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しめさば
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#ロマンスファンタジー
花月夜れん
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榎本くもり
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見た目は透き通ってて、冷たそうで、綺麗な水色……なんだけど……。
ニタァァァァ
なんか、笑ってる口がぷかりぷかりと浮いてるんですけど!?
怖い怖い怖い! めちゃくちゃ怖い!
何あれ、今からその変なものを飲ませるつもりなんですか? 嫌ですよ!?
「さぁ、これを飲め」
「にゃぁん(断固拒否します)」
「そう言わず、飲まねばお前の言ってる言葉がわからん」
「にゃぁあぁ(いま理解してませんでした?)」
「ええい、覚悟しろ!」
キュポッといい音をさせて彼は私の口にフラスコを突っ込み、その液体を――無理矢理注ぎ込んだ。
ん、ぁ、いやぁぁぁぁ
容赦なく傾けられ、液体が流れ込んでくる。
……あれ? ラムネ味で美味しいかも。目を閉じれば怖くない?
コクコクと喉をあの液体が通過していく。
あ、でもあの笑う口が! どうかフラスコの首で引っ掛かりますように!
全て飲み終わったのか解放された私は、ゆっくり目を開けてフラスコの中を確認する。
空っぽで何もない……。飲んでしまった……?
「さあ、喋ってみろ」
そう言われ、私は渾身のツッコミをいれる為にふぅと一つ息を吐いた。そして、
「にゃにするのよ!ばかぁぁぁぁぁ!」
全力のストレート猫パンチ(グー)を繰り出した。
「ぐふっ、成功だ……」
パタリと倒れた彼をよそに、声が出せた私はあいうえおを順番に喋ってみた。
「あいうえおかきくけこ――にゃににゅねにょはひふへほ――」
私のな行がにゃ行へと変更されていた。うーん、微妙な猫感が残ってしまった……。にょって何……。
さてと、この倒れたの、何とかしないとなぁ。
男の人って、すごく重い……。無理。動かせない。
しょうがない――。
「はっ」
あ、起きた?
私の眼下でペンさんが目を覚ます。何故かどんどんと顔が赤くなっていく? どうしたの?
「な、ななななな」
「ん?」
動かせないから、ちょっと膝枕してあげただけなのに動揺しすぎじゃないですかね?
「大丈夫?」
真っ赤になってるペンさんが、可愛くてしっかり見たくて私は顔をじっくりと眺める。
少し斜めに傾げながら覗き込むと片方の髪がぱらりと落ちてきた。
「恥じらいを持てーーーーー!」
そう言って、勢いをつけ起き上がったペンさんはまた家の外へと今度は走っていった。
あぶない、頭突きを受けるところだった。
もしかしてあの人、女性への耐性が低かったりするのかな? モテそうな外見してるのに。
可愛いなぁ……。なんだか、からかいたくなる……かも。
私の中で、何かが、うずうずしていた。
私って、もしかして――。
ーーー
「ほいよ、ペンさん」
「俺はぺ――」
「はやく、着せてやんな」
大きな紙袋をニーナさんが持ってきた。もしかして、あれは!
「おい、シロ。自分で着れるか?」
うーん、どうだろう。ボタンとかチャックとか同じなのかな?
じっと、紙袋を睨んでいると、ペンさんは小さくため息をついてから、ぐいっと私の手を取り姿見のある部屋へと引っ張って連れていかれた。
バタンと扉を閉めて、姿見の前に立たされる。
「着れそうにないなら呼べ」
そう言って、紙袋をベッドの上に置き、ペンさんは扉の外に出た。
「ここにいる」
それだけ、言い残して。
ガサゴソと、紙袋を開けると思ったより可愛い服が沢山入っていた。
ジーンズばかり着ていた私は、ふわふわ揺れるワンピーススカートを手にとってぴたりと体に当ててみた。
「かわいい――」
白銀の長い髪、黄色に光る丸い目、ぴるぴるっと動く耳。後ろにはぶんぶんと揺れる長い尻尾。体のサイズはリアの時とあまり変わらないみたい。ただ少し、いや、だいぶ胸が大きいかな。言ってて悲しいけれど。
パサリ、パサリ、パサリ
何枚か服を見てみると全てワンピーススカートだった。何でだろう?
私は、花の刺繍のはいった綺麗な一枚に袖を通してみた。
おぉ、ぴったり! ニーナさんすごい。
そして、気がつく。そうか、尻尾だ。
ワンピースだから上からぱさりと着れるけど、パンツルックだと邪魔になるかな?
でも……、下着が欲しい。スースーするよー!
がさがさと、紙袋をあさると、下の方に下着があった。
でもこれ、紐……。あとは、カボチャ?
うーん。どっちにしようかな。
そうだ、お裁縫道具があるならあとで、尻尾のところに穴を空けよう。スカートの中でも、当たるとやっぱり気になるや。
コンコン
「シロ、出来たか?」
ペンさんがノックする。
私は、今着ている服を確認してみる。これでいいよね?
「着たよぉ」
カチャリと扉が開くと、ペンさんとぱちりと目が合った。
途端に、カァァァと彼の顔が赤くなり、また目線を外される。
「丁度いいみたいだな、他にはどんな物を買ってきているんだ?」
そう言って、彼は俯きながら私の横を通りすぎ、紙袋に手を伸ばした。
は! それにはさっき私が試着した下着が入っている――。
「まって――」
急いで、私はペンさんを止めようと、止めようと、あーっ!
盛大につまづいて、私はベッドに押し倒してしまった。誰をって? ペンさんを!
「……シロ?」
真っ赤な顔で目を横にそらす彼は、とても可愛くて、私はそっと彼の頬に頬擦りをした。
「可愛い服を、ありがとう。ペンさん」
彼は、私の両腕をがしりと掴みぽいっと横に移動させ、起き上がって急ぎ足で外へと向かった。
ふぅ、なんとか誤魔化せたかな。
いま履いてるのがどっちか、バレるところだった……!
ーーー
「水の精霊よ!」
カチャカチャポチャン
うーん、全自動食洗機。
私はペンさんから、魔法を習った。この世界には、今見えたような小さな精霊さんがあちこちに存在して、彼らにお願い事をすれば私の中の魔法を使う力を使って不思議な出来事を起こしてくれるそうだ。
「風の精霊よ!」
ヒュー
羽のついた小人が舞い踊りホコリが外に飛んでいく。AI搭載掃除機もびっくり。
はぁ、楽しい!
魔法って便利すぎる! 使うたびにちょっと、何か吸われている気がするけど、これは魔力? を精霊さんにお礼として渡しているらしい。
そして、私が使いこなせるのは水、風、光、闇の魔法四種だった。試しに全部の魔法を使ってみろとペンさんに言われて、私は全精霊を一人づつ呼んでみた。そして、使うことが出来たのがこの四つ。
他には火、木、土があるらしいのだけど、私とは相性が悪いらしく、お願いしても聞いて貰えなかった。火は私が猫で、獣だから本能的にかな? 木は、サボテンすら枯らしちゃうからとても相性悪そう。土は何でだろう?
ちなみにペンさんは全種類使えるそうだ。凄い。
家事で使う、火の魔法が使えないのが痛いけれど、ペンさんが、ランタン? みたいなものに火の精霊を呼んで、消えない種火を作ってくれた。
「ありがとうペンさん!」
お礼を言って、スリスリ身体を擦り付けると、また顔を赤くして、
「コレぐらい何でもない」
と、言いながら外に行ってしまった。
うーん、前途多難。どうやったら、お近づきになれるのだろう。ついつい、こちらから攻めていくのが駄目なのかな? でも、向こうから攻めてくることなんて……、無さそうだしなぁ。
私は早速、貰った種火で料理を始める。
エプロンも、あの紙袋に入っていたから、きゅっとリボン結びをして、準備完了!
「水の精霊よ!」
コトコトコト
お昼はニーナに貰った色々野菜とベーコン、卵のスープにしよう。
「ペンさん、美味しいって言ってくれるかにゃ」
初めて料理を食べさせた時の、『美味しかった』がまた聞きたいな――。私は一人暮らし生活で始めたばかりのまだまだ発展途上料理スキルを最大限使って調理に取りかかる。
彼の美味しいと言う姿を想像しながら。
ほわほわと蒸気が上がり、沸騰したので、卵を落として蓋をする。
美味しくなーれ。美味しくなーれ!
料理の精霊さんがいるかはわからないけれど、私はそう呟きながら、お皿の用意を始めた。
「美味しい」
そう、その一言で次も頑張ろうって思えるんだ。
「よかった」
私は嬉しくて、彼に微笑んだ。すると、また目線をふいっと外されたのだが、これはもしかして、照れてくれてるのかな?
元の世界に帰れる希望が少しは、出てきたかなぁ……?
コメント
1件
うわ、ついに喋れたのに「にゃ」が混ざるの、めっちゃ愛おしいですね笑。ペンさんがもう照れすぎて逃げまくりで可愛すぎる…膝枕からの頬擦りで真っ赤になるとか反則ですよ。魔法も水風光闇の四種だけっていう設定がちゃんと身の回りのものとリンクしてて、世界観の設計が丁寧で好きです。ラストの「美味しいって言ってくれるかにゃ」から料理の精霊に願う流れ、じんわり温かくなりました。ペンさんとの距離、どう変わっていくのか続きが気になります!