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〜67日目〜


「絵名、ポッキーゲームをしよう」


 そう言われて、ポッキーの箱を手に持ったまふゆが声を掛けてきた。

 ポッキーゲーム。

 いくら頭をフル回転させても、変な汗が出るばかりで、どうして急に、とどうせ元凶であるピンク頭の騒がしいMV担当を恨むばかりだ。


「やだって言ったら?」

「私は絵名とポッキーゲームがしたい」

「どうしてそうなったんですか……?」

「瑞希と奏にさっき会って、一袋貰ったの。それでポッキーゲームっていうのを教えてもらった」

「なんでやろうと思ったのよ」

「言われたの。自分が見つかるかもって、」

「はあ、瑞希のやつ……」

「奏に」

「奏!?」


 奏は何を言い出しているんだ。私の頭にはハテナマークが浮かぶだけで、全く理解ができない。


「あと、仲がいい人にやるって聞いて。だから絵名、やろう」

「何そのついでの理由。え、え、え? うーん、うん?」

「ありがとう」

「えと、待って、本当にやるの?」

「うん。ポッキーを二人で食べあって、折れたほうが負けでしょ?」

「ええ、ふーん、そうなんだ、わからないから、やめておこうかな」


 まふゆ、あんたからかわれてるのよ。何故か奏にさえもからかわれてるのよ。ポッキーゲームって友達でそう簡単にやるようなものじゃないのよ。陽キャと陽キャがノリでやるのは分かるけど、私とまふゆは違うのよ。


「いいよ、練習しながらやろう」

「ポッキーゲームに練習とかないから! 始めたならそれがもう本番なの!」

「知ってるのなら話は早いね。始めたらそれが本番になっちゃうの?」

「そう。あと私はやりたくないわよ」

「どうして?」

「いやだって、折れなかったらほら、アウトじゃない。考えてみてよ。全部ポッキーがなくなったら?」

「え、全部ポッキーがなくなったら……」

「そうそう、なくなっちゃったら?」

「あれ。これ、どっちが勝つんだろう」

「いや、勝敗とかどうでも良くて」

「そもそも、折れたほうが負けって、どっちが折ったか分からないよね。協力するってこと?」

「いや、そんなの今はどうでもいいんだって」

「ねえ、私達は食べ切れるまでやろう。勝つまでやろう」

「ポッキーゲームは一回の勝負なの! 練習とかない、たった一度の真剣勝負なの!」


 なんなんだこの女。気が付かないのか、いやそうか、実物を見ないとわからないか。


「ねえ奏と瑞希どこ行ったの? あの二人にやらせようよ」

「セカイから出て行っちゃったよ。楽しんでねって」

「見越してたな、私が怒ること」

「ねえ、早くやろうよ」


 何故こんなにも乗り気なんだ朝比奈まふゆ──!

 まふゆはもう袋を開けてポッキーを取り出そうとしている。


「本当にやるの?」

「やらないの?」

「……」

「なら、いいよ。クラスの人とやろうかな」

「え、ちょ、なんでそこまでして?」

「自分が見つかるかもしれないから」

「そうだった……。うん、なら、私がやる」


 そう、まふゆのクラスの人に知らないところでやられるくらいなら、私がやる。

 ──ん、別に勝手にやっていればいいのに。あれ、なんで、こんなムキになっているのだろう。だって、別に……


「絵名、じゃあやろう」

「え、ああ、うん」


 まふゆがクッキーの部分を咥える。私はちょっと躊躇って、チョコの部分を咥えた。

 どうして、人生初のポッキーゲームがこんな風に行われているのだろう。そもそもポッキーゲームとは何なのだ。誰が考えたんだ。

 文句を並べても仕方がない。まふゆは食べ始めだしたので、私も口に含んでいく。

 顔が、近い。まふゆはポッキーに視線が向いているので目が合うことはないが、この状況、おかしすぎる。ドクドクと高鳴る心臓。こんなに緊張しているのは私だけか。喉が乾いて仕方がないのは私だけか。

 ふと、まふゆが目線を上げた。でも私は逸してしまった。こんなに距離が近くては、近づいては、目を合わせにくい。

 手に少し冷たい指先の感覚が伝わった。それに気づいたので、無意識に握っていた拳を緩めると、手を繋がれた。

 もう私達の距離は五センチに満たないほどに縮まっている。まふゆは気にせずに食べ進めていく。対して私は、その距離がなくなっていくことに恐怖心に近い感情が湧き出ていた。

 頭が沸騰しそうだ。ポッキーを噛もうとする力が籠もらない。

 遂に私は口を開いて、閉じるまでに至らなかった。私はポッキーを避けて口を閉じる。


「ん……ぇな、?」


 まふゆは残りのポッキーを咥えたまま、私を不審がって、頬に触れた。逃げるな、という意思表示だろうか。


「……そういえば、ポッキーゲームって折れたらじゃなくて、口を離した方が負けだった、と思うんだよね。今思い出した」

「じゃあ、絵名の負けだね」


 話しにくそうにそう答えて、まふゆは残りのポッキーを全て口に含んだ。

 ドキドキと心臓は煩い。こういう時、分からない、と言えるのは便利だと思う。本人は不服だろうけど。


「何か分かったことあった?」

「顔が近づいてきてびっくりした。あのままキスしちゃうのかと思った」

「っえ、ああ、そういうゲームだから。まふゆ、あんたからかわれてるから、自分を見つけられるかもって言われても、もうしちゃだめだよ」

「……そう、かな。少し分かりそうな気がしたけど」

「は?」


 ポッキーゲームでそんなこと分かるものか。


「何、どういう分かり方したの?」

「絵名が離れて、少し残念だった、のかな。分からないけど……」

「…………」


 ──それ、どういう意味で。

 追求は出来なかった。私は喉の乾きを潤すために、唾をゴクリと飲み込んだ。

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