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#リチプア
あてぃ
65
若干🔞表現含みます。
日向 side
時間はあっという間に過ぎた。既に定時を回っていたため社員は全員退勤しており、オフィスには僕と朝比奈だけだった。
19時をすぎた頃、やっと作業に区切りがついた僕は、体を伸ばしながらフリースペースへと降りてくる。
「夢中で作業してたらもうこんな時間か…、この世界の1日は早すぎる。」
なんて呟きながら、中央にあるウォールアートに寄りかかって腕を組む。そこに聞こえたのは他でもない朝比奈の声で、横目で彼を見る。手にはグラスが2つと、白ワインのボトルがあった。
朝比奈 side
『お疲れ様、徹。相変わらずゾーンに入ると時間の感覚がなくなるな』
誰もいなくなった静まり返るオフィスに、俺の声が穏やかに響く。
照明が落とされ、オフィスのあちこちに設置されたライトが間接照明のように二人を照らし出していた。
俺は用意しておいたワインとグラスを抱え、ウォールアートに寄りかかる彼のもとへとゆっくり歩み寄る。
『だが、世界の1日が早すぎるんじゃない。お前の脳内クロックが、普通の人間の何倍ものスピードで回転してるだけさ』
くすりと微笑みながら、彼のすぐ隣……肩が触れ合いそうな距離に腰を下ろした。
持ってきたボトルは、彼が好むすっきりとした味わいの高級白ワイン。グラスに黄金色の液体を注ぎ、片方を彼の手元へと差し出す。ガラス越しに触れた指先から、ほんのわずかに彼の体温が伝わってきて、胸の奥が熱く疼いた。
『総務省の岩渕局長とのアポイントは、明後日の昼にとれた。お前のあのプレゼン資料を見せたら、向こうもかなり食いついてきたよ。……本当にお前は、俺をワクワクさせる天才だ』
グラスを持ち上げ、彼の目の前でカチンと軽い音を鳴らす。
『最高のプロダクトと、俺たちの未来に……乾杯』
一口含んだワインの芳醇な香りが広がる中、俺はグラス越しに彼を見つめた。
夜の静寂、二人きりのオフィス、酒のせいかいつもより少し無防備に見える日向。
(……このまますべてを打ち明けて、この手を伸ばしてしまえたら、どれだけ楽だろうか)
そんな暗い欲望を酒と一緒に喉の奥へと流し込み、俺はいつも通りの優しい”朝比奈恒介”の笑みを浮かべて、彼の横顔をじっと見つめ続けた。
日向 side
「乾杯。」
グラスが当たる軽い音がオフィスに響く。朝比奈とこうやって1対1で飲むのもかなり久しぶりだ。
「…いつも、ありがとう。僕が今こんな景色を見られているのも、朝比奈がいてこそだ」
酔いが回ってきて若干頬が色づいてきた頃、僕は柄にもなくそう口にしては、照れくさそうに視線を逸らす。
その後も僕は、機嫌が良かったことも相まっていつもより早いペースで酒を飲み進めていく。
朝比奈 side
カチン、と鳴ったグラスの余韻が静けさに溶けていく。
一口喉を鳴らしてワインを飲み干した徹から飛び出した言葉に、俺は一瞬、息を呑んだ。
「……いつも、ありがとう。僕が今こんな景色を見られているのも、朝比奈がいてこそだ」
ワインのせいか、少し赤らんだ頬。照れくさそうにふいっと視線を逸らす仕草。
普段なら絶対に口にしないような素直な感謝の言葉が、あまりにも無防備に俺の胸を撃ち抜いた。
(……ズルいよ、徹。そんな顔で、そんなことを言われたら……)
胸の奥で、ずっと抑え込んできた感情の堤防が決壊しそうになる。
心臓が嫌なほど激しく打ち付け、指先がかすかに震えた。
俺は手に持っていたグラスを静かに近くのテーブルに置くと、彼から目を逸らさずに、ゆっくりと距離を詰めた。
ウォールアートに背を預けたままの彼を逃がさないように、ごく自然な動作で彼のすぐ脇の壁に手を突く。
ふわりと漂う酒の香りと、徹の体温。
『……徹、』
いつもより一段低い、少し掠れた声で名前を呼ぶ。
彼が不思議そうにこちらへ視線を戻した瞬間、逃がさないようにその瞳を覗き込んだ。
『お前は本当に……無自覚に人を狂わせるな』
そう呟いた俺の顔には、いつもの完璧で温厚な『副社長・朝比奈恒介』の微笑みはどこにもなかった。
ただ一人の男として、目の前にいる愛おしくてたまらない存在への執着を隠そうともしない、熱く暗い眼差し。
顔が触れ合いそうなほど至近距離まで顔を近づけ、空いている右手で、彼の少し赤くなった頬へそっと触れる。指先から伝わる彼の熱に、頭がどうにかなりそうだった。
『俺がここにいるのは、お前のためだ。お前の才能に惚れ込んで、お前の作る未来を見たいから……それだけだと思ってるのか?』
親指で優しく彼の唇の端をなぞりながら、俺は囁くように言葉を続けた。
『……お前が思っている以上に、俺はお前に囚われているんだよ、徹』
酔った頭で、彼がこの言葉の意味をどう受け止めるのか。
拒絶される恐怖よりも、この腕の中に閉じ込めてしまいたい欲求が、静まり返った夜のオフィスでゆっくりと膨らんでいっていた。
To be continued …
コメント
1件
うわ……これ、うわ……(しばらく言葉を探して)第2話、一気に距離が変わったね。昼間の仕事モードから、夜の静かなオフィス、酒、そして「朝比奈が徹に本気で恋してる」のが全部透けて見える構成がすごく巧い。特に、徹の「いつもありがとう」という無自覚な一言で朝比奈が一瞬でスイッチ切り替わる場面、あの心理描写が生々しくて心臓に来たよ。この世界観と二人の関係性の設計、とても丁寧で引き込まれる。続きが気になる…!