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135 - 第4話:美術室の革命

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2025年04月22日

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第4話:美術室の革命



ツリーハウス学舎の北側――幹から伸びる細い枝にある、美術室。

周囲は透明な外壁で囲まれ、空と森をそのまま取り込んだような空間だ。


中にはすでに、とんでもなく自由な作品がいくつも浮かんでいた。

空中に浮遊する蝶のフラクタル模様、色が変わる紙の渦、そして――


「これ……何?」


タカハシが唖然としながら指さす。


「《CODE = NULL》?」

「コードなし……ってことか?」

「いや、ゲンの提出物だ」


その名も――《NOISE = TRUE》《MEANING = OFF》《DURATION = 1sec》。





「芸術課題、テーマは“自己表現”。コード形式は自由だが、“命を削らない”ことが条件」

スエハラ先生が、何やら嬉しそうに笑っていた。


「皆さん、命を燃やすフラクタルばかり扱っていますが、今日は逆に、“何も起きなくていい”日です。

だが、“響く”ことはできる。命を削らなくても、記憶に残るコードを書いてください。」





そのとき、教室中央にゲンのフラクタルが展開された。


《PATTERN = RANDOM》《SCALE = “呼吸”》《COLOR = “変化”》《SOUND = “0”》


宙に浮かんだフラクタル模様が、音もなく静かに動き出す。

規則性がなく、それでいて、どこか“心音”のような緩やかなリズム。


生徒たちは息を飲んだ。


「……何も、起きないのに……なんか泣きそうになる」

「これ、ノイズ? いや、感情に、近い……?」


「説明しないよ。感じるだけでいいんだ」


ゲンはいつも通り肩の力が抜けたまま、それでいて確信に満ちた目で言った。





タカハシがぽつりと呟いた。


「こんなの……“意味がない”はずだったのに。何だよこれ……ずるいだろ」


「お前も、もっと自由にやっていいんじゃね?」


「俺は……俺なりに、やるよ。理屈と安定で、ちゃんと響かせてみせる」





その日、美術室では戦闘もないのに、誰よりも真剣な“表現のぶつかり合い”が起きていた。


命を削らない。

けれど確かに“誰かの心を動かす”。


それもまた、フラクタルの使い道なのだと、生徒たちは知るのだった。

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