テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
鉄格子の向こうで、マイロはいつも震えていた。
「……ルイ、私のことは、もういいの」
「嫌だ、今までの日々を取り返しに行くんだ」
私は泥をすすり、剣を覚え、影の仕事で金を積み上げた。
そして数年後、彼女を乗せた護送馬車を襲撃し、血の海の中から彼女を奪い返したのだ。
「…マイロ!逃げるんだ!」
だが、追っ手に追い詰められた崖の上で、マイロは私を見て悲しく微笑んだ。
「…アブセンティア!」
追い詰められたマイロが放ったのは、代償として記憶を散らす忘却の魔法だった。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
一ヶ月後。
陽光が差し込む静かな隠れ家。マイロは鼻歌まじりに朝食の準備をしていた。
「おかえりなさい、ルイさん。今日もお仕事、お疲れ様です!」
ふわりと笑う彼女に、かつての怯えはない。一ヶ月前、道端で行き倒れていた自分を助けてくれた「親切な騎士様」。
それが、彼女の中の私のすべて。
…もともと、私のモノだったわけじゃない。
…わけじゃないのに。
「……ああ、ただいま、マイロ」
私は彼女の頭を撫でる。その手首に刻まれた、消えない奴隷の紋章を見ないようにして。
「私、どうしてあんなところにいたんでしょう。思い出そうとすると、胸がざわざわして、涙が出るんです」
私は君に笑ってほしかった、一緒に…。
彼女を救ったのは、私の愛か。それとも、新しい檻か。
記憶を失った幼馴染との、歪な「はじめまして」から物語は動き出す。