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ダイヤの瞳

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ダイヤの瞳

10 - 第10話

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2022年04月23日

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「ねえ北斗ぉ、手伝ってよ~」

楽屋のソファーに寝転がった樹が、甘えた声で北斗を呼んでいた。

北斗「なんでだよ。自分でやれ」

樹「…無理!」

樹は先ほどから、ズボンを脱ぐのに苦戦していた。

バラエティー番組の収録があるので、楽屋でみんな着替えている。最初は自分でやると言ったが、伸びないズボンで下半身に時間が掛かり、どうにもできなくなった。

北斗「自分でやるって言ったんだから、ちゃんとやれ」

大我「まあまあ、そんな厳しくなくても…」

北斗「…でも、なるべく自分でできることは増やさないと。樹のためにもならないし」

慎太郎「ていうか、家だったら着替えとかどうしてんの?」

樹「ああ、ヘルパーさんに来てもらってる。着替えはなるべく一人で。料理とか掃除はやってもらってるんだよね」

慎太郎「へえ」

ジェシー「じゃあ俺手伝おうか?」

北斗「ジェス!」

ジェシー「ごめんなさあい」

高地「ほら、頑張れ! 時間なくなっちゃうよ」

樹「頑張ってんだよ! ああ脱げないっ怒」

慎太郎「イラつくなって。絶対できる」

樹「――やっと脱げた!」

大我「偉い偉い」

樹は起き上がって衣装のズボンを手に取り、履き始める。

高地「っていうかさ、俺らが出る歌番組とかバラエティーの衣装って、黒衣装多くね?」

今日も、みんな黒が中心の衣装だった。

ジェシー「まあ俺らっていえば黒だからね」

慎太郎「高地、黒好きじゃないの?」

高地「いや、好きだよ」

大我「じゃあいいじゃん!」

大我の屈託のない笑顔に、高地も笑顔になった。「みんな黒好きだもんねー」

樹「くっ、ここが難関…」

樹がしばらくズボンと格闘していると、時計を見上げた北斗が、

「……時間ないわ。しょうがねえな、手伝うよ」

樹「ありがと北斗~…」

北斗「いいか。今度からは、自分でやれるんなら時間に余裕をもって着替えること。手伝ってほしいなら、事前に頼むこと」

樹「はい…」

慎太郎「って言っても、大体樹の世話してんの北斗じゃ?」

北斗「それは言うなよ!」

振り返って、困り顔で言う。

慎太郎「ははw」

大我「確かに笑」


支度を済ませ、楽屋を出るときには、スタジオ入りの時間が差し迫っていた。

高地「ほら樹、急げ!」

速足で歩くみんなに対し、樹は必死に漕いでいる。だが、樹にとって「急げ」というのは無理な話。

樹「おい待てよっ」

慎太郎「いいよ、ゆっくりで」

大我「押そうか?」

樹「押されたら怖いんだよ!」

ジェシー「何だよそれAHAHA!」

と言いながらも、大我が後ろからグリップを握って押す。

樹「いやぁぁああああ!」

北斗「叫ぶほどじゃないだろ」

樹「……そんな怖くないな」

高地「どっちだよw」

移動のときもとにかく楽しそうな6人は、通りすがりのスタッフに微笑まれていた……というか、苦笑されていた。


ジェシー「腹減った~」

収録が終わり、廊下を歩く最中にジェシーがいつもの大声で嘆いた。

慎太郎「ねえ飯行かない?」

北斗「おお、いいね。みんな空いてる?」

慎太郎と北斗の声かけに、それぞれ反応する。

ジェシー「うん!」

大我「…俺、大丈夫」

樹「俺も」

高地「空いてるわ」

慎太郎「おっしゃ、食いに行こ!」

北斗「奇跡的だね」

大我「なに食べる?」

樹「和食だろ」

北斗「またそれかよwww」

樹「いいだろ、好きなんだから」

ジェシー「あ、でもバリアフリーのとこじゃないと」

樹「ほんとだ。じゃないと俺入れないじゃん」

高地「なんか樹の最近の行きつけとかないの? 一人で行ったとことか」

樹「ええ、俺車いすで一人でご飯行ったことない。怖いもん。今日はみんなと一緒だから行ける」

大我「じゃあ初ご飯だね!」

慎太郎「確かにー」

ジェシー「じゃあ車いす以来の初ご飯の記念に、和食行くか。空いてるかな?」

北斗「記念ってなんだよ」

樹「ほんと? やった!」


予約が取れたテレビ局近くの店に行き、案内された席に着く。

慎太郎「何食べようかな~」

メニューをみんなでのぞく。

高地「うおっ、さすが高級和食店、結構高い」

大我「そお?」

値段にビビる5人に対し、大我はとぼけている。

北斗「え、金銭感覚どうなってんだよ笑」

樹「お父様に料亭とか連れてってもらってたんだろうな~」

慎太郎「それで価値観狂ったんだな」

大我「ねえ何がある?」

北斗「和食だよ」

樹「そりゃそうだろ、和食屋なんだから笑」

ジェシー「俺ハンバーガー食べたい」

高地「だからここ和食屋だって!」

そして、みんながメニューを決めていく中で、高地と北斗がまだ迷っていた。

高地「そばもいいけどな~、天ぷらもいいんだよな~」

北斗「このおすすめのやつもめっちゃ食べたいんだけど、これも食べたい」

ジェシー「じゃあどっちもにすればー?」

北斗「それは無理」

樹「おすすめにすれば? 季節限定じゃん」

高地「じゃあ俺季節のおすすめ定食ね」

北斗「えちょっと待ってよ、えどうしよう」

慎太郎「早くしろよ」

北斗「急かすなって! じゃ俺も高地ので」

ジェシー「はいはい頼むよ」


しばらくして、6人分の料理が運ばれてきた。おいしそうな料理を前に、みんなのテンションも上がる。

ジェシー「めっちゃうまそう!」

高地「えーみんなのもおいしそう」

北斗「いただきます」

大我「いっただっきまーす」

慎太郎「……うま!」

大我「うまぁ~」

樹「おいしい」

ジェシー「しんたろ、一口ちょうだい」

慎太郎「えー」

ジェシー「お願ーい」

慎太郎「一口だけね」

あーん、と口に入れているのを見て、

樹「ふっw」

北斗「お前らなにやってんだよw」

と噴き出した。

ジェシー「うまーい!」

樹「おいしいね」

高地「樹、多くない?」

樹「もうちょっとあとで、多かったら取って」

北斗「やっぱ和食もいいな」

大我「ねー」

樹「…俺さ、最近思ったんだけどさ」

5人「ん?」

樹「ライブのあと落ちたとき、首とか折ってなくてよかったなって。首の頚髄損傷したら命も危ないし、手も動かせなくなってたかもしれない」

大我「不幸中の幸いだったよね…」

樹「頚損だったら、ダンスもできなかったと思う。こうやってみんなと食事することもなかったのかな…って。最近はポジティブに考えられるようになった」

慎太郎「そっか」

樹は箸を置き、みんなを見据える。

樹「あのとき、ずっと俺を励ましてくれてありがとう」

北斗「な、なんだよ急に。当たり前だろ」

明らかに照れを隠す北斗。

高地「そうだよ、支え合いはメンバーとしての使命だろ?」

ジェシー「いいんだよぉ」

大我「良かったよ、またこうやって6人で楽しく過ごせるようになって」

慎太郎「これからもずっと支え合いだな!」

大我「だね!」

慎太郎「こんな良い話してると、さらにご飯がうまくなりそう」

ジェシー「確かに~」


樹「いやーおいしかった。ごちそうさまでした!」

北斗「いいえ~」

今日は樹以外の5人で割り勘だった。

高地「めっちゃうまかったね」

ジェシー「ね~」

大我「また行きたい!」

慎太郎「お父上に連れてきてもらったら?」

北斗「俺らじゃ無理だから。一回きりが限界」

大我「まあ親父、特別和食が好きってわけでもないんだけどな」

樹「あ、そうなの」

大我「うん。ま、樹と一緒なら行きたい」

樹「え、あ俺と?」

大我「だって気に入ったんなら…」

樹「じゃあきょもの奢りな!」

大我「そんなこと言ってねーよ!」

ジェシー「HAHAHA笑」

樹(やっぱ、飯食うなら6人だよな)

恥ずかしくて声に出しては言わなかったものの、満ち足りた心の中でそう思った樹だった。


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