先輩とイタ王は無事なのか?
消えた2人を想いながら、道なき道を駆けていく。日帝は以前フードのナチスを見つけた場所へ向かっていた。この山が拠点となっているかもしれないと睨んだからだ。
しかし、日帝は足を止めた。後ろから手を掴まれたのだ。
明らかに怪しい。
そう思って素早くその手から逃れ、日帝は刀を抜いた。
日帝が目にしたのは、己と瓜二つの2人だった。そう、あの写真の。
それにより更に警戒を高める日帝に対して、2人は攻撃する様子を見せない。
それどころか、日帝に向かって話しかけ始めたのだ。
「やあ、久しぶりだな。陸。」
「元気?心配してたんだよ」
聞き覚えのある声だった。
「…海?空?」
「思い出してくれた?うれしい」
「良かった。すぐに始められる。」
ぼんやりとしてその声はほとんど届いていなかった。記憶がぐるぐると頭の中を巡って、無意識のうちに刀を下げていた。
やっと意識が現実に戻って、日帝は大きく息を吸い込んだ。
「お前らは本物か?何をしようと言うのだ?」
落ち着いた日帝の眼差しは、刀身のように鋭くなった。
2人は顔を見合わせ、虚しそうに笑った。
「どうだろう?自分でもよく分からないよ」
「やることは簡単だ。」
2人の雰囲気が、明るいものから一気に変わった。それを伝えるかのように木々が騒がしく揺れ始めた。
「俺たちを殺してくれ」
「…は?
な、何を言っているのだ?ふざけるな。」
ふざけている訳では無いと、2人の様子から分かっていた。
「お願い」
空が刀身を握って、自身に向けた。
刀身に血が伝って、木ばかりの中でその赤は異質に見えた。
日帝は、すぐに覚悟を決めた。
「分かった。行くぞ。」
空の身体を、細い刀が貫いた。
刀を抜き、海の方に振り返った。そして、振りかぶった。血飛沫はまるで桜のように見えた。
「ありがとう」
それを最後の言葉に、彼は息絶えた。
「独りは好きですが、こういうのも悪くは無いですね。」
「やりすぎだ!もうお前には石油を輸出しない!」
「私達はこうするしかなかった。」
日帝は刀についた血を払って、鞘にしまった。先へ進もうと踵を返したとき、遠くに2人の人影が見えた。
「にって〜!!」
こちらに気づいた影の1人が手を振って走ってやってきて、 それをもう1人が追いかけるように歩いてきた。
「イタ王に先輩!」
イタ王が足を止め、視線の先に2体の死体が映った。
「っわ!?」
日帝が説明しようと口を開いたとき、
「これは――」
体に軽い衝撃を感じた。
「ちょっ?せ、先輩?どうしたんですか?」
「……」
ナチスが抱きついていたのだ。普段なら絶対に有り得ないことだ。絶対に。
ナチスはすぐに離れたものの、2人にはその様子がずっと頭に残っていた。本当に思いがけない行動だったからだ。
「嫌な声を聞いただろう?仲間として何かが出来ればと思ってだな。」
その言葉を聞いて日帝は大体の出来事を察した。この2人も同じ事があったのだろうと。
次の瞬間、先程より少し大きな衝撃。
「と、とりあえず無事でよかったんね!」
イタ王が2人をまとめて抱きついてきた。
日帝は、あの写真にとてもよく似た笑みを浮かべた。
「なあ、イタ王。気持ちは嬉しいんだが、そろそろ離してくれないか?」
「あっ、ごめんなんね!」
気まずそうにイタ王が2人から離れると、ナチスがいつもの調子に戻って話し始めた。
「で、他の奴らは何をしてるんだ?」
「そっか!皆も同じようなことになってるかもしれないんね」
イタ王が合点がいったように手を叩いた。ナチスはその言葉に頷いた。
「米英なら他の事件に。向かいますか?」
「いや、いい。写真の奴らはこちらに危害を加える気は無い。」
それよりも確かめたいことがある。
そう付け足して、ナチスは歩き出した。2人は急いで着いて行った。
歩きながらイタ王が疑問を投げかけた。
「確かめたいことって何なんね?」
「私達以外にも、既に写真の者を殺している奴がいる。」
コメント
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うぎゃああああ✨️ イタ王が可愛すぎるッッ✨️