別れよ_
そんな一言で私の人生は変わった。ずっと彼に甘やかされていたからこそ、別れを告げるのが怖かった。別れを告げたあとは、連絡が取れるもの全てをブロックして脳内から彼の姿を消そうとする。だけど、本能が忘れたくない、などと声を上げていて少しずつ、人間が1番残るのは匂い、あいにく私は彼と同じ香水を付けていたため、捨てるのはもったいないと思い、友人に譲ることにした。
それから、数年が経った_
私はカフェのアルバイトをしている。
内定が決まっているのでそれに控えて準備をするために少しシフトを減らしてもらっているのだ。
私の内定が決まった所は世界に様々な部署があるのだ。
決まる部署はランダムと言っても希望ぐらい聞いて欲しかった。部署は最悪なことにスペインだ。
スペインは元々彼と過ごしていた国であり、現在も彼はそこで過ごしている。でも、いつまで経っても引き摺ってちゃダメだ。きっと彼にも想い人は出来ているはずだ。
そう思い、気持ちを切り替えて勤務に励む。
でも、思い出してしまうと気になって。トーク画面を拝む。最後に会話したのは既読だけ着いた*別れよう*だけのメッセージだった。
早く、春にならないかなと心の底でどこか思ってしまっている自分が少し憎らしい。そろそろ定時という頃にお客様が来てしまった。今の時間帯、人も少ないので私が対応することになった。でも、それが縁の知らせだったのかも。
「ご注文は何に致しますか?」
『せやなぁ…』
正直、ビックリした。
だってお客様はスペイン語を話しているのだから。
スペイン語という単語を聞いて思い出してしまう。まだ、私は未練があるのか、と少し悔しそうにしながらもお客様の注文の品を持っていく事にした。あいにく、彼が頼んだものはコーヒーだったためつくる手間が省けた、と思っていた矢先、そのお客様に話しかけられた。
『なぁ、お姉さん』
「ナンパならお断りです」
『ちゃうよ、今度マドリードでお祭りがあるんや、友人に頼まれてな…是非お姉さんに来て欲しいねん』
マドリード…スペインの首都だ。
どうやらお祭りがあるらしい。誰かに頼まれたと言っていたけれど、一体、誰なのだろうと思いつつ、内容を聞くと、彼は世界博覧会というものを教えてくれた。それがスペインで行われるらしい。内容そのものに興味あったため、行くことにした。詳細が書いてあるチラシをもらうと彼はお金を払って帰って行った。チラシに目を通すと、フランスやエジプト、イギリスでの伝統的な街並みなどを見れると書いてあった。来月の14日。シフトを確認しながら空いているか確認しながら次の子を待つ。
シフトを見終えたところで次の子が来たのでバイトを代わり、帰ることにした。
『最近、暗くなるの早いな』
そんな独り言を呟いた時だった。
「_やからっ、」
聞き覚えのある声、スペイン語。
間違いなく、彼だ、彼なのだ。けれど、今はどうしても関わりたくなくて走り抜ける。途中、缶を踏んでしまい、相手に気づかれたが、無我夢中で走り続けた。家の前に着き、急いで鍵を開けて中へはいる。少し落ち着いた後、何故、ここにいるのか気になった。きっと、宣伝目的だろうと私は考える。今日は色々あり、面倒くさくてそのまま寝てしまった。
[newpage]
14日。
スペインにやってきた。入場券売り場に並ぶと予想していたよりも長い列が並んでいる。誰かさんのお陰でスペイン語は話せる。ホワイトボードに書かれたものを見ると入場券の待ち時間は15分だ。まだ早い方だとわかって良かった。自分の番がまわってくると入場券をそそくさと買って世界博覧会、通称エキスポと言われる会場に着く。
バスでの観光があり、私はそれに乗ることにした。
そして、予想もしなかった、寧ろ乗らなければ、と思ってしまった。何故なら、このバスは、詰めて乗るものであり、隣が他人でもおかしくないのだ。そう、その私の隣に乗ってきたのは数ヶ月前に会った人、そして私の元恋人だった。相手はこっちを向いておらず、バレるのも時間の問題だと分かった。
『隣失礼します、って』
「…」
何も会話は交わさない。
彼は幾らも話しかけているけど無視し続けている。
1番、話したくない相手で。外にある綺麗な景色に目をやると、マドリードを上空から見渡している感覚になるような景色が広がった。
それはもう、絶景で。すごく綺麗で、思わず口に出してしまう。
「…綺麗だな」
『せやろ、俺の家の景色、見惚れてもうた?』
「…うん」
これは本当だから。
否定することは出来ない。そもそも、私に非があるのだから。そんな私に何故彼は語りかけて来るのだろう、本当に昔から、物好きだな…と感じる。
少し降りれる場所があったのでそそくさと降りる
降りた場所はポルトガルにある伝統的なダンスがやっている所だった。少し私は引っかかる。もしかしたら、ポルトガルさんが居るかもしれない、と走っていく。
少しダンスの場所から外れた所に黒子があり、髪を括っている、よく彼に似た容姿のポルトガルさんがいた。
『…』
「ポルトガルさん!」
『あ、🌸やん、久しぶりやんなぁ』
ポルトガルさんとは久しぶりに会ったものの、話は弾むし、ポルトガルさんとは趣味友のような関係だった。
世間話、エキスポのことについて語り合ったり、など会話を楽しんでいると、ポルトガルさんはどうやら知り合いと来ているらしく、少し気になり聞いてみた所、どうやらイギリスさんも来ているのだとか。少し楽しみな気分になり、ポルトガルさんと少し別れて行動をすることにした。
「…スペイン、以外と良いかもな」
そんな独り言を呟きながら、色々回っていく。
有名な世界遺産を再現した建物があったり、回ると疲れたので、カフェに行くことにした。
…どうしても、どうしても彼が気になる。
私は心の底のどこかで彼を探してしまっている。
少し休憩をしたあとは、見てないところを周っていくとフランスさん、イタリアさん、日本さんなどと沢山の人に出会った。けれど、彼には出会わない。
彼も私のことを意図的に避けているのだろう。世界博覧会はもうすぐ終了を迎える。きっと終わりまでいると混むと思うので私はここで退くことにした。
「…すぺいん、さん」
出口へ行く途中、私は呟く。
彼の名前を。どうせ来ない事なんか、分かってる。
分かってるよ。だけどもしかしたら、を信じたくて。信じて。きっとその確率は0.1%以下にもなるんだろうけど。
『寂しくなってもうた…?』
声がした方を振り返ると今まさに会いたくもない、けれど会いたい相手が今そこにいるのだ。私は思わず手を引っ張って会場の人目が少ない所へ移動した。
ずっとずっと。はきたかった。
君への気持ち。
「今も好き。大好き」
『…おん。』
「愛してる、またあの時のようにとは言わないけど、付き合って、」
『…十分、伝わったわ。俺も好きや。』
私は嬉しさで涙が溢れてくる。
それを隠すようにスペインさんを抱きしめる。大好きだ。この先もずっと、…
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