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〜66日目〜


 作業をしていると、まふゆが隣に座ってきて、左手を繋がれた。いつもの恋人繋ぎ。別にそれで困るという訳ではないが、流石に描きにくい。

 まふゆは読書をしている。ページをめくる度に左手が掻っ攫われるので、集中が続かない。……やっぱり困るかも。

 動かないように私は強くまふゆの手を握って、スケッチブックに描きやすいよう押し付けた。


「ん……絵名?」

「何」

「動かない」


 ──あ、そう。

 返事はしてやらず、私は作業を続ける。


「うわっ」


 しかしそうしていると、力強く左手を引っ張られ、まふゆは握った右手で本を支えながらページをめくった。


「ちょっと。何すんのよ」

「ページがめくれないから」

「片手で読めないの?」

「やってみると分かるけど、こうやって本の隙間に手を置いとかないと閉じちゃうんだよね。だから片手でめくろうとすると大変なの。そもそも持てないし」

「ふーん。なら、手を離せばいいでしょ?」

「平等にしようよ。使わない時は手を下に置いておけばいい」

「え、うーん、まあいいけど」


 地面に手を置いて、作業を始める。

 描きにくいことは確かだが、まふゆも条件が同じだしいい気もした。これなら喧嘩になることもない。

 絵の全体図を見てみると、少しバランスが悪い気がした。消しゴムで消そう。右手で消しゴムを持って、消そうとするが、スケッチブックが固定されてないので力がこもらず消しにくい。

 ──仕方ない、左腕を上げよう。

 そう思い左腕を上げた。案外軽く上がったな、と思った。同時に、手が動かないな、とも思った。


「「……」」


 お互いに顔を見合わす。パチパチと二、三回瞬きをしたまふゆは、そのままぐいっと右手を引っ張った。


「ちょ、力強!」

「はい、いいよ」

「このシステム不便すぎるんだけど! ていうか、私は作業してるの、私に譲りなさいよ!」

「絵名のほうが時間掛かるし。まあ待っててもいいけど」

「なんでそんなに上からなのよ。そんな立場じゃないからね」


 文句を言いつつ、おかしいところを消していく。こういうのはまともに相手をしてはいけないって、私は知っている。

 まふゆは私の肩に頭を乗せて、絵を覗く。


「いいね、今回の絵も」

「……も?」

「も……。」

「え、何それ、へぇ、ふーん」

「嬉しそうだね」

「ま、少しだけね~」


 まさかそんなことを思ってくれていたとは。

 もう少し言葉にしてくれてもいい気がするが。まあ、それだけでも上出来か。私のことが大好きなまふゆの為に、手は離さないでおいてやる。

100日後に付き合うまふえな

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