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放課後、𓏸𓏸は勇気を振り絞って、涼ちゃんの家のドアベルを押した。
チャイムの音にしばらく応答はなかったが、やがてゆっくりと玄関のドアが開く。
そこに現れた涼ちゃんは――ひどく痩せて、頬もこけていた。
袖口からのぞく腕は細く、そこにはいくつもの縦傷が赤黒く残っていた。
「……涼ちゃん……」
思わず声を詰まらせた𓏸𓏸の視線に気づいたのか、涼ちゃんは短く目を伏せる。
その目には、かつてのきらめくような明るさも、優しい笑顔も、すっかり消えてしまっていた。
まるで光を失った人形のようだった。
涼ちゃんは何も言わず、そのまま背を向けて家の中へと入っていく。
𓏸𓏸は胸の奥がぎゅっと痛み、震える声で涼ちゃんを呼ぶ。
「涼ちゃん、お願い……少しだけ、話せないかな……」
けれど涼ちゃんの足は止まらない。
居間の方へと消えていく細い背中だけが、𓏸𓏸の前に残った。
靴箱には、あの日のままの上履きが寂しそうに並んでいた。
𓏸𓏸は立ち尽くし、涙を堪えることができなかった――