テラーノベル
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マイロを寝かしつけ、部屋の灯りを消したあと。
ルイは月明かりだけが落ちるキッチンで、一人、自分の震える拳を見つめていた。
…私が守りたかったのは、単なる「命」だけじゃなくて共に刻んできた「時間」そのものだったはずなのに。
「……私は、マイロを幸せにしたいだけだった。
いつまでも、となりで、笑って……一緒に歌を歌ったり、散歩をしたり。
ただ、君を喜ばせたかっただけなのに……」
絞り出すような声は、誰に届くこともなく夜の闇に溶けていく。
救い出したはずの腕の中にいるのは、自分を「親切な騎士様」と呼ぶ、空っぽになった幼馴染。
「……どうして、こんなことになったんだろう…。」
君を、私は守ってあげることができなかった。
何より守りたいと思っていた時間を、初恋の相手を。
君を救って幸せにするために、闇に手を突っ込んだのに。
涙は剣を握り続けた硬いタコの上に落ちた。
「ルイ…」
「…!?…寝言か。」
昔のように、愛し合っていた頃のように名前を呼ばれて動揺してしまう私がいる。
戻りたいって…思ってるんだ。
でも…戻ってしまえば君は籠から逃げるかもしれない。
ルイは再び、マイロの眠る寝室へと戻っていく。
その足取りは、もはや騎士の守護ではなく、獲物を閉じ込める執着者のそれへと変わっていた。
「……おやすみ、マイロ。明日もまた会いましょう」
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