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「えーちゃん!!!!!!!」
服が重い。体力が大幅に削られる為、下着1枚でもう沈んだえーちゃんを引っ張る。えーちゃんの服が重く、私まで沈む。とにかく引っ張る。えーちゃんを上にあげて、服を脱がす。ところどころでゴミが引っかかり、いろんなところを切った。冷たくて、動きにくくて、今にも腕が取れそうだった。
空は夕焼け、呑気に輝いてる憎らしい水辺を窓から眺めて、また、1日が終わろうとしていた。
えーちゃんは何も言わなかった。
あたしが生きたかったことも、助けた事も、生き殺しにしたことも、えーちゃんの独りよがりも、
えーちゃんは全部、何も言わなかった。
まるで今日の出来事が全部無くなったかのようだった。
ーーーあたし、なんて醜いんだろうーーー
カチャカチャと鉄とガラスが当たる音が聞こえる。それはあたしの中に栄養分がまだのこっているという意味だった。
えーちゃんが眠った後、あたしは襖を出た。急に起き上がったのと、炭素が肺を占領していて、目眩と、咳をした。部屋はとても涼しく感じた。あるはずのない風があった。襖からは、ぱちぱちと音が鳴っていた。体が重い。寝ているえーちゃんを分けるように襖を閉めた。感情がぐちゃぐちゃしているが、ヤケに思考は冷静だった。別のタブでメモを書き込んでいるようだった。蝉が煩い。黙れよ。死ね。暫くそこでへたり込んだ後、ふらっと立ち上がり冷蔵庫のもやしを食べた。味は馬鹿みたいに不味かったが水分があった為余計に美味しく食べれた。安いし得。その後は全てのコンセントを抜いて、暗闇に浸りたかったが、外が明る過ぎて断念した。外に出た。白いTシャツに半ズボンとサンダルを履いて、町中を歩いた。汗がびっしょりとついていて、前髪が濡れていた。アイスを買った。冷たかった。歩いていると、川があった。あの出来事はもう思い出したくない。太陽があっちに行く頃、家に帰ってきた。玄関には、えーちゃんの靴が置いてあった。襖を開けると、えーちゃんは死んでいた。ほっぺたは冷たくひんやりしていて、涙が溢れそうになった。儚い。なんて今儚いんだ。「はは…」石炭に水を入れ完全に火を消し、えーちゃんを机の側へ持ってきた。えーちゃんは軽い方だが、人は重く、特に襖は取り出すのに一苦労した。寝転がっているえーちゃんの上を、あたしは乗っかった。ひんやりしていて気持ちよかった。あたしは、えーちゃんの服を脱がした。えーちゃんは、汗をかいていた。もう流れて乾いてしまっているが、ねちゃっと指紋を吸い付いた。あの熱い所で頑張ったんだね。美しいよ、君はずぅっと。あたしも服を脱いで、死んだえーちゃんともう一度抱き合った。筋肉のついていない柔らかい感触。首筋を舐めて、頬を合わせて指で眼球を開けて、黒く滲んだ目を発見した。ああぁ君は最期その0秒前その目の位置だったのか。取り出して永遠に保存してあげたい。乾いたら嫌なので唾液を目に落とした。手を握ってもらって、指はうえになっても赤くはなかった。塩っぽい味がした。皮膚に飽きた頃、スプーンを取り出した。思ったより大きな眼球は、瞼に蓋をされていて邪魔だった。目瞼は大きく開かれ、強膜が見えていた。口に入れると、思ったより外側は硬く、弾力があったが、破裂するとゼリー状の物が口の中を埋め尽くした。「ぅお゛ええええ」激マズ。不味すぎる。がち不味い。食べれたもんじゃない。不快感が強い。舌に残る。気持ち悪い。萎えた。もういいや。
退屈でしょうもないテレビを付け、襖にもたれかかる。生産性のない、嘘だらけの笑顔が映っていて、気味が悪かった。退屈だった。
一息をついた。緊張がほぐれる感覚がした。
天井は見られるはずのない設計をしていて、十字を繰り返して、安定している。
2日目くらいのの朝だろうか。えーちゃんの腐敗臭がする。夏の暑さに負けた体の中身は、フニャッとしていた。畳にえーちゃんから漏れ出た液体が染み込んで、変色していた。ハエがたかって、隠し通せなくなってきた。
自堕落に死体と共に過ごす日々が終わりを迎えようとしていた。側には警察の車があり、それは小さく見えた。目に黒いフィルターがかかっているような気がする私には、悲しいことであった。
えーちゃんとの日々がもうすぐ終わってしまう。
ーーーーーーーーーーー
人込みの中、新しい掲示板が張り出されていた。
「えーちゃん!!!」
「さっちゃん…。」
「見たよ掲示板、コールに選ばれたの…?!」
「うん、そうみたい、嬉しい。やっと報われる」
「…そうなの?」
「うん。今までの努力が、やっとおわるんだ、てさ。」
「あたしにはそんな感覚、分からないよ」
「分からなくても、いいよ」
「ここは苦しいから。」
「……本当はダメなこと、言うけど、あたしはえーちゃんがいなくなったら悲しいよ。」
「…なんで?」
えーちゃんは以外、とでも言いたげな顔でこちらを向く。あ、また知らない顔だ。なんて今思うに少し馬鹿げたことを考えた。
「だ、だって、
あたしえーちゃんのこと好きだもん!」
「…私の事、好きなの…?」
何故かは分からないがえーちゃんにはこの言葉が刺さったらしい。
「そうだよ!えーちゃんがいなかったら、そんなの…」
「余りにもあたしが可哀想!!」
「あはは…そう、好き、ね。…困ったな、なんか、名残惜しくなっちゃうな……」
「ねぇお願いお願いお願い!!コールしないでよお〜…」
「…まあ、私も本音言っちゃうとね、」
「コールに選ばれた時、嬉しかったよ。
でも、それ以上に、今は怖い。」
「死にたくないよ…こんなの、当たり前の感情だよね……」
「そうだよ、間違ってない。あたしだって嫌だ。」
「大丈夫、何とかなる。世界が変なんだ。きっと。」
ーーーーーーーーーーー
汚くなってもえーちゃんはえーちゃんで、…ほんとうは綺麗なえーちゃんのほうがいいけど、もう戻ることも無い。えーちゃんは変わったのだ。悲しいし、望んでない結末だ。やはり生かしたほうが良かったのだろうか?いや、老いぼれていくえーちゃんを見るのもそれはそれでだ。まあ、こんな事長々と考えるなんて、無駄でしかない。あたしはえーちゃんの生涯全てにいるのだから。
パトカーの光がうるさい。
“*ピンポーン*”
インターホンが鳴っている。
コールされたえーちゃんはどうなったのだろう。
一人で悲しんでいるのだろうか。
嫌だなぁ、主にえーちゃんを取られるなんてさ、
一緒にいれば、守ってあげられるのに
…まっててね、えーちゃん、早く主を殺してあげるからさ。まだ、そこにいてね。
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