「ごめんな! 綾のご両親に勧められて、俺も調子に乗った」と言われた。
「え? もしかして、またお父さんが言ったの?」と聞くと、
「あ〜最初に『もう一緒に住んだら?』って言ってくれたのは、お母さんかな?」と言った。
「くっ……そう言うことか……だから、さっき頑張って! って」
「だな……」と言った。
ジーッと匠の顔を見た。
「ん?」
「落ち込んでる?」と聞くと、
「う〜ん。俺も綾と早くココで一緒に暮らしたい! って思ってるのは、本当だから」と言う。
なんだか匠が小さく見えて、思わずぎゅっと抱きしめてしまった。
匠の背中をトントンした。
──なんで私、こんなことをしてるんだろう
匠の匂いがする。私、この匂いが好きなんだと思う。
それに、暖かくて、愛おしくて……
やっぱり、もう、離れられない! と思った。
「匠……」
「ん?」
「一緒に暮らそうっか……」と言っていた。
「え? 綾! ホントに?」と、驚いた顔で私を見る。
「うん! そうしよう」と言うと、
「綾〜〜嬉しい〜!」と、ぎゅっと抱きしめられる。
「ふふ」
私には、匠が必要だ! 匠も私を必要としてくれているのが、ヒシヒシと伝わる。
親も認めてくれてるのなら、遠慮などする必要はない。
頭が追いついて来なくても、やっぱり、私は匠と、
「一緒に居たい!」
自分に正直になろうと思った。
「俺もずっと一緒に居たい!」と言った。
そして、もう一度、
「綾、ホントに、ホントに?」と聞いた。
「うん」と微笑むと、
「ありがとう」と、やっぱり、キスをした。
そして、
「嬉しい〜〜〜〜」と、抱きしめられる。
「ふふ」
「あ、ごめん綾、お腹痛くない? 大丈夫?」と聞かれた。
「うん、大丈夫よ」
そのちょっとした気遣いが嬉しい。
そして、
「ゆっくり座って」と、膝掛け用のハーフケットを掛けてくれる。
「ありがとう」
──やっぱり、匠、モテそう
モテ男の悪夢が蘇ってしまう。
他の《《女》》にモテて欲しくない!
誰にでも優しくしないでね
「ん? 大丈夫?」と聞いてくれた。
「うん。やっぱ匠、モテそうだなって思って」
まだ、トラウマになっている。
「え? そんなことないよ! なんで?」と聞く。
「優しい気遣いが出来るもん」
「俺は、綾にだけモテればそれで良いの」と言う。
「もうモテてるよ」と言うと、
「やった〜!」チュッとした。
「ふふ」
恥ずかしくて、又人差し指で、匠の鼻を指差す。
「やめなさい!」
「ホントに怖いんだ」と笑うと、
「笑い事じゃないの」と笑っている。
「ふふふふ、《《たっくん》》可愛い〜」と言うと、
「それもやめなさい!」と言う。
「ヤダ! たっく〜ん!」
「こらっ」と言いながら、チュッとする。
「毎朝《《たっく〜ん》》って言いながら、走ってたらしいんだもの」
「そうそう、覚えてる。いつも綾が走って来て体当たり」と笑う。
「失礼ね、抱きしめてたんでしょう?」と言うと、
「うん、俺もまだ小さかったから、案外痛かったんだからな」と言う。
「はあ〜? そんなこと、今苦情を言われても……」
と笑う。
「でも、嬉しかったんだよな〜」と、抱きしめられる。
「そうなんだ」と、匠の頭をヨシヨシしてあげる。
「頭、ヨシヨシされると気持ちいいな」と言った。
「でしょう? ドキドキした?」と聞くと、
「ドキドキした!」と言う。
「ふふ」
匠が私を妹のように可愛がるように、
私も匠に母性本能が働く。
ぎゅっと抱きしめてもらいたいし、ぎゅっと抱きしめてあげたいと思ってしまう。
「ダメだ! 一緒に居るとずっとこんなことをしてしまう」と言う匠。
「良いんじゃない? 誰も見てないし」と言うと、
「そうだよな、昨日は、誰か来たらと思ってたからな」と言う。
そして、匠の隣りに座ると、またぎゅっと抱き寄せられる。
「ふふ、ホントだね」と笑う。
そして、私の額、こめかみ、頬、鼻、耳、唇
そこまでは、全部キスをする。
首筋にしてしまうと、もう止められなくなってしまいそうだから、そこで止めているようだ。
「あ〜ダメだ!」と自分でも言っている。
「いつから?」と聞くと、
「ん?」
「いつから、来れば良い?」と言うと、
「今日からでも良いぞ」と言う。
「早っ!」と笑うと、
「俺は、もういつからでも構わないよ」と言う。
「着替えとか取りに行かなくちゃ」と言うと、
「近いんだし、後で取りに行こうよ」と。
「ホントに、今日から?」
「うん」とニコニコしている。
「ふふ」
「じゃあ、お昼食べたら、買い物ついでに、荷物取りに行こうか?」と言うと、
「ホント? やった! そうしよう」と又抱きしめられる。
やっぱり、離れられなくなっている。
そして、何度も何度でもキスをする。
「匠って、キス上手よね」と私が言うと、
「グッ、上手? そんなの相性の問題じゃないか?」と言う。
「そう?」
「うん、合わない人とは、気持ち良くもないだろ?」と言う。
頭の中で過去を遡る。
そして、
「確かに」と言うと、
「お前、今、何人前の人まで戻ってたんだ?」と言った。
「えっと〜と両手の指を折って数えると」
「そんなに居たのか?」と、悲壮な顔をする匠。
「ふふふ、冗談よ! 過去は気にならないんでしょ?」と言うと、
「気にならないんじゃなくて、どうでもいい! と言ったんだ。気にはなる!」と言う。
「ハハハ、そうなんだ。そんなに居ないわよ。追々ね」と言うと、
「そっか、追々な」と微笑んでいる。
「可愛い」と言うと、
「可愛いは、おかしいだろ」
「可愛いよ」
「ふふ」と照れている。
お昼まで2人でまったりと過ごした。
そして、会えなかった頃の話をしたり、
時々、匠が思い出した私との遊びについてなどを話してくれて、2人で大笑いした。
──私、ずっと笑ってる
良かった、失恋のどん底に落ちなくて……
もう前を向いて進もう!
匠と一緒に! 匠ありがとう〜