぁ! 美味しいわよ? 今日はブレンドだから特にね、うふふ』
『あ、あの…… どうしても飲まなきゃ駄目ですの? ペトラさん』
スリーマンセルがピンチだ、そう考えた瞬間、一際大きな声、最早怒声と言っても良い位の大声が周囲に響く、レイブの物である。
「ギレスラっ! ペトラっ! 違うだろっ! まずはラマスからだろぉっ! 順番を守らないと誰か死んじゃうじゃないかぁっ! 俺は一人しかいないんだからなっ! ラマスっ! カタボラっ! エバンガっ! 一人づつじゃないと対応し切れないぞっ!」
え? 死ぬ、の? これ飲んだら、死ぬ迄有るって事?
そう顔を引き攣らせているラマスの耳に更に更に更に言葉は届き続ける。
『なるほど流石はレイブだな、死んでしまっては元も子もないからな、順番にするか』
『そっかそっか、最初は死に掛けるか即死だもんね♪ んじゃこっちは少し待っているわよ、アタシとした事がぁ、ペトラ少し慌てちゃったわぁ♪』
ラマスは思った。
何を飲んでいるかは大体判り始めている。
搾る、ダークウルフ、キラーベアかマッドベア、ブレンド……
恐らく、モンスター由来の得体の知れない液体なのではなかろうか?
臭いし……
普通であれば、モンスター由来の食材と言えば干し肉以外の物等考えられはしない。
カチカチに硬化するまで干し固めて、味も素っ気も無くなったほぼ無機物に近い食感の存在だけがニンゲンが食せる唯一であった。
だと言うのに、今日初めて会った元の師匠が呼ぶ所の弟、師叔(ししゅく)である叔父さん、レイブは彼女に言った。
――――一搾り(ひとしぼり)してくる…… いつも以上に丁寧に搾り上げた? 何を?
その発言の間に聞こえた凶悪なモンスターの断末魔っぽい叫び声……
それらを総合的に鑑(かんが)みた結果、彼女、ラマスは漸(ようや)く論理的な帰結に至ったのである。
臭いし。
――――発言と周囲の様子から察するに、この液体はモンスターの成分に由来していることは間違いないわ、ってか、素材自体がモンスター、でしょ? これ? こんなの飲んで大丈夫な、訳無いかぁ…… でも、んでもぉ、お、叔父様の顔がぁ……
そう思って見上げてみたレイブの表情は、哺乳類のそれとは違う冷たく透き通った氷点下の無機質さに意味不明の笑顔を合わせた何とも気持ちが悪い物、その物である。