テラーノベル
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阿部はゆっくりと目を開けた。
見慣れた寝室。
ぼんやりとした頭で身体を起こそうとした瞬間。
カチャッ――。
金属音が部屋に響いた。
反射的に右足を見る。
そこには、銀色の鎖が巻かれていた。
阿部の表情が凍る。
恐る恐る顔を上げる。
ベッドサイドの椅子。
そこに目黒が座っていた。
腕を組み、じっと阿部を見ている。
何も言わない。
その静かな視線が、とても怖かった。
いつもなら「起きた?」と笑ってくれる。
心配そうに頭を撫でてくれる。
でも今の目黒には、その優しさが一つもなかった。
阿部は思わず目を逸らす。
部屋には重苦しい沈黙だけが流れる。
やがて目黒が口を開いた。
「起きた?」
その声は驚くほど冷静だった。
「……うん。」
「じゃあ話そうか。」
阿部は何も答えられない。
目黒は阿部から目を逸らさないまま続けた。
「一週間。」
「俺がいない間、何してた?」
「……仕事。」
「それ以外は?」
「……。」
「ご飯は?」
「……食べてた。」
「嘘。」
その一言に、阿部の肩が小さく震えた。
目黒はため息をつく。
「俺、本当に夏バテだと思ってた。」
「でも違った。」
「抱き上げた瞬間、分かった。」
「前より何キロ軽くなった?」
阿部は答えられない。
目黒は静かに立ち上がり、ベッドの前まで歩いてくる。
「週刊誌のこと?」
阿部がびくっと肩を震わせる。
「信じてるって言ったよね。」
「笑ってたよね。」
「俺、その笑顔を信じた。」
目黒は苦笑する。
「馬鹿だった。」
「また騙された。」
「違う!」
阿部は慌てて顔を上げる。
「騙そうとしたわけじゃ……。」
「じゃあ何?」
目黒の声が少しだけ強くなる。
「俺に心配かけたくなかった?」
「俺が忙しかったから?」
「だから一人で勝手に苦しんで、一人で勝手に痩せて。」
「それで終わり?」
阿部は唇を噛む。
何も言い返せない。
目黒はベッドの足元へ視線を落とした。
「この鎖。」
「外さない。」
阿部は目を見開く。
「正直に話すまで外さない。」
「もう、甘やかさない。」
「『大丈夫』も、『夏バテ』も、全部嘘だった。」
「俺はもう、その言葉を信じない。」
静かな声なのに、その一言一言が胸に刺さる。
「俺は優しく聞いて、あべちゃんが話してくれるのを待った。」
「でも、待ってる間にあべちゃんはここまで痩せた。」
目黒は真っすぐ阿部を見つめた。
「もう、逃がさない。」
「泣いても。」
「黙っても。」
「ごまかしても。」
「本当のことを話すまで、この鎖は外さない。」
阿部の目から、静かに涙がこぼれ落ちた。
目黒はその涙を拭こうとはしなかった。
今、必要なのは慰めることではない。
阿部が一人で抱え込んできた苦しみを、全部吐き出させること。
そのためなら、今日だけは嫌われてもいい。
そんな覚悟が、目黒の真っすぐな瞳に宿っていた。
___________
阿部は目を伏せたまま、小さく呟いた。
「……夏バテ。」
かすれた声だった。
「めめは何も悪くない。」
「すぐ治るから。」
部屋は静まり返る。
目黒はしばらく何も言わなかった。
その沈黙が、阿部には何より苦しかった。
やがて目黒が静かに口を開く。
「……また。」
「嘘ついたの?」
感情を抑えた声。
怒鳴っているわけではない。
それなのに、その一言は阿部の胸を鋭く刺した。
「証拠は探せばいくらでも出てくる。」
目黒は淡々と続ける。
「冷蔵庫の食材。」
「ゴミ箱。」
「抱き上げた時の重さ。」
「全部見れば分かる。」
「それでも、まだ夏バテって言うの?」
阿部は唇を噛んだ。
何か言わなければ。
そう思うのに、声が出ない。
目黒はそんな阿部をまっすぐ見つめる。
そして、一番聞きたくなかったことを口にした。
「……俺と一緒にいるのが。」
「辛かった?」
阿部は勢いよく首を振る。
「違う!」
思わず大きな声が出た。
必死な否定を聞いても、目黒の表情は変わらなかった。
阿部の左手をそっと取る。
薬指には、おそろいの指輪。
目黒はその指輪を見つめたまま、低い声で言った。
「俺。」
「毎朝、この指輪を見て仕事に行ってた。」
「帰ってくる場所があるって思って。」
「頑張れた。」
阿部は目黒の横顔を見つめる。
「忙しくても。」
「辛くても。」
「この指輪を見たら、『あべちゃんが待ってる』って思えた。」
「でも。」
「その間、あべちゃんは一人で別のこと考えてたんだね。」
その言葉は責めるようでもあり、自分自身を責めるようでもあった。
「俺は何も気付かなかった。」
「『信じてる』って笑ってくれたから。」
「『大丈夫』って言ってくれたから。」
「全部、本当だと思ってた。」
阿部の視界が涙で滲む。
「……。」
もう限界だった。
これ以上、嘘を重ねることはできない。
目黒の目を見れば見るほど、自分がどれだけ傷つけてしまったのかが分かる。
胸の奥に押し込めていたものが、堰を切ったように溢れ出しそうになる。
阿部は震える唇をゆっくり開いた。
「……めめ。」
その一言だけで、涙がぽろりと頬を伝って落ちた。
おその★
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りゅず
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コメント
4件

朝からウルウル😢 愛がいっぱいすぎて不安なのかな。 責めるわけでもなくとにかく💚が話してくれるのを静かに待つ🖤 でも辛いよね。良かれと思うことが うまく回らないのは… 続き気になります。
ここまて愛されて幸せなはずなのに、メンバーやファンにも見守られた恋愛なのに不安は消えない、確証や保証は性別は関係ない😢💚ちゃんは幸せになっていい、🖤揺るぎ無い愛情を態度で示して💚ちゃんを安心させてあげて
続き気になりすぎる😭