「イタリア?…」
「うん、サロ共和国とも呼ばれてるけどね」
サロ、どこか馴染みのある響きだった。サロはナチスの手を引っ張って連れて行った。
「イタリア王国、君は少し待っていてね」
「え、ちょっと!」
「何をする気だ!」
2人が警戒の色を示しても、サロは全く気にしていないようだ。ナチスは離れようと思ったら離れられたが、サロの驚くほど穏やかな姿を見て、少し様子見をしていた。
サロは扉を開け、ナチスを乱暴に部屋の中に入れた。
「なっ、!何をする!」
まるでナチスの言葉を遮るように、サロは扉を閉めた。
「じゃあ、僕たちはもう始めちゃおうか」
「な、何をするんね!?イオとナチをどうするつもりなんね!」
イタ王が怯えながらも必死に強気にでているのを見て、サロは目を細めて苦笑いを浮かべた。
「君たちには、何もしないよ。
ただね」
サロは虚しさを感じさせる目で、拳銃をイタ王に差し出した。
「君が、僕を殺すんだ」
「え」
時間が止まったような気がした。
何を言っているんだ、殺せだなんて―
「君がやらなくっちゃあ、意味が無いんだ」
今まで穏やかだったサロが、初めて語気を強くした。真剣に、本気でそう言っているのだ。
分かりきったことを口にした。
「他に方法はないんね?」
言われずとも答えは分かっていた。それでも、口をついて出た。
「ない。」
かわいた声だった。
「そっか、」
イタ王も枢軸の一員だ、躊躇うような質ではなかった。
銃声が響き、部屋に静寂がおとずれた。
鮮やかな赤色が、床の上を広がっていく。
「私達側についたら、『未回収のイタリア』を返還させましょう。」
「イタ王、なんで、そんなはずが無い!」
「ドゥーチェ。ごめんな、ごめんな」
声が聞こえる。
その全てに、覚えがある。
イタ王は暫く放心していたが、我に返ると、彼のことを思い出した。
「ナチは、もしかしてナチも?」
ナチスが体を起こすと、自分に宛てられた写真の少年が目の前にいた。
やはりか、
と思いながら目の前の少年に言った。
「私は貴様を知っているぞ?ワイマール」
「…なら、早速」
ワイマールはナイフを取り出し、ナチスの前の床に投げた。カラン、という音の裏に、不快な金属の音が隠れていた。
「僕を楽にして」
「……」
ナチスは足元に視線を落とした。ナイフの切っ先が光っていて、美しささえも感じた。
ナチスがナイフを拾い上げると、切っ先の光が地に落ちるようにつたった。
「いいだろう」
ナイフを振りかぶった。
その瞬間だけ、音が消え去った気がした。
「――!」
死の直前、表情を変えなかった少年が、笑ったのが分かった。
返り血で手が汚れたが、それを気にする間もなく記憶の渦に飲まれた。
「イオは、僕はナチについて行くよ。」
「ろくでなしがくたばりやがった」
「先輩!おいてかないでっ!」
分かっていた事だが、決していい記憶では無いようだ。
気分が悪い。
イタ王と合流しようと、踵を返して扉へと歩を進めた。
しかし、扉の前で止まって、振り返った。
ワイマールの安心したような笑顔が、写真の姿と重なった。
そこまでして、私達に何を伝えようとしているんだ?
「じゃあな、」
届くことのない言葉は、宙を舞う。
扉を開けた。
年季のためか、低い音が鳴った。
コメント
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うへへへへ 今回もがち最高すぎる...✨️ 次回が楽しみすぎて夜しか寝れませんッッ