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話すことないんでこれからはすぐに始まります
小説本文(宿泊問題編)
街に入った二人は、真っ先に宿屋を探した。
冒険といえば宿、そして飯である。
「ふうはや! あそこ、宿屋だ!」
りもこんが指差したのは、木の看板にでかでかと『冒険者御用達』と書かれた宿。
中に入ると、陽気な宿屋の主人が迎えてくれた。
「いらっしゃい! 一泊二人で銀貨二枚だ!」
「……銀貨?」
「持ってないけど?」
ふうはやが冷静に財布を開いてみせる。中身は――ゼロ。
『wwwww』
『無一文の勇者パーティー』
『宿どころか飯も食えないやん』
「だ、大丈夫だ! ここは勇者パワーで──」
りもこんが胸を張った瞬間、キラッと光が走った。
しかし……何も起きない。
「……」
「……」
「おい! 勇者パワーは!?」
「う、運ゲーだから……たまには外れるんだよ……」
『発動率低すぎw』
『ただの無銭飲食未遂』
『勇者(笑)』
結局、二人は宿泊を断念し、街の石畳をトボトボと歩き出した。
小説本文(ギルドクエスト編)
腹は減るし宿にも泊まれない。
途方に暮れた二人が次に辿り着いたのは――冒険者ギルド。
重厚な木の扉を押し開けると、中は酒場のようなざわめきに包まれていた。
鎧姿の戦士、ローブの魔術師、見るからに怪しい盗賊風の男まで。
まるでRPGそのものの光景に、りもこんは目を輝かせた。
「うおぉ……! 完全に冒険者ギルドだ! テンション上がってきた!」
「テンション上がるのはいいけど、金を稼ぐのが先だろ」
ふうはやが掲示板を指さす。
そこには「魔物討伐」「護衛依頼」「荷物運び」など、ずらりと依頼が貼られていた。
『出たーー!定番ギルド!』
『依頼掲示板!』
『初心者はスライム討伐からだな』
りもこんは胸を張り、勢いよく宣言する。
「よし! 勇者りもこん、伝説の大クエストに挑む!」
「……お前が選んだの、荷物運びだぞ」
「まずは下積みからってことで!」
『wwwww』
『勇者、バイト始める』
『スライム討伐じゃなくて荷物運びw』
受付嬢が微笑みながら依頼票を受け取る。
「では、こちらの依頼ですね。目的地は街の南門まで。荷物は――お野菜です」
「……」
「……」
「勇者、野菜を運ぶ」
「勇者ってそういう仕事だっけ……?」
『草』
『RPG史上最弱クエスト』
『伝説の勇者、キャベツを守る』
こうして、りもこんとふうはやの“冒険者デビュー”は、野菜配達から始まることになったのであった。