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番外編 - 凛の視点
『届かなかった片想いを、今もどこかで抱えてる』
誰かを応援するって、
ちょっとだけ、自分を脇に置くってことだと思う。
わたし、そういうの、
いつからか、得意になってた。
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中学二年の冬。
ひとりの男の子に恋をした。
明るくて、ちょっとバカで、
でも、誰にでも平等で、優しい人。
──だからこそ、わたしの“特別”にはならなかった。
ずっと一緒にいた。
ノートを貸したり、帰り道にバカな話をしたり。
でも、彼が誰かと付き合いはじめたのは、そんな時間のすぐあとだった。
「なんで、わたしじゃないの?」
そんな言葉を、
誰にも言えなかった。
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その日から、わたしは少しずつ変わった。
笑うことはできる。明るくふるまうことも。
でも、自分の“心”だけは、誰にも見せなくなった。
「自分が選ばれないこと」に慣れてしまった。
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高校に入って、姫那と出会った。
人と距離を置いて生きてる子。
だけど、どこか自分と似ていた。
わたしは彼女に惹かれた。
たぶん、それは“救われたかった”から。
自分の想いを言葉にできなかった、
あの時のわたしを、姫那には繰り返してほしくなかった。
だから、翔くんの気持ちに気づいたときも──
湊くんが姫那を見る目に気づいたときも──
「選ばれる側」の彼女に、ちゃんと“選ぶ覚悟”を持ってほしかった。
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でも本当は、少しだけ、寂しい。
誰かを応援するたびに、またわたしの想いはどこかにしまわれていく気がして。
「ねえ、凛ちゃんって、誰か好きな人いないの?」
──たまにそう聞かれるけど、
「ううん、今はいないよ」
って、笑って答える。
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きっと、いつか。
誰かに、わたし自身の想いを話せる日が来るのかな。
“選ばれたい”って、言ってもいい日が。
……そんな日が来たら、
今度は自分の気持ちを、ちゃんと選べるようになっていたい。
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だから、わたしも、
少しずつ、前に進むよ。
誰かのためじゃなくて、
自分のために。