テラーノベル
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〈shake side〉
音楽室に続くながい廊下はひどく静かになった。俺たち5人と、眠る子鹿が一匹。
誰も呼吸をしていないみたいだ。
ドンッ
kr 「くそっ、、、くそっ、くそっ!」
そう言い放ちながら冷たく固い廊下に拳をぶつける彼は、まるで別人のようで皆が動揺していた。
ただひとり、ひとりだけのぞいて。
nk 「おい、ちゃんと説明しろよ。」
nk 「混じりモノって何だ?知ってるからそんな反応してるんだろ。きりやん」
静かに息を吸って伏せていた瞳がこちらを向く
kr 「そう、、だよな。みんなにも話さないと」
フラフラしながらいつもの空き教室を向かう彼の背中は、確実に何かが壊れた音がしていた。
それほどまでも、こんなになってしまうまで、スマイルが大切だったのだろうか。
ふと、不安になってなかむの顔を見た。
いつも通り、瞳はきりやんに釘付けだった。
でも、その眼は恋だとか憧れとかじゃなく、鋭く刺すようにまっすぐで。
瞬きの隙すらも惜しむほど美しかった
…………………………………………………*
〈kintoki side〉
多分、きりやんはスマイルのことが好きだ。
なかむはきりやんが好きで、シャーくんはなかむのことが好きだ。
神の悪戯のせいなのか、何とももどかしくすれ違う彼らを見て、申し訳なくなることはないけれど、何となく居心地が悪かったのは事実だと思う。
kr 「一旦、俺も落ち着いてもいいかな」
nk 「いいよもちろん。でも明日には持ち越せないからね」
なかむの言っていることは適当だと思う。
友達が一人欠けているのに、じゃあその原因や状況は後で整理してから話すから明日ね、なんて言われたらたまったもんじゃない。
それでもきりやんの余裕のなさを見ると少しそのやりとりに緊迫感を覚える。
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〈smile side〉
長 「君を元の場所へ戻すために、ここは来させた。」
sm 「どういうことだ」
長 「言葉のままだよ」
元の場所、、?
こいつの言っていることが全くわからない。
長と名乗るのであれば彼は怪異であろう。その怪異が俺に一体何の用があるというのか。
長 「僕の言葉がさっぱりわからないみたいだね?でも全然難しい話じゃないよ」
長 「君が人間じゃないってことさ」
sm 「ふざけてるのか?あまり馬鹿にされるのは好きじゃないんだけど 」
長 「心当たりはあるんじゃないの?」
心当たりだと?
俺は人間に決まってるだろ。肉体がある、息をしている、歩くことも、食べることもできる。
友達もいれば、学校にだって通っている。
学校に、、、、
長 「たとえば、帰る家がないとか」
sm 「は?」
長 「記憶を辿ってみるといい。君は過去に家から登校して、みんなと下校する情景があったかな?」
、、、、、。
、、、、、ない。
おかしい、おかしいおかしい。ないはずない
ないはず、、、ないのに。
なんで?
長 「それは君が怪異だからだ。」
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〈kintoki side〉
br 「スマイルが死んでる!?!?」
kr 「ちょっ、声抑えて」
nk 「いや驚くだろ。」
sh 「意味わかんないんだけど。え、だってスマイルいるよな?」
kn 「普通に生活してたじゃんみんなで」
kr 「、、、今から話すこと、多分理解されないことだと思うんだけど聞いて欲しい」
この世界は怪異と人間が混沌している世界。
しかし、怪異を認識できるのはごく一部の人間のみであり、その他は昔と変わらない生活をしている。
怪異を認識できるのは、霊感がある人や生業である人、それと死が近しいひと。
スマイルは植物状態であった。
現在、彼の肉体は病院に縛り付けられており、魂だけが思い出のある学校に居座り続けている。それが可視化できるほどの力になったのが学校にいる彼なのだ。
kr 「スマイルは彼岸に足を踏み入れてる。だから怪異に会わせたくなかったんだ、、、」
きりやんの話すことは確かに、理解し難いものであった。はずなのに、そんな気がしていた、なんてことも思ってしまう。
だってスマイルの家知らないし、あいつと一緒に帰ったことないし、いつも教室では俺たちとしか話さないし。
nk 「何でそんな大事なこと言わないの?」
声色は冷たく怒りを抑え込むように震えていたけれど、その目は潤んでダイアモンドがこぼれ落ちそうだった。
kr 「元は俺にしか見えないはずだったんだよ。でも俺と関わることでみんなも見えるようになって、仲良くなって、、」
kr 「このままいたらスマイルはここで生きていられるんじゃないかって。」
nk 「だったら尚更っ、、!俺らが卒業するまで黙ってるつもりだったのかよ」
nk 「そうなったら、スマイルはどうするつもりだったんだよ、、、。」
kr 「じゃあ、無責任に口をひらけばよかった?」
kr 「言って解決するような問題じゃない。それはなかむもわかってるでしょ」
俺たちが納得いくわけがないけれど、一般人である以上何もできない。なによりもそれを悟らせるように語るきりやんが1番辛そうなのが、こちらとしても悔しかった。
自分が戦おうと挑んだとしても、それは相手に餌を投げ込むようなものでしかなくて、かといって黙って見られるほど、俺たちは人形になんかなれなかった。
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